和歌山県立医科大学脳神経外科教室和歌山県立医科大学脳神経外科教室

診療の特色

脳腫瘍

■ 脳腫瘍

 和歌山県立医科大学脳神経外科では年間120例の脳腫瘍手術を行っており、その大半は深部脳腫瘍や頭蓋底腫瘍などに対する難度の高い手術です。一般的な治療対象としては、髄膜腫、下垂体腫瘍、聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)、神経膠腫(グリオーマ)、転移性脳腫瘍などです。

脳腫瘍手術の基本原則は低侵襲、かつ脳神経機能の温存と最大限の腫瘍摘出で、これを実現するために当科では術前にMRIやCT画像を融 合したシミュレーション画像を用いて手術方針を立て、手術中は運動機能を中心とした脳神経機能モニタリングやナビゲーションシステムを 活用した情報誘導手術、また神経内視鏡などの最新の手術支援システムを総動員して手術に臨んでいます。

■ 当科での脳腫瘍手術の特色

下垂体腫瘍に対する内視鏡手術
下垂体
巨大な下垂体腺腫でも、鼻孔から角度のついた内視鏡(斜視鏡)を挿入し見上げるようにして腫瘍を摘出すれば、巨大な下垂体腺腫も、開頭を行わずに小さい術野で摘出が可能となる。
視野障害が認められた大きい下垂体腺腫
視力、視野障害が認められた大きい下垂体腺腫   内視鏡手術による腫瘍の全摘出後、視神経の圧迫は解除されており視力、視野障害は改善した。
無月経、乳汁分泌をきたしたプロラクチン産生下垂微体腺腫
無月経、乳汁分泌をきたしたプロラクチン産生下垂微体腺腫   手術前、血中プロラクチンは高値を示した。内視鏡手術後、血中プロラクチン値は正常化し、無月経、乳汁分泌は消失した。

下垂体腫瘍に対しては原則として、内視鏡手術を行っています。
片側の鼻孔から内視鏡を挿入し、鼻腔の最も奥の粘膜を切開して下垂体腫瘍まで到達します。このため、外見上手術の傷はわかりません。この方法は、唇の裏を切開して行う従来の方法に比べて術後の口唇の腫れやしびれも起こらず患者さんの負担がかなり軽減されるのが特徴で、入院期間も短くできます。また、鼻孔の小さい女性でも内視鏡手術専用に開発した鼻鏡を用いるため、問題なく行えます。実際、過去に下垂体腫瘍に対して唇を切開する手術を受け、再発のためこの内視鏡手術を受けた患者さんは、手術後の状態の違いを大いに実感されるようです。

内視鏡手術のもう一つの利点は、従来の方法である顕微鏡手術に比べて病変部位をより広く観察できることで、同時にナビゲーションシステムも導入して腫瘍摘出の安全性と確実性の向上が得られています。

 
頭蓋底腫瘍に対する手術

頭蓋底部に発生する髄膜腫や神経鞘腫、さらに副鼻腔などにできた腫瘍が頭蓋底へと進展したような場合が対象となります。その発生部位から考えて、摘出術にともなって脳神経麻痺などの様々な神経症状を起こしてしまう危険性の高い腫瘍です。そこで、これらの頭蓋底腫瘍に対しては周到な手術計画のもとに、手術中に脳神経機能モニタリング、ナビゲーションシステム、神経内視鏡などを活用して安全で確実な摘出方法をとっています。

■ 聴神経腫瘍
術前に高度の難聴を認めた聴神経腫瘍
術前に高度の難聴を認めた聴神経腫瘍顔面神経を温存して、全て摘出した。
ある程度の聴力が保たれている比較的小さい聴神経腫瘍
ある程度の聴力が保たれている比較的小さい聴神経腫瘍腫瘍摘出後も聴力は術後レベルに温存されている。

聴力に関係する神経に接して発生するため、多くは難聴が初発症状となります。手術前に難聴が進行している場合は、聴力を助けることは難しく顔面の筋肉を動かす顔面神経(通常、腫瘍にぴったりとくっついている)を温存して腫瘍を摘出します。
しかし、2.0 cm以下の比較的小さい腫瘍で術前にある程度聴力が保たれている例では、腫瘍摘出後も聴力を温存することが可能です。

 
■ 頭蓋底髄膜腫
内視鏡
広汎に伸展した頭蓋底髄膜腫は、一部は顕微鏡を用いた腫瘍摘出、一部は鼻孔から内視鏡を挿入し、腫瘍を摘出する。
ふらつきと三叉神経痛を認めた頭蓋底髄膜腫
ふらつきと三叉神経痛を認めた頭蓋底髄膜腫、腫瘍は全摘出され、ふらつきと三叉神経痛は消失した。
巨大頭蓋底髄膜腫
巨大頭蓋底髄膜腫、残存した腫瘍に対しては放射線治療を行った。

髄膜腫は脳を取り巻く膜から発生する脳腫瘍の中で最も多い良性腫瘍の一つです。脳の表面に発生した場合は、通常の開頭手術で摘出可能ですが、頭蓋底部に発生した場合、厳重な神経機能モニタリングを行いながら頭蓋底手術で摘出します。腫瘍の大きさや広がりの程度によって、合併症なく全摘出できる場合もあれば全摘出が困難な例もあります。腫瘍が残った場合はガンマナイフなどの放射線治療を行います。

 
■ 頭蓋底悪性腫瘍
頭蓋底悪性腫瘍(口腔底ガン)
頭蓋底悪性腫瘍(口腔底ガン)

副鼻腔や口腔底、眼窩などの悪性腫瘍が頭蓋底へと進展した場合、頭蓋底手術の対象となります。耳鼻咽喉科、口腔外科、眼科などの関連各科と共同で治療にあたります。

 
■ 神経膠腫や転移性脳腫瘍に対する覚醒脳手術とニューロナビゲーション手術
顕微鏡
術中モニタリング、ナビゲーションを併用した覚醒下脳腫瘍摘出手術の流れ
手術前に撮影した画像をもとにナビゲーション、かつモニタリングを行い、腫瘍、機能部位を確認する。いったん麻酔から覚まして言語、運動機能を評価し、より正確な神経機能を評価した腫瘍摘出手術を行う。

脳内に発生する神経膠腫(グリオーマ)や転移性脳腫瘍などで、その発生部位の脳が非常に大事な神経機能に関係している場合に行う手術です。
特に、言語機能や運動機能に関係する脳周辺に発生した腫瘍では、手術中腫瘍摘出操作に移る前に患者さんにいったん麻酔から覚醒していただき、言語機能や運動機能の検査などを行い患者さんと会話を交わしながら腫瘍の摘出範囲を決定します。覚醒脳手術と呼ばれるこの方法により、失語症などの言語機能障害や四肢の運動機能障害のの合併症を避けることが可能です。
さらに、ナビゲーションシステムも導入して脳神経機能の温存と最大限の腫瘍摘出を目指します。

 

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