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産 科 【 多胎妊娠 】

多胎妊娠とは

 多胎妊娠とは2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠することをいいます。双胎妊娠(ふたご)には一卵性双胎と二卵性双胎とがあります。二卵性双胎は2個の受精卵から発生したもので、2個の胎盤があり、二絨毛膜二羊膜となります。一卵性双胎は1個の受精卵が分裂することにより発生し、分裂の時期により二絨毛膜二羊膜、一絨毛膜二羊膜、一絨毛膜一羊膜のいずれかになります。
 双胎妊娠の頻度は排卵誘発剤など生殖医療の発達により年々増加がみられます。2004年の日本の統計では、双胎妊娠は80~90組に1組、品胎妊娠は3,000組に1組の割合です。
 双胎の種類によって後述する妊娠のリスクや管理方法が異なりますので、妊娠初期に分類する必要があります。ただし、妊娠14週を超えて初めて受診された場合で性別が同じ場合は膜性の診断は困難になることがあります。
多胎妊娠

多胎妊娠の注意点

 双胎妊娠では悪阻(つわり)症状が強く、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、子宮内胎児発育遅延、胎児形態異常、子宮内胎児死亡、血栓症などの合併症が単胎妊娠に比べて起こりやすいことが知られています。特に、早産は多胎妊娠では頻度が高く、双胎妊娠の児の予後に大きく関わる合併症です。ハイリスク妊娠のため、経過が問題ない場合でも、一絨毛膜双胎では妊娠32週以降、二絨毛膜双胎では妊娠34週以降より管理入院としております。近年では新生児医療の発達により早産で出生された児の予後は大きく改善されてきました。

一絨毛膜双胎について

 一絨毛膜双胎では2人の赤ちゃんが1つの胎盤を共有した状態であるため、臍帯を通じての胎児への栄養供給バランスの不均衡が生じることがあります。原因は主に2通り考えられていて、一つはそれぞれが占有する胎盤の面積が異なる場合、もう一つは胎盤内でお互いの血管が吻合している事によるためということが分かっています。後者の場合、双胎間輸血症候群と呼ばれ進行例では児の予後は非常に悪いことが知られています。羊水過多・過少の程度や妊娠週数(妊娠16週0日から25週6日)によっては、吻合血管に対して胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を行うこともあります。(当科では施行していませんので、施行する場合は他院へ紹介させていただきます)
さらに、一絨毛膜一羊膜双胎は両児を隔てる隔膜が存在しないため、臍帯相互巻絡がおこりやすく、胎児の突然死のリスクが高くなります。そして、この突然死のリスクは胎児が大きくなるに従って減少するものの30週を超えても数%程度の頻度で発生しうるとされています。一絨毛膜一羊膜双胎自体の頻度が低いため管理方針についての統一見解はありませんが、状態を考慮して症例毎に検討を行い、一般的には9ヶ月頃で計画的に帝王切開での分娩としています。

分娩方法

 分娩方法と処置について、多胎妊娠では、できればNICU(新生児集中治療室)やM-FICU(母体胎児集中治療室)のある施設、あるいは小児科が併設されている病院で出産するのが望ましいとされています。経腟分娩ができるかどうかは、赤ちゃんたちの胎位(子宮内での姿勢)や大きさ、お母さんの合併症の有無などを考慮して判断します。ただし、三つ子以上の場合は安全のために原則帝王切開としています。

最後に

 多胎妊娠では、はじめの膜性診断が重要になってきます。妊娠の可能性がある場合は適切な時期に産婦人科を受診するようにしましょう。単胎妊娠に比べて、妊娠のリスク、管理方法が違いますので、かかりつけ医や助産師の指導を受けましょう。


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