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 診療科・中央部門のご案内

泌尿器科

診療内容

当科では優れた設備と充実したスタッフのもと安全で高度な医療を地域住民の方に提供しています。

泌尿器科悪性腫瘍、尿路結石、腎移植、排尿障害、小児泌尿器科の各分野においては高い専門性を持ったスタッフが中心となって日々の診療活動に従事しています。また取得が比較的難しいとされる泌尿器科腹腔鏡技術認定医(日本泌尿器科学会、日本内視鏡外科学会、日本泌尿器内視鏡学会公認)の資格を4名(原、柑本、吉川)の医師が有しています。

泌尿器科領域、特に悪性腫瘍領域におきましては腹腔鏡手術の進歩、普及は目覚ましく、従来の開腹手術の多くは腹腔鏡手術やロボット支援手術に変わりつつあります。腹腔鏡手術やロボット支援手術は低侵襲であることはもちろんですが、その利点である明るく拡大された手術視野を最大限にいかし、開腹手術を凌駕する手術を確立していくことが我々の目指しているところです。

1. 泌尿器科悪性腫瘍

泌尿器科は比較的高齢者を対象とするため大学病院等の施設においては悪性腫瘍の患者様が70-80%を占めます。私たちが診療において一番の目標としていることは尿路生殖器悪性腫瘍に対する治療成績の向上であります。尿路生殖器悪性腫瘍は腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、精巣腫瘍と広範にわたっていますが、それぞれの癌が異なる特徴を有しており治療にあたっては全く異なった治療戦略が必要となります。現在では癌に対する治療としては手術療法、放射線療法、抗癌化学療法、免疫療法が主な治療法ですが、癌種により選択される治療法はさまざまであり癌治療の難しさを痛感いたします。しかしながら放射線治療を除き泌尿器科においてはそのほとんどの治療法を駆使することも可能で、その意味で集学的な治療を行うことが可能であります。このような状況下で癌の根治性を高めるための努力は泌尿器科医に与えられた使命であります。中でも手術において研鑽を重ね安全で根治性の高い術式を啓発することが特に重要であると考えています。また根治性のみならず患者様のQOLの向上は同様に重要なことです。泌尿器科領域における膀胱全摘除術に伴う尿路変向術や前立腺全摘除術などの手術は術後QOLに大きく影響する面を持ち合わせています。従って術式の選択は病理、病態に基づくだけでなく術後のQOLを加味した上で決定することが極めて重要であると認識しています。

腎癌

大きな腫瘍では腎摘除術、小さな腫瘍では腎部分切除術を行います。多くは腹腔鏡での手術が可能です。また、2014年から腎部分切除術に手術支援ロボット・ダヴィンチを導入しており、現在はロボット支援腎部分切除術を中心に行っています。進行例あるいは転移を有する症例に対しては免疫療法や、分子標的薬による治療も導入しています。

腎盂尿管癌

治療は腹腔鏡手術を主とした腎尿管全摘除術を原則としていますが、単腎症例など特殊なケースでは内視鏡による切除も行っています。

副腎腫瘍

多くは腹腔鏡手術による摘出を行っています。

前立腺癌

PSA(前立腺特異抗原)の普及に伴い前立腺癌の患者さんは急激に増加しつつあります。前立腺癌でも最近多く発見される早期前立腺癌では治療手段が多岐にわたるため、病気の進行度のみならず、それぞれの患者さんの生活様式や信条を十分加味した上で治療方法を決定する必要があります。当科では従来の開腹前立腺全摘除術の一歩発展した術式として腹腔鏡下での前立腺全摘除術を行ってきましたが、2012年には手術支援ロボット・ダヴィンチを導入し、現在はロボット支援前立腺全摘除術を中心に行っています。

本術式では拡大された3次元視野と自由度の高い鉗子の組み合わせにより、精細で巧緻な手術手技が可能となり、排尿機能や性機能の温存や根治性の向上が期待されます。また手術療法だけでなく放射線治療として高線量率小線源療法も古くから行っており症例数は全国でもトップレベルと言えます。

膀胱癌

表在性膀胱癌は内視鏡手術が原則で、再発リスクの高い患者さんには術後にBCG膀胱内注入療法を行っています。浸潤性膀胱癌に対しては膀胱全摘術が原則です。膀胱全摘出術後の尿路変向術は従来、回腸導管造設術が標準術式でしたが、より生理的な排尿に近い尿路変向術として新膀胱造設術が現在では最も進んだ術式として広く採用されています。当科では回腸を利用した新膀胱造設術を行っています。

精巣腫瘍

化学療法の進歩に伴い転移を有するものでも約70%の治癒率を誇っています。しかしながら残りの30%においては現在の標準治療だけでは救命できない状況です。当科では従来の標準的治療では治癒が期待できそうにない症例に対し末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法を導入しています。精巣腫瘍は化学療法感受性が高いため固型腫瘍の中では唯一超大量化学療法の適応の可能性が残されています。当科では末梢血幹細胞移植併用超大量化学療法に手術療法や放射線療法を組み入れた集学的治療を実践しており良好な治療成績を得ています。

2. 尿路結石症

尿路結石症は急激な増加傾向にあり、2005年の全国統計によると男性では7人に1人、女性では15人に1人が一生の間に一度は尿路結石を経験するとされています。当教室では長らく尿路結石症の臨床研究や基礎研究に取り組んでおり、豊富な経験をもつ専門スタッフが診療にあたっています。尿路結石症診療ガイドライン(日本泌尿器科学会・日本Endurology・ESWL学会・日本尿路結石症学会編)に基づいた標準的治療の実践を心がけるとともに、よりよい治療法の確立をめざした取り組みも行っております。

排石促進薬

1cm以下の小さな尿管結石の多くは、尿とともに自然に体外に排出されます。適切な鎮痛薬で痛みをコントロールしながら、飲水、運動、お薬により自然排石を促します。最近、欧米では前立腺肥大症の治療薬であるα1ブロッカーに優れた排石促進効果のあることが報告されていますが、本邦では未だ保険適応となっていません。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

大きい結石、容易に体外に排出されない結石、疼痛をコントロールできないような結石などでは、何らかの手術が必要です。ESWLは体外で発生させた衝撃波エネルギーを照射して結石を破砕するもので、細かくなった破砕片は尿とともに体外に排出されます。当科ではドルニエ社製のリソトリプターDを導入しており、治療中の痛みもごく軽度なため、入院せずに外来での治療(月曜日)が可能です。

内視鏡手術

ESWLは身体に傷をつけることなく結石を破砕できる理想的な治療法ですが、結石の大きさや位置などの状況よっては、内視鏡手術のほうが優れた治療成績が得られることがあります。当科では尿管結石に対しては3日程度の短期入院で最新のホルミウム・レーザーと細径尿管鏡を用いた手術(経尿道的尿管結石破砕術;TUL)を行っています。また、一般の施設では治療の難しいサンゴ状結石や2cmを超える大きな腎結石に対しては積極的に内視鏡手術(経皮的腎結石破砕術;PNL)を行っています。

再発予防

尿路結石は低侵襲手術により除去できるようになりましたが、この病気の最大の特徴は再発しやすいことです。5年間で半数近くの方に再発がみられるとされています。再発予防のためには、まず、結石成分の分析、血液検査、尿化学検査などによって原因をつきとめ、それに応じた治療を行わなくてはなりません。当科では、尿路結石の原因診断に不可欠でありながら、保険適応となっていない尿中シュウ酸およびクエン酸の測定を研究室で行うなど、再発予防に力を入れています。また、最近では、私たちの研究から尿路結石症はメタボリックシンドロームと密接に関連していることが分かってきており、尿路結石の再発予防に減量を中心としたメタボ対策を取り入れています。尿路結石症の専門スタッフが最新の情報に基づいたきめ細かな生活指導・食事指導・薬物療法を行っておりますので、繰り返す再発に困っておられる患者様は是非ご相談ください。

3. 腎移植

慢性腎不全患者は、近年増加の一途を辿り、本邦においては、2005年度末で、約26万人が、罹患しているとされており、その大部分が、血液透析を行っております。和歌山県下においてもその大部分の方が、血液透析をおこなっているのが現状です。腎不全の治療においては、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの治療選択がありますが、その中でも腎移植は、QOLの高さ、合併症の問題、医療経済の点からいっても、他の2つの治療よりも優れた治療であるといえます。

当科では、1985年に第1例目を行なって以来、現在までに生体腎移植27例、献腎移植19例を行っており、移植腎生着率は生体腎移植で5年85.6%、10年70.3%、献腎移植で5年89.5%、10年79.5%、と良好な成績を誇っております。最近では、従来無理とされていたような、ドナー(腎臓を提供する側)とレシピエント(腎臓を提供される側)の血液型が異なった場合であっても十分な免疫抑制剤の使用や前処置によって、移植が可能(血液型不適合腎移植)となっており、今後当科でも積極的に行なっていく予定です。小児の腎不全患者さん対しても当院小児科と相談しつつ対応しております。また、生体腎移植におけるドナーの方からの腎の摘出については、従来の開腹手術よりも傷が小さく、術後の回復が早いというメリットをもった鏡視下腎摘出術を導入しております。

私たちは和歌山県下の腎不全患者さんの治療選択の一つとして、腎移植医療がより盛んになり、より身近な治療法となるよう努力していきたいと考えています。腎移植を考えていらっしゃる方はもちろん、腎移植についてのちょっとした質問でも、お気軽に相談していただければと思います。

4. 排尿障害

社会の高齢化に伴い、排尿に関する悩みを抱える患者様は確実に増加しつつあります。癌などとは違って直接生命の危険があるわけではありませんが、排泄に関する問題は、他人が思う以上にその人のクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を損ないます。実際に導尿を必要とするような患者さんを受け入れてくれない老人施設は少なくありません。排尿障害の患者さんの診療では適切な診断と治療を行うことによりQOLの改善をめざすことが最大の目標ですが、個々の治療を行うにあたっては各々の患者さんが持つ生活環境にも十分注意を払う必要があります。排尿障害をきたす代表的な4つの疾患(前立腺肥大症、神経因性膀胱、過活動膀胱、間質性膀胱炎)につき概説いたします。

前立腺肥大症

泌尿器科外来を受診される患者さんのなかでももっとも多く排尿障害を訴えられる疾患の一つです。前立腺は通常クルミ大くらいの大きさですが、50歳を過ぎると肥大が始まります。病理学的には70歳以上になると10人に7人以上の人に肥大が認められるようになり、その症状として排尿時間の延長や、尿線が細くなったり、頻尿、残尿感を感じるようになります。ひどい場合には全く尿が出なくなる尿閉という状態になることもあり、一般的に薬を服用する内科的治療を行いますが、内科的治療に反応しないときや重症の前立腺肥大症の患者さんには手術療法を考慮します。当科においては、最新のホルミウムレーザー前立腺核出術を導入しており、従来の電気メスによる手術に比べ短期間の入院で安全に治療を受けていただけます。

神経因性膀胱

何らかの基礎疾患のために膀胱を支配している神経に異常をきたし、膀胱の正常な働きである尿をためる(畜尿)機能や尿を出す(排尿)機能がうまくできなくなった状態を言います。代表的な原因疾患としては、脳梗塞・脳出血・パーキンソン病・脊髄損傷・二分脊椎・糖尿病・骨盤内手術後などがあります。当科においては、排尿機能外来という専門外来を設けており、膀胱の働きをみる検査(尿流動態検査)を行い、患者さん一人一人と病態についてじっくり話し合った上で最適な治療法を選択しています。ほとんどはお薬による内科的治療を行っていますが、残尿が多い方には、患者さん本人によってカテーテルを尿道から挿入して尿を出す自己導尿という手技を指導することもあります。

過活動膀胱

最近生まれた新しい概念であり、頻尿と尿意切迫感を主症状とし、切迫性尿失禁を伴うこともしばしばあります。以前は尿流動態検査で異常があった患者さんのみをいう病名でしたが、最近の学会において新しく定義され、上記のような症状のみで診断するように定義が変わりました。日本排尿機能学会での報告によれば、日本では810万人の方が過活動膀胱であると考えられています。診断は症状と残尿のチェック、日常の排尿の記録などから行い、治療のほとんどは薬物療法となります。

間質性膀胱炎

頻尿、切迫性尿失禁、尿貯留時の膀胱部痛といったいわゆる膀胱炎に似た症状を示す疾患ですが、通常の急性細菌性膀胱炎と違い、抗生物質内服では治りません。今までは理由がはっきりしないため、心因性であるとか、更年期障害の症状であるとかなどとかたづけられてきました。日本では最近になってやっとこの疾患に対する認知度も上がってきたところで、特殊な膀胱炎であると考えられています。診断は、詳しい病歴の聴取や膀胱鏡の所見などによる専門的な検査が必要となりますので、もし治りにくい膀胱炎で悩まされている方がいらっしゃいましたら、あきらめずに泌尿器科専門医にご相談ください。

専門分野

泌尿器科腫瘍(副腎腫瘍、腎がん、腎盂尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん)の診断と治療(特に腹腔鏡下手術)、排尿機能に関する異常(前立腺肥大症、神経因性膀胱)、尿路結石症、腎移植、尿路性器感染症、婦人泌尿器科

関連リンク

スタッフ紹介(2018年9月現在)

役職 氏名 専門分野 学会認定
教授 原 勲 前立腺癌
泌尿器癌
日本泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本癌治療学会臨床試験登録医
内分泌・甲状腺外科専門医
准教授 柑本 康夫 尿路結石症
膀胱癌
日本泌尿器科学会専門医・指導医
泌尿器腹腔鏡技術認定医
講師 吉川 和朗 腎移植
小児泌尿器
前立腺癌
日本泌尿器科学会専門医・指導医
腎移植認定医
泌尿器腹腔鏡技術認定
講師 西澤 哲 尿路上皮癌 日本泌尿器科学会専門医・指導医
助教 山下 真平 尿路結石症
腎癌
日本泌尿器科学会専門医
助教 井口 孝司 尿路結石症
前立腺癌
日本泌尿器科学会専門医
学内助教 上田 祐子 小児泌尿器科  
学内助教 岩橋 悠矢 一般泌尿器科  
学内助教 間島 伸行 一般泌尿器科  
学内助教 松浦 昌三 一般泌尿器科  
学内助教 塔筋 央庸 一般泌尿器科  
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