地域と連携した健康づくりカリキュラム

近年、地域医療のニーズが高まるなか、中核病院の医師・看護師不足が慢性化し、医療を取り巻く環境がますます厳しくなっています。保健看護職は、人々の健康づくりのために、また人々が満足できる、安全で質の高い医療のために重要な役割を果たしている専門職です。現在、医学医療の進歩は目覚ましく、専門的知識、技術を備えた人間性豊かな保健看護職が社会から強く期待されています。
本学保健看護学部は、平成16年4月、和歌山県立医科大学看護短期大学部を母体に設置され、人々の生命と健康を守り、幸せにするために貢献するという使命感や倫理観を育み、保健医療福祉に関する社会の要請に柔軟に対応できる人材を育成することを教育理念として歩んで参りました。
こうした中、文部科学省の平成18年度大学教育支援プログラムの「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」において、保健看護学部の取組が採択されました。学部設立時の、教育理念やカリキュラムが認められたものと考えられ、教職員、学生とともに喜んでいます。この取組は本学部の学生が、県内の地域住民を対象として行う統合カリキュラムです。学生は、住民と身近に触れあうことにより、医療人としての人間の理解を深めることや信頼関係を築くためのコミュニケーション能力や多様な情報を捉え、適切に判断する能力を習得することが期待できます。また、地域住民には安心感を与え、健康増進や疾病予防に関わることにより、地域の活性化に繋がることが期待できます。すなわち、本取組は社会のニーズに応える人材育成とともに地域活性化を図ろうとするものです。
平成18年から3年間にわたり、那智勝浦、太地、花園、みなべ、中辺路などを訪問し、いろいろな人々と出会うことにより、貴重な体験をすることができました。地域で支え合いながら生き生きと生活している人々から、「人と人」のつながりの大切さや仕事に対する責任感、家族のあり方や「命の大切さ」など多くのことを学ぶことができました。また、県内の種々の地域の病院で実習することにより、地域医療が崩壊しつつあるなかで、活躍されている先輩の医療人から、使命感や達成感などを学ぶことができました。
これらの貴重な体験を通して、自然や人と親しみ、物事の本質を見抜くことの重要性を知り、医療という大変不確実な分野で変化する状況に的確に判断し、行動することのできる質の高い医療人としての一歩を踏み出して行けたのではないかと考えております。この間、実習などで多くの人達と出会い、感動し、貴重な経験をさせていただきました。お世話になった多くの方々に深く感謝致します。

平成21年3月
和歌山県立医科大学保健看護学部
有田 幹雄

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