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産 科 【 妊娠高血圧症候群(HDP) 】

妊娠高血圧症候群(HDP)とは

 以前は妊娠中の高血圧、蛋白尿、浮腫(むくみ)により規定される疾患として、妊娠中毒症と呼ばれていましたが、2005年より妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension :PIH)と名前が変わり、妊娠20週以降の高血圧と蛋白尿の状態で診断されていました。妊娠前からの高血圧や妊娠20週までに発生した高血圧(高血圧合併妊娠)も、従来の妊娠高血圧症候群に加えることになり、2018年から妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)へ変更するようになりました。

【 HDPの診断 】

 妊娠時に高血圧を認めた場合に、妊娠高血圧症候群と診断します。 収縮期血圧:140mmHg以上または拡張期血圧:110mmHg以上の場合に高血圧と診断し、収縮期血圧:160mHg以上または拡張期血圧:110mmHg以上であれば重症と診断します。尿中に蛋白が1日あたり300㎎以上出る場合(重症であれば2g以上)に蛋白尿と診断します。 また病型としては以下のように分類されます。

  • 妊娠高血圧症:妊娠20週以降に初めて高血圧が発症し、分娩後12週までに正常に復する場合で、かつ妊娠高血圧腎症に当てはまらないもの。
  • 妊娠高血圧腎症:
    • 妊娠20週以降に初めて高血圧が発症し、かつ蛋白尿を伴う場合で分娩後12週までに正常に復する場合
    • 妊娠20週以降に初めて発症した高血圧に蛋白尿を認めていなくても、基礎疾患の無い肝機能障害・腎機能障害・神経障害・脳卒中・血液凝固障害・子宮胎盤の機能障害(胎児の発育不良)のいずれかを伴う場合
  • 加重型妊娠高血圧腎症:
    • 高血圧が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し妊娠20週以降、蛋白尿または基礎疾患の無い肝機能障害・腎機能障害・神経障害・脳卒中・血液凝固障害・子宮胎盤の機能障害(胎児の発育不良)のいずれかを伴う場合
    • 高血圧と蛋白尿が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降、いずれかまたは両症状が増悪する場合
    • 蛋白尿のみを呈する腎疾患が妊娠前あるいは妊娠20週までに存在し、妊娠20週以降に高血圧が発症する場合。

発症時期によって34週未満の発症を早発型、34週以降の発症を遅発型としております。 重症化してくると子癇(妊娠20週以降のけいれん)、脳出血、神経障害、肝臓の機能障害や腎臓の機能障害、肺水腫(肺に水がたまり呼吸が苦しくなったりすること)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、胎児の発育不良が悪くなったり(胎児発育不全)や胎児の状態が悪くなる(胎児機能不全)こともあります。肝臓の機能障害により、溶血と血小板減少の伴うHELLP症候群を引き起こすこともあります。出産前に胎盤がはがれる常位胎盤早期剥離とも関連があると言われております。

HDPの原因

 HDPはまだまだ不明な点も多い疾患です。リスク因子としては、肥満、母体年齢が高い(40歳以上)、もともと糖尿病や腎臓の病気のある方、血圧の高い方、家族に高血圧の人がいる方、双子などの多胎妊娠、初産婦、HDPの既往のある方などが言われています。ストレスも影響する可能性が示唆されています。

治療方法

 根本的な治療はなく安静や食事療法、降圧剤を併用し、母児の状態や妊娠週数などを総合的に判断し、適切な時期での出産を目指します。入院管理が必要になることが多いです。
 通常出産後に症状が良くなりますが、産後も高血圧や蛋白尿が持続することがあるため、引き続きフォローアップが大切になります。

最後に

 リスクの高い方も含めて妊娠中の体重増加やストレス・食事に気をつけながら、妊娠中の血圧上昇の悪化を抑えるように心がけましょう。
 状況によっては高次医療施設(新生児集中治療室や母体胎児集中治療室のある施設)へ紹介、入院になることがあります。かかりつけ医や助産師の指導をうけましょう。



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