地域と連携した健康づくりカリキュラム

花園健診

目的

地域と連携した健康カリキュラムの一環として、へき地の医療状況・今日の健康診断のあり方を自主参加で体験する。

概要

 和歌山県伊都郡かつらぎ町花園梁瀬の花園保健センターで平成20年7月5,6日の健康診断に学生(2年〜4年次生)24名、教員4名、協力者5名が参加し、後期高齢者に対して問診、血液検査、心電図、体脂肪・骨密度・PWV測定、認知症スクリーニング検査を実施した。また、健診後の食事準備の応援を行った。3年間のGPの中での位置づけとしては、3年目に実施した。1年次に同地域での早期体験実習をしており、各学年が1年次に学習したことをさらに展開する目的で3年目に実施した。
 花園は和歌山県の東北部にあって東は奈良県に接している(下図)。総面積の95%は山林である。昭和28年の紀州水害により死者111人、役場等公共施設が全壊など、一村破壊的な被害を受けた悲しい歴史がある。このことが人々の村への愛着を強固にしている。伝統芸能の伝承などを通して、地域住民全体で子育てを行い、共同体の良さが残っている地域である。平成20年4月現在村の人口495人、世帯数231戸、高齢化率45.6%、14歳未満の年少人口は17人である。
 市町村合併により県内唯一の無医村では無くなったが、無医地区には変らない状況である。

学生の感想

  1. 医療従事者が直接地域へ出向くアプローチ−生活のあり方を知ることの重要性“
    健診を行うだけでなく、その地域にすむ住民の生活状態やどんな生活困難があるか、原因となる健康問題は何かを理解する必要性を感じた。“
    “自分の疾患に対して詳しい人、運動の必要性を感じている人、健診のデータだけを気にする人など住民の健康への意識の個人差を実感した。“
  2. 高齢者のイメージの変化
    “とても生き生きして明るかった。”
    “不便な環境で生きる強さを知った。”
  3. 健康診断のあり方、後期高齢者への健康施策の違い
    “大勢の住民の方が健診を待っている風景に驚いた。保健師の方の健康診断が重要である呼びかけやそれに対する住民の健康診断の積極的参加を知った。”
    “健診における差別を知った。”
    “保険による健診項目の違いや後期高齢者は対象外である事実を知った。”
    “学生であるが、住民にとっては医療従事者である認識に戸惑い、確実な知識の必要性を実感した。”
  4. 保健師のあり方−地域との連携
    “健診制度の変化があるが、住民との繋がりを大切にしているため住民の要望を活かした健康促進対策をとれる。“
    “保健師の魅力を感じた。”
  5. 地域住民同士の密接なつながり
    “保健師の方を含めた周りの人々のサポートが重要であることを知った。”
    “食生活推進員の方が健診後に食べてもらおうと食事を用意し、その食事を住民の方が楽しんでいた。“

地区担当保健師の声

 かつらぎ町花園支所地域振興課弓庭喜美子氏から頂いたメッセージを載せます。

 旧花園村は、平成17年10月1日かつらぎ町と合併し、保健師の受け持ち地区は、花園地区、新城地区となりました。その中で、保健看護学部の学生さん達と、これらの地域の住民の人達との関わりは、1年次生の早期体験実習に始まり後の総合健診での出会いへとつながっています。早期体験実習では、グループ別に地域を巡回・訪問したり、集会所に住民を誘いコミュニケーションを図っています。学生自身の目で住民の暮らしを確かめ行動や会話の中で実際を学びます。住民は、毎年その時期になると「そろそろ看護の学生さんが来るなあ」と楽しみにしています。住民はその日その日、変わりなくあたりまえの生活ができることを有難いと思いながら、1年1年を繰り返し過ごしています。人口500人にも満たない過疎高齢化の進んだ地域で、保健・医療・看護も不十分な地域の年1回の総合健診は、自分の健康チェックの唯一の機会としてとても重要で、色んな方との出会いでもあります。保健医療福祉制度の改正の中で、住民のニーズに応えられた健診が実施できるのも、保健看護学部のご協力のお陰であり、地域住民はとても感謝しています。
 住民は、毎年孫のような学生さん達に会えることを幸せに感じ楽しみにしながら、若い活力ある学生さん達に、未来の保健・医療・看護の担い手として大きな期待を持っています。住民は、教育に役に立てることがあれば惜しみなく提供しようと思いながら、元気で会えることを生きがいにしております。今後も、地域住民と学生さん達の交流の中で、住民と共に生活に根ざした健康な暮らしづくりを目指していきたいと思います。

今後の課題

 花園地区への健康づくりについて、教育側より保健師側へ住民のデータを含め報告・提案しているが、学習した学生側より住民側への直接の報告・提案の機会を設定できていない点が大きな課題である。この事が実施できて初めて評価しうるものと考える。また、今後も本カリキュラムを続行していく上でのスタッフや予算の問題がある。
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