緩和ケア=命の尊厳

終末期医療だけではない緩和ケア

がん対策基本法は、国と地方公共団体に、がん患者の状況に応じて疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること、その他のがん患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策を義務づけている。

かつて緩和ケアは、がんに対して治療効果が望めなくなった患者さんに対して行われると考えられることが多かった。現在は、患者さんのQOLを向上させることが重要であると考えられるようになり、がん治療と並行して痛みを除くことが進められるべきだと考えられるようになった。

これまでの考え方

WHOは緩和ケアを全人的ケアとして定義

さまざまな苦痛

がん患者さんの痛みは4つに分類される。身体的苦痛を除去することは緩和ケアの根幹であるが、それだけでは患者さんの苦痛がなくなるわけではない。WHOは緩和ケアを「生命を脅かす疾患に起因した諸問題に直面している患者と家族のQuality of Lifeを改善する方策で、痛み、その他の身体的、心理的、スピリチュアルな諸問題の早期かつ確実な診断、早期治療によって苦しみを予防し、苦しみから解放することを目標とする」と定義づけている。
現在の日本の医療は細分化が進んでおり、統合的に緩和ケアを実践することが難しいのが現状である。そのため、緩和ケアに関して統合的に教育を行い、チーム医療を推進できるがん専門医療者を育成し、地域のがん医療の向上を図ることが急務とされているのである。

人の命には限りがあり、すべての人がいずれ死を迎えることになる。人生の最期まで人間の尊厳を持って生きられるようにすることが緩和ケアであるといえる。患者さん、ご家族、医療関係者が連携を深めることによって、人間の尊厳が守られるのではないだろうか。

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