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乳がんの診断と治療

乳がんの治療

昔(といってもほんの数十年前まで)、外科医の常識は、乳がんは大きく切除すればするほど治りやすいというものでした。そこで、乳腺、筋肉、周辺のリンパ節をひとかたまりに切除する手術が病状に関係なく行われていました。その後、がんを大きく切除しても治癒率に影響のないことが明らかにされ、早期乳がん症例の増加、薬物治療や放射線治療の進歩と相まって、切除範囲は確実に小さくなってきています。現在、標準的な手術方法は胸筋温存乳房切除手術と乳房温存手術です。

胸筋温存乳房切除手術

大胸筋と小胸筋を残して、乳房全体と腋のリンパ節を摘出する方法です。通常、乳房切除手術では乳頭も切除され、手術後は平らな胸となります。筋肉が残るため腋の部分が大きくえぐれることはなく、パッドで補正すれば服の上からは判りません。

当科ではがんが乳頭におよんでいない限り、乳頭を残す乳房切除を行っています。この場合、やせた方であれば乳房のふくらみや乳頭の位置にそれほど左右差は見られません。

乳房温存手術

乳房の一部と腋のリンパ節を摘出する方法で、しこりを含む乳腺の1/4を摘出する扇状部分切除と、しこりから数センチの距離を離して円形に摘出する円状部分切除があります。円状部分切除は扇状部分切除より切り取る範囲が小さく、乳房の変形を少なくできる利点がある一方、がん取り残しの危険性が高くなります。通常、乳房温存手術は表に示す乳がんに適応があります。さらに、当科では手術前にMRI検査でがんの広がりを正確に診断した上で、乳房温存手術の適応と最適な切除範囲を決定しています。

乳房温存療法の適応
1 腫瘍の大きさ 大きさ3cm以下、良好な整容性が保たれるのであれば4cm以下まで許容される
2 年齢 問わない
3 リンパ節転移の程度 問わない
4 乳頭ー腫瘍間距離 問わない
5 多発病巣 二個以上の病巣が近くに存在しても、整容性と安全性が保たれるのであれば適応とする
6 乳管内進展の画像評価 マンモグラフィの広範な石灰化など、明らかな乳管内進展が予想される時は適応外とする
7 手術後の放射線照射 乳房温存手術後の放射線照射は原則実施すべきである

標準的な乳房温存療法の実施要項の研究班、2005年3月

当科では乳房温存手術の美容的結果を向上させるため、切開をできるだけ小さくかつ傷跡の目立たないところに限定する(通常は乳輪縁と腋の二カ所)、この小さな傷より内視鏡を補助的に用いて乳房部分切除を行う、乳腺の欠損部分を周辺の組織で埋め合わせる、といった工夫を凝らしています。
乳房温存手術では、残した乳房にもう一度がんを発病すること(乳房内再発)があります。欧米の研究では手術後10年間で約10%の人に乳房内再発がおこるとされており、この手術を受けていただく場合には乳房内再発の危険性を十分に認識していただく必要があります。

乳房温存手術を目的とした術前化学療法

ガイドラインにあるように、しこりの大きさが3cm以上では乳房温存手術の適応はありません。従来、乳がんと診断されると直ちに手術を行い、病状に応じて手術後に抗がん剤治療(術後化学療法)が追加されてきました。術前化学療法とは文字通り手術前に抗がん剤治療を行うことで、当初は少しでも早く抗がん剤治療を開始することで再発率の改善を目指したものでした。臨床試験の結果、術前化学療法と術後化学療法の再発率に差はありませんでしたが、術前化学療法を受けた人の中に、診断時乳房温存の適応外であった大きなしこりが小さくなり、乳房温存手術が可能となった人がたくさん見られました。このような試験結果を受けて、乳房温存手術を目指した術前化学療法が次第に普及してきています。当科でも、乳房温存を強く希望し、しこりの大きさが3cm以上(乳房の小さい人では2cm以上)の場合には、まず術前化学療法を行うことをオプションとして呈示しています。


大きさ4cmの乳がんが術前化学療法により1cmにまで縮小

乳房切除手術後の乳房再建

乳房温存手術の適応ではない方、術前化学療法に抵抗のある方、温存手術の適応は満たしているが乳房内再発を心配する方、このような人には乳房切除手術を行うことになります。がんを治すためと納得して受けられるはずでしょうが、「家族や友達と温泉には行かれない」、「水着や大きくカットの入ったドレスは着られない」、などいろいろ悩みは尽きないことでしょう。

当科では乳房切除を受けていただく方へ、乳房再建手術の提案をしています。まったく元通りの乳房を作ることは困難ですが、再建手術により乳房切除に伴う精神的苦痛の軽減には一助になると考えております。担当医とよく相談なさって下さい。

リンパ節に対する手術 腋窩リンパ節郭清術とセンチネルリンパ節生検

乳がんの多くは進行すると腋のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移します。手術前にリンパ節転移があるかどうかを正確に診断することは困難なため、乳がんの手術では腋窩リンパ節をすべて取り除くこと(腋窩リンパ節郭清)が標準的な方法でした。

しかし、腋窩リンパ節郭清を受けると、10%内外の方で手術した腕のしびれ、痛み、腫れ(リンパ浮腫)といった合併症をおこします。また、早期乳がんでは大半の方にリンパ節転移はなく、このような方にとって腋窩リンパ節郭清は本来不必要な手術です。当科では腋窩リンパ節の転移がなさそうな方には、腋窩リンパ節郭清ではなく、センチネルリンパ節生検という手術を行っています。腫瘍から最初のリンパの流れを受けるリンパ節がセンチネルリンパ節であり、このセンチネルリンパ節だけを取り出して、がんの転移を調べることをセンチネルリンパ節生検と呼びます。これまでの臨床試験で、センチネルリンパ節にがんの転移がなければ、非常に高い確率でその他のリンパ節に転移のないことが確認されており、それ以上のリンパ節摘出は省略します。センチネルリンパ節生検には放射性同位元素を用いる方法、色素を用いる方法、両者を併用する方法があり、当科では色素法を採用しています。

色素法センチネルリンパ節生検

手術成績

乳房切除

乳房切除手術後の10年無再発生存率はリンパ節転移のない場合で88.1%、リンパ節転移のある場合で71.8%です。

乳房切除後の無再発生存率

乳房温存

乳房温存術後の10年無再発生存率はリンパ節転移のない場合で89.1%、リンパ節転移のある場合で58.5%です。

乳房温存手術後の無再発生存率

センチネルリンパ節生検

2000年10月よりセンチネルリンパ節生検の導入試験を開始しました。94例の導入試験結果、センチネルリンパ節生検により98%で腋窩リンパ節転移の有無を正しく診断できました。そこで、2002年4月よりセンチネルリンパ節生検を臨床に応用し、現在まで139例で腋窩リンパ節郭清を省略しました。2006年3月現在、腋窩リンパ節郭清を省略した方の中でリンパ節に再発された方はおられません。

治療 術後薬物療法

乳房にできたがんは手術や放射線治療で取り除くことができます。しかし、乳がんと診断された時点で、すでに乳房の外へがん細胞がこぼれ落ちている方がおられます。これら微小ながん細胞が数年の経過で大きくなり、レントゲン検査などで見つかるようになったものが「転移」あるいは「再発」となるわけです。手術後、これら微小がん細胞を根絶やしにするために行われるのが術後薬物療法であり、抗がん剤治療(化学療法)とホルモン療法(内分泌療法)があります。化学療法や内分泌療法にはいろいろな種類があり、切除したがんの顕微鏡検査結果に応じてどのような薬剤の選択が相応しいのか判断いたします。当科では世界的なガイドライン(ザンクト・ガレン国際会議の勧告)に準じた治療方法を第一選択として提案しています。

乳がん検診

早期発見のためには定期的な検診が大切で、厚生労働省は平成16年4月に新しい乳がん検診の指針を発表しました。それでは40歳以上の女性を対象として、2年に1度のマンモグラフィと視触診による検診が推奨されています。すでにご紹介したように、マンモグラフィでは乳がんの初期症状である微細石灰化を見つけ出すことで、早期発見を可能にします。ただし、早期発見のためにはただマンモグラフィが撮れれば良いというわけではなく、精度の高い装置、美しい写真を撮る技術を持った放射線技師、高い診断能力を有する医師の3つが揃っていなければなりません。紀北分院は装置、技師、医師のいずれもが特定非営利活動法人マンモグラフィ検診精度管理委員会による認定を受けており、万全の体制でマンモグラフィ検診に取り組んでおります。

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