地域と連携した健康づくりカリキュラム

訪問実習
自主的活動

目的

 本活動は、地域と連携して総合的な健康づくりを推進する人材育成のために企画した。学生が自律的に考え行動することにより、変化する状況に的確に判断する能力を養うことが期待できる。
 この自主的活動を通して人々の生活を理解し、人々の看護や健康の維持・増進について考え、地域の人々が期待する総合的な人間力の育成を目的とする。

3年間の概要

 本学では現代GPの一環として、太地町や那智勝浦町などへ有志の学生が訪問し、その地域の特性を学び地域にあった健康づくりを考える機会を積極的に設けてきた。現代GP最終年度となる平成20年度は、活動内容を一歩深め、「地域と連携した健康づくり」を目指し「何を知りたいのか」「何をすべきか」を学生が主体となって自由に考えテーマを選択し研修を計画・実行する自主的活動を行った。
 大学のキャンパスを飛び出し、住民の方々の声を聞き、地域の健康を守る医療者の姿を実際に目にし、身をもって経験したことや知り得たことは学生に強い印象を与え、さらなる興味や向学心を引き出し、大きな成長の糧となる。加えて、与えられたテーマではなく、学生自身が問題意識や興味を持ったテーマに沿い自ら行動し、緊張や不安のなか研修を成し遂げたことは今後の大きな自信に繋がると考えられる。
 自主的活動発表会では、見聞きし学んだことをまとめることで、経験したことをより具体化することができた。同じ立場である学生が報告する内容には、通常の講義では得られない新鮮さがあり、自主的活動に参加しなかった学生にとっても知的好奇心を刺激されたと考えられ、周囲の学生に対する啓発ともなった。

内容

テーマ 花園で学ぶ ―看護師以外の医療従事者―
参加者 1年次生 3名
期間 平成20年8月18日〜20日
内容 かつらぎ町花園地区にて保健師の訪問に同行させていただき、地域の人々の暮らしを知り、地域の人々の健康を守る活動の実際を学んだ。
また、地域で働く栄養士、理学療法士の方々からもお話を伺い医療従事者の連携の重要性や役割を知り、そこで働く人々の思いを知る機会を得た。
1日目 かつらぎ町のPT 栄養士にお話を伺う
2日目 保健師の家庭訪問に同行
3日目 福祉センター見学 保健師の家庭訪問に同行
主な研修先 かつらぎ町 花園保健センター

学生のレポート・発表より(一部抜粋)

 かつらぎ町では健康教室を開くなども理学療法士さん栄養士さんが一人でするのではなく保健師さん歯科衛生士さん健康運動指導士さんなどの協力があるからこそ地域の人々の健康が保てているのだと実感できた。改めてその職業にしか出来ないこと、協力し合うことの重要性を知ることが出来た。
花園には昭和28年の水害の後に描かれた壁画があり、その絵には花園の自然や子ども達を住民のみんなで守っていこうという意味が込められており、自分たちの村を守っていこうという力強さを感じました。私もこれから医療人として医療現場に出たときには花園の住民のように地域と人々を守るためにも、医療の観点から人々を見つめ健康を守っていきたいと思いました。
「花園で学ぶ ―看護師以外の医療従事者―」


テーマ 過疎地域の医療を知る ―診療所が支える命―
参加者 1年次生 3名
期間 平成20年8月20日〜22日
内容 白浜はまゆう病院、白浜町川添地区の川添診療所を訪問。医師、看護師、事務長にお話を伺い、診療、往診に同行し、過疎地域での医療の現状を学んだ。また、地域で行われている藍染め教室などに参加し住民の方々のお話を直接伺う機会を得た。
1日目 白浜はまゆう病院見学   川添診療所にて診療・往診へ同行
2日目 川添診療所にて診療・往診へ同行   藍染め教室
3日目 川添診療所にて診療・往診へ同行
主な研修先 白浜はまゆう病院
川添診療所

テーマ 和歌山におけるお産事情
参加者 2年次生 4名
期間 平成20年8月25〜27日
内容 事前調査として和歌山県庁にて分娩数、産科医数などを把握した。
研修では、南和歌山医療センターの助産師外来、田辺市の坂本助産所、新宮市立医療センターを訪れ、そこで働く助産師、産科医、妊婦さんにお話を伺い産科医療の現状を学んだ。
1日目 南和歌山医療センター助産外来見学
2日目 坂本助産所見学
3日目 新宮市立医療センター見学
主な研修先 和歌山県庁
南和歌山医療センター
坂本助産所
新宮市立医療センター

学生のレポート・発表より(一部抜粋)

(地域の診療所の医師に対して)これからの医療従事者に求めるものはという質問に対して、医療の現場であってもあくまで人と人との関わりであることを忘れてはいけない。相手が何を求めているのかを常に考えられる人になって欲しい。患者さんが良くなることが目的であって、自分が患者さんを良くするのではない。若いときのフレッシュな感覚を忘れずに視野を広げ、苦労して様々なことを吸収することが大切であるということ。自分の信じる目標に向かってもくもくと近いところから達成してほしい、というお言葉を頂いた。
今回の自主活動を通して過疎地域における医療の現状を知ると共に、地域医療のあり方を学ぶことができた。人を診るためには、地域の特性と地域住民の生活背景、家族背景などを把握することが大切であり、それによってその地域が求めている医療を提供することに繋がるのである。「あせらず、あきらめず、ゆるかしく(緩やかに)」という先生のモットーのように、時間をかけて一人ひとりの患者さんと向き合い信頼される医療者になりたい。
「過疎地域における医療の実態を調査する」


テーマ 温泉が住民に与える影響
参加者 2年次生 4名
期間 平成20年8月28〜8月30日
内容 那智勝浦町立病院と併設されているスポーツ温泉医学研究所へ訪問し、温泉が医療にどのように活かされているかを学んだ。また、福祉健康センターにおいて、温泉を用いた機能訓練を見学、住民の方々にお話を伺がった。
1日目 地区探査
2日目 那智勝浦町立温泉病院・スポーツ温泉医学研究所・那智勝浦町福祉健康センター見学
3日目 地区探査
主な研修先 那智勝浦町立温泉病院・スポーツ温泉医学研究所
那智勝浦町福祉健康センター

テーマ 和歌山の産業を支える漁師さんの健康増進プロジェクト
参加者 3年次生 4名  2年次生 1名
期間 2008年8月8日〜9日
内容 那智勝浦漁港にて遠洋漁業等に関わる漁業従事者の方々からお話を伺い健康観や生活の現状を調査した。その後、保健師と連絡を取りお話を伺い行われている地域の保健事業について追跡調査した。
1日目 漁協の見学
2日目 漁業従事者の方々にお話を伺う
主な研修先 那智勝浦漁協
那智勝浦町役場

テーマ 過疎地域における医療の実態を調査する
参加者 3年次生 3名
期間 平成20年8月28〜8月30日
内容 高齢者人口が多く救急対応の出来る施設が無い集落でどのように地域の人々の健康が守られているかを知るために、地域の診療所の医師、保健師にお話を伺った。
また、住民からはどのような医療が求められているかを知るために住民の方々のお話を伺った。
1日目 松尾医院 
2日目 大峰診療所 本宮クリニック 中辺路行政局
3日目 近野診療所 医師・保健師よりお話を伺う
主な研修先 大峰診療所
近野診療所
本宮クリニック
松尾医院
中辺路行政局

学生のレポート・発表より(一部抜粋)

昔はお産=入院という考えがなく、家族や地域の人みんなが関わるお産だったことや、お産によって家族の絆が強くなると言うことを知りました。また、実際に子どもを連れて助産所に集まってくるお母さんの姿や、不安や悩みを相談しに訪れるお母さんも多いという話を聞いて、坂本助産所は地域の方に信頼され、地域に密着しているのだと感じました。
坂本助産師から「口は一つ目は二つだから、自分が話すよりも倍、人の話を聞かなければならない。妊婦さんに指導する際に、まず妊婦さんの話を聞いて受け止めることからはじめないとならない」というお言葉を頂いた。助産師や看護師である前に人として大切なことだと気づかされ、忘れがちになっている「相手の立場に寄り添って考える」ことの重要性を改めて感じました。
「和歌山におけるお産事情」

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