脊椎脊髄外科 | 和歌山県立医科大学 整形外科学講座

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脊椎脊髄外科

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和歌山県立医科大学整形外科の脊椎・脊髄診療班は現在8名の学会認定専門医(うち6名は脊椎内視鏡下手術・技術認定医資格も保有)を擁し、全国でも屈指の診療実績があります。また、手術を安全に実施するための脊髄機能モニタリング、脊椎疾患の予防や低侵襲手術化に役立てるための疫学(The Wakayama Spine Study)など、さまざまな基礎的・臨床的研究を行っております。

主な手術技術の紹介

脊椎内視鏡下椎間板摘出術・椎弓切除術

脊椎の後方から直径1.6 cmの管を挿入して、内視鏡カメラで術野をモニターで確認しながら、椎間板ヘルニアを摘出する、あるいは脊柱管狭窄の原因となっている骨や靱帯などの組織を摘出して神経の圧迫を取り除く方法です。和歌山県立医科大学整形外科では1998年に吉田宗人第5代教授が日本国内で先駆けて脊椎内視鏡下椎間板摘出術(MED法)を導入し、以来新たな技術の開発と安全性の確立に尽力して来ました。この手術技術を学ぶために、国内外から多くの医師が見学に訪れると共に、医師向けの教科書も出版されています。現在では椎間板ヘルニアだけでなく、腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症・神経根症にも脊椎内視鏡下手術が安全に実施可能となっています。通常、術中出血量は30 ml 以下で、術後5日目からの退院が可能となります。


椎間板ヘルニアに対する
MED法


脊柱管狭窄に対する
片側進入両側除圧法

XLIF®(エックスリフ)

eXtreme Lateral Interbody Fusion(XLIF®/エックスリフ)は、脇腹からの小皮切で腰椎に側方からアプローチし、脊椎前方に十分な骨移植を行ない脊椎の矯正固定を行なう手術技術です。椎間板変性や脊椎椎体骨折に伴う脊椎後側彎症(腰曲がり)、椎間不安定性を有する腰部脊柱管狭窄症で固定術を必要とする場合などが手術適応となります。手術にあたってはレントゲン透視画像と神経刺激モニターを用いて重要な神経へのダメージを回避します。出血が従来に比べ非常に少なく、体への負担が少ない手術方法です。和歌山県立医科大学整形外科では2013年に山田宏教授が全国に先駆けてXLIFを導入し、以来200例以上の手術実績(2017年7月現在)があります。原則、手術翌日より起立・歩行を開始します。手術後は硬いコルセットを装着します。入院期間は病態により異なりますが、概ね2-4週間です。

脊柱側弯症に対する矯正手術

側弯症の大部分は学童期の後半から思春期に発生します。側弯症では脊柱が横(側方)に曲がり、進行すると変形による心理的ストレスの原因や腰痛や背部痛、肺活量の低下などの呼吸機能障害、まれに神経障害を伴うことがあります。手術は曲がった脊柱を矯正固定する方法が行われます。背中から行う方法(後方法)と体の横から行う方法(前方法)があり、患者さんの年齢、側弯の部位、大きさ、タイプなどを考えて、いずれかあるいは両者が行われます。和歌山県立医科大学整形外科では、手術に伴う神経麻痺を防ぐための脊髄機能モニタリングや自己血輸血を導入することで手術の安全性を高めています。手術方法により異なりますが、概ね1週以内に装具を装着することなく歩行ができ、2−3週以内で退院可能となります。脊柱側弯症についてさらなる詳しい知識を望まれるかたは日本側彎症学会ホームページもご参照下さい。

頚椎疾患に対する椎弓形成術・除圧固定術


頚椎椎弓形成術(第3頚椎ー第7頚椎)後方からの模式図
 A:自家骨を用いる場合
 B:人工骨を用いる場合

頚椎症性脊髄症の中で脊椎内視鏡下手術の適応でないもの、後縦靭帯骨化症による脊髄症に対して頚椎後方から椎弓形成術(脊柱管拡大術)を実施しています。変形が高度のもの椎間が力学的に不安定なものに対しては最新の手術器械を使用しての固定術を併用しております。術後療法や入院期間は病態や術式により異なりますが、概ね2-4週間です。

経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty: BKP

骨粗鬆症を伴う脊椎圧迫骨折に対して行われる低侵襲手術の一方法です。この手術手技が適応となるためには幾つかの条件があり、基本的に骨折した椎体の後壁が損傷されていないもの、骨癒合していないものに実施されます。手術は全身麻酔下に背中に約5mmの切開を2ヶ所加えて、細い針を骨折椎体に挿入します。その針を介して風船(Balloon)を骨折椎体内に設置し、膨らますことでゆっくりと潰れた骨を整復します。風船除去後に生じたスペースに骨セメント(PMMA)を注入して、骨折部を固めます。原則、手術翌日より起立・歩行を開始します。入院期間は最短で約7日程度です。