病院薬学

研究室紹介

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研究室の概要

顔写真中川 貴之 教授

これまで多くの医薬品が開発され、医療に多大な貢献をしてきましたが、未だ有効な治療法がない、あるいは有効性が乏しい治療法しかない疾患も多く、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズが多数存在します。また、超高齢化・人口減少が急速に進む中、疾患構成も変化し、その変化に応じて今まさに地域から解決すべき臨床問題が沢山出てきています。病院薬学研究室では、臨床問題解決型の研究を実践すべく、医学部附属病院薬剤部とも連携して実臨床データからそれらの問題点、解決すべき点を炙り出し、得られた情報をもとに実験系を構築、解決策や治療標的・予防/治療候補薬の探索、開発等の基礎研究を行い、さらにその成果を臨床に還元する臨床-基礎-臨床の循環型研究、すなわち、リバース・トランスレーショナルリサーチを目指しています。研究対象として、「がん支持療法・緩和ケアのサイエンス」を1つの柱とし、高齢がん患者や終末期に引き起こされる様々な症状、あるいはその治療に伴って生じる合併症、副作用等、有効な対処法がない問題を取り上げ、臨床・基礎研究双方向からサイエンスを基盤としてアプローチしたいと考えています。

 

研究においてポイントとなる単語・言葉

リバース・トランスレーショナルリサーチ、がん支持療法・緩和ケア、抗がん薬の副作用、がん患者の身体・精神症状、痛み・しびれ、末梢神経障害、認知症、せん妄、老化、慢性炎症、酸化ストレス、動物モデル、細胞モデル、臨床研究、薬剤部

 

教育の内容

私たちが担当する講義科目は、3年前期の「医療倫理」と、まだ先になりますが、6年前期の「病院・薬局薬学」があります。「医療倫理」では、医療人として薬剤師はもちろん、将来何らかの形で医療に携わる薬学生全員が習得すべき倫理観を、その背景知識から深く学ぶ講義になります。また、病院薬学研究室は、医学部附属病院薬剤部とも連携していることから、5年から始まる病院実務実習の補助も行います。この病院実務実習期間中に皆さんとより緊密な時間を過ごすことになるかもしれません。

一方、研究室では、医療の世界を俯瞰的に見渡せる薬剤師、薬学研究者、医療関係者、開発職や教育者等の育成を目指して、ときには最先端の基礎研究をマニアックなまでに奥深くまで、ときには、医薬品開発のプロセスや臨床現場での問題点を幅広い視点から捉えることができるよう普段から訓練を重ねてもらうつもりです。そのため、与えられた研究テーマ(1つとは限りません)に対し、必ず基礎および臨床双方からのアプローチを取ってもらいます。また、当研究室ではテーマ毎にチームを組み、1つのテーマに向かってチーム全員でアイデアを出しながら立ち向かい、苦しみも喜びも分かち合える環境を整えるとともに、上級生が下級生に実験技術を指導するなど、学生のうちから現場での指導力を養ってもらいます。

 

研究の内容

がん支持療法・緩和ケアのリバース・トランスレーショナルリサーチ

高齢化により日本人の2人に1人はがんに罹患すると言われていますが、がん治療の進歩に伴い、生存率は格段に向上し、今やがんと共に生きる(がんとの共生)時代となっています。そのような状況の中、がんやがん治療に伴う様々な症状、合併症、副作用等を如何にコントロールしつつがん治療を継続し、住み慣れた地域でいつも通りの社会生活を送ることができるかが問題となっています。私たちは、がん支持療法・緩和ケアに焦点をあて、がんそのもの、あるいはがん化学療法や分子標的薬で治療中の患者に生じる様々な有害事象(痛み・しびれ、末梢神経障害、口内炎、褥瘡、食欲不振、悪液質、認知機能障害(後述)など)の問題点や解決への糸口を臨床データから炙り出し、実験動物や培養細胞を用いた基礎研究でそれらの病態メカニズムの解明、ターゲット分子や予防/治療薬の探索を行います。最終的には、病院の診療科等との共同研究により臨床試験にまで持ち込み、その研究成果を実用化することを目指しています。

多疾患に共通する慢性炎症および酸化ストレスに着目した基礎-臨床研究

高齢者が罹患する疾患の多くは、慢性炎症や酸化ストレスが関与すると言われています。また、自己免疫疾患、肥満やがん等、全く異なる疾患であっても、共通して慢性炎症が生じ、病態の形成や悪化に繋がっていると考えられています。このような慢性炎症や酸化ストレスの亢進に中心的な役割を果たすミエロイド系細胞(好中球・単球・マクロファージなど)は、これらの疾患時に骨髄系細胞増産に偏向した造血(myelopoiesis)によって産生されることが報告され、共通の疾患原因として注目されています。私たちは、ヒト検体およびマウスモデルを用いて多疾患に共通するミエロイド系細胞増加の機序を追究し、慢性炎症および酸化ストレスを制御することにより症状の軽減あるいは予防可能な創薬を目指して、基礎および臨床研究を実施します。

認知症の病態メカニズムの解明および実臨床とのリバース・トランスレーショナルリサーチ

超高齢社会の現代において、「認知症」は克服すべき喫緊の課題です。しかしながら認知症の病態メカニズムは十分に理解されておらず有効な予防/治療法は未だ存在しません。私たちは加齢に伴う認知機能低下のほか、がん患者で高頻度に見られるがんや化学療法に関連する認知機能障害(cancer-related cognitive impairment: CRCI)(せん妄など)にも着目し、病態モデルマウスや培養細胞を用いた基礎研究に加え、ヒト臨床データの解析等を組み合わせることで研究成果の実臨床への還元を目指した研究を行いたいと考えています。

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