医学医療教育学講座

 教授挨拶

医学医療教育学講座 教授 村田 顕也

 本学では、平成18年に設置された教育研究開発センター(CERD)を中心に、医学・保健看護学・薬学教育の継続的な改善と円滑な推進に取り組んでまいりました。近年、医療を取り巻く環境の変化に伴い、カリキュラムの多様化・高度化や各種試験の実施など、教育に関わる課題はますます複雑になっています。教育の質をさらに高めるためには、教育を適切に運営するだけでなく、「どのような教育が効果的か」「学生の学修成果をどのように評価すべきか」といった課題を、科学的に検証していくことが必要です。

 そこで、教育そのものを学問として研究し、教育改善の科学的根拠を生み出す組織として、令和6年4月、医学部基礎医学部門に「医学医療教育学講座」を開設しました。当講座は、教育学・学修理論に基づいて教育上の課題を分析し、より良い教育方法や評価方法を研究・開発する役割を担います。一方、CERDは、その研究成果をカリキュラムや教育実践へ展開し、全学的な教育改善につなげる役割を担います。すなわち、講座が教育改善の「根拠をつくり」、CERDがその「根拠を教育の現場で活かす」という関係です。両組織が、研究成果を教育へ還元し、教育現場の課題を次の研究へつなげる、理論と実践の好循環を実現しています。

 本学が「医療系総合大学」としてさらに発展するためには、学部間の強固な連携が不可欠です。本講座とCERDは、3学部の教育をつなぐハブ(結節点)として、学部横断的な教育を推進していきます。豊かな人間性と高い倫理観を備え、次世代の医学・医療を担い、その発展を牽引する医療人の育成に、今後も尽力してまいります。

講座概要

  • 設置:令和6年(2024年)4月1日(医学部基礎医学部門)
  • 教育・研究理念(BEME: Best Evidence Medical Education):「医学教育に科学的根拠(理論)を導入する」ことを基本理念として掲げています。アウトカム/コンピテンシー基盤型教育や、インストラクショナル・デザインに基づくシラバス開発などを通じて、教育工学や学習理論に裏付けられた教育システムの構築を進めています。
  • 実務と研究を架橋する組織体制:当講座の教員はCERDの教員が兼務し、本学の教育PDCAサイクルにおいて中核的な役割を担っています。研究と実務を往還させながら、教育プログラムの質保証を推進しています。

研究活動

当講座では、医学・医療教育学の発展と、本学学生の学力・資質の向上に資する4つの研究プロジェクトを柱として、研究活動を推進しています。

1.科学的根拠に基づくアセスメント(評価法)の開発と応用

「ミラーのピラミッド(認知レベルから行動レベルへと段階的に評価する枠組み)」を基盤に、各種学科試験(多肢選択・論述)による総括的評価から、CBT、客観的臨床能力試験(OSCE)、臨床実習ポートフォリオ、Mini-CEX(臨床研修ミニ評価)による形成的評価まで、学修成果を一貫して捉える教育評価体系の構築と検証に取り組んでいます。

2.先進的シミュレーション・ICT教育(VR技術の応用)

文部科学省の助成事業「ウィズコロナ時代の新たな医療に対応できる医療人材養成事業」に採択され、全国トップクラスのVR機器保有台数を活かして、オリジナル教材の開発・運用を行っています。教材には、医療現場を疑似体験できる「現場体験型VR」(カテーテル検査、放射線防御、救急カート、消毒手技の学習など)と、3Dポリゴンデータを用いて解剖構造や病変を立体的に理解する「3D-CT VR」があり、これらを活用した臨床実習の教育効果を検証しています。

3.和歌山SPの会と協働したコミュニケーション教育の標準化

平成18年度に設立され、累計271回(令和7年3月時点)の活動実績を有する「和歌山SPの会(模擬患者)」と連携しています。1年生の「医学入門(コミュニケーション実習)」における自由対話、4年生の「臨床実習入門」における面接練習、さらに共用試験(Pre-CC OSCE、Post-CC OSCE)の運営・管理を通じて、模擬患者による温かく的確なフィードバックと客観的評価を教育に取り入れる体制の標準化に取り組んでいます。また、同会は「標準模擬患者養成団体」の公式認定を受けており、当講座の教員も養成担当者としての資格を有しています。

4.教学IR(Institutional Research)データの多角的な解析

入試区分別の成績推移、CBT・卒業試験・国家試験成績の経時的な相関、3学部合同の「ケア・マインド教育」における共感力の変化(エンパシースケール調査)など、多様な教学データを集計・管理・分析しています。分析結果は「IRレポート」としてまとめ、学内への提言に活用しています。また、3学部の教員数や特徴を網羅した「和歌山県立医科大学ファクトシート」を編纂し、少人数教育をはじめとする本学の教育状況を可視化しています。

スタッフ一覧

当講座には、医学教育学に加え、脳神経内科学、循環器内科学、社会学、精神医学など、多様な専門分野を背景とする教職員が在籍しています。

教授 村田 顕也
准教授 谷本 貴志
学長特命准教授 水本 一弘
講師 佐々木 洋子
助教 森 めぐみ
助教 藤林 舞
学長特命助教 中津川 洋平

最近の主な研究テーマ

1.コンピテンシー到達度評価における学生自己評価と教員評価の乖離、およびその経時的推移に関する研究

2.実写VR(360度動画)および3D-CT VRを用いた心血管カテーテル臨床実習における学習効果の比較検証

3.TeamsやLMSなどを用いたICT/遠隔サポーター制度の運用と、ハイブリッド型講義環境の最適化設計

4.医療系3学部(医・看・薬)合同のケアマインド教育における、学部横断的な共感性・多職種連携スキルの育成評価

研究業績(令和6年度・7年度 代表例)

【査読付き論文】

  1. 医科大学の教養課程における「物理学実習」の現状と今後の役割:茂里 康、中道夢心、内藤玲奈、山本 玲、村田顕也 他 大学の物理化学 30 156-158,2024
  2. 「医学部一般教育」での「化学実習」の役割:茂里 康、大藪晋太郎、山本有美恵、浅間結梨、西川圭介、東川幸嗣、森 めぐみ、村田顕也 化学と教育 72 253-256 2024
  3. シミュレータを用いた不整脈模擬診療体験型実習の教育効果:谷本貴志、森 めぐみ、池田奈津子、平野隆則、中津川洋平、佐々木洋子、村田顕也 医学教育 55 290 2024
  4. 医学部教養課程における「生物学実習」の現状と今後の役割:茂里 康、村井稔幸、竹中康浩、中道夢心、内藤玲奈、山本玲大、村田顕也 医学と生物学 186(2)i2_Oj02 2025
  5. 佐々木洋子、森めぐみ、喜多奈津子、平野隆則、谷本貴志、村田顕也.「模擬患者と協働したコミュニケーション実習の試み――和歌山県立医科大学1年生授業の実践報告」大阪公立大学大学教育,2025,3:3-11.

【学会発表】

  • 谷本貴志、平野隆則、中津川洋平、森めぐみ、佐々木洋子、村田顕也.「シミュレータを用いた不整脈模擬診療体験型実習の教育効果」第56回日本医学教育学会大会(令和6年8月9日、東京都)
  • 谷本貴志、森めぐみ、平野隆則、中津川洋平、佐々木洋子、村田顕也.「和歌山県立医科大学における冊子形式の臨床実習ポートフォリオ導入初期の経験と課題」第57回日本医学教育学会学術大会(令和7年7月27日、秋田市)

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2026年8月28日更新

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