健康な妊婦さんで、分娩が正常に経過している場合、日本でもよく知られているラマーズ法などの呼吸法を体得すれば分娩の痛みもある程度は軽減させることができます。しかし、このような方法は痛みを取り去るのには必ずしも十分ではありません。分娩に対する恐怖感や陣痛に伴う痛みといったストレスが分娩を長引かせたり、場合によってはパニック状態に陥らせ、産婦さんや赤ちゃんに悪い影響を及ぼすことも知られています。そのため現代では分娩時の痛みを適切に取り除くことは、安全な分娩を行うために重要であると理解されています。すなわち、母親とお子さんの双方にとっての利点があるのです。
産婦さんに何らかの問題や合併症(心臓の病気、肺の病気、妊娠高血圧症4)など)があり、痛みによる分娩ストレスを軽減した方がよいと医学的に考えられる場合や、産道の柔軟性が弱い(高齢出産など)ため、無痛分娩により産道の緊張をとった方が良いと考えられる場合などでは硬膜外無痛分娩を積極的におすすめすることもありますが5)、こうした問題のある特別な産婦さんだけではなく、全く問題のない普通の産婦さんも硬膜外無痛分娩を希望することができます。
お産の痛みを恐れてお子さんを持ちたくないと考える方がいらっしゃっても不思議ではありませんが、そうした方には朗報です。無痛分娩とそうでない分娩を経験された方は一様に、無痛分娩でお産での体力の消耗が少なかったとおっしゃられます。お産のあとの育児に体力が温存できることも、硬膜外無痛分娩の有利な点です。お産に伴う産婦さんの負担が軽くなることで子育てへの意欲が強まることも、無痛分娩の利点といえるかもしれません。
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