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認知機能検査について

認知症かどうかを調べるには、専門の医師の問診、脳の画像検査、血液検査、心理検査、ご家族や介護者への聞き取りなどを組み合わせて行います。その中で、心理検査について説明します。
心理検査は、認知症の早期発見、認知症の症状の進行の程度などを調べるためのものです。専門の医師や、心理職の専門家である臨床心理士が行います。
一般的によく用いられるのは、知的機能や認知機能を把握するための検査で、患者さんに負担がかからないように、短時間で無理なく行います。代表的な検査には、以下のようなものがあります。

1 改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

正常な高齢者から認知症高齢者をスクリーニングする目的で作られた検査で、高齢者のおおまかな知的機能の障害の有無や程度を判定することができます。
年齢、今日の日付、今いる場所、単語や物品の即時記憶、計算(引き算)、数字の逆唱、野菜の名前の想起など、9項目の問題があります。
満点は30点で、20点以下の場合は、認知症である疑いが高くなります。

2 Mini Mental State Examination(MMSE)

長谷川式簡易知能評価スケールと似た問題が多くあります。加えて、図形を模写する視空間能力、文章の記載をする言語能力に関する項目があります。
問題は11項目あり、満点は30点で、24点以下の場合は、認知症である疑いが高くなります。

3 時計描画検査(CDT:Clock Drawing Test)

数字と針のある時計の絵を描く検査です。円の大きさ、数字の配置、針の位置、中心点の位置の描き方から、脳の中の側頭葉(意味記憶)、前頭葉(実行機能)、頭頂葉(視空間認知)の機能を評価します。長谷川式簡易知能評価スケールなどの知能検査とあわせて実施することで、認知機能障害の総合的な把握が可能になります。

4 FAB(Frontal Assessment Battery)

脳の中の、前頭葉の機能を中心に評価する検査です。言葉の概念化(類似の把握)、言語流暢性、運動プログラミング、干渉への感受性、抑制性制御、理解行動を調べる6つの項目からなっています。得点が低下するほど、前頭葉の機能障害の可能性が上がります。前頭側頭型認知症の鑑別などに用いられます。

5 ADAS(Alzheimer's Disease Assessment Scale)

記憶を中心とする認知機能検査で、アルツハイマー病に対するコリン作動性薬物による認知機能の評価をおもな目的としています。単語再生、口語言語能力、言語の聴覚的理解、自発話における喚語困難、口頭命令に従う、手指および物品呼称、構成行為、観念運動、見当識、単語再認、テスト教示の再生能力の、11の課題から構成されています。
0~70点の範囲で、得点は失点であるため、高得点になるにつれて、障害の程度が増していきます。認知症の重症度を判定するというよりは、継続的に複数回実施し、得点変化によって認知機能の変化を評価する検査です。

6 CDR(Clinical Dementia Rating)

認知症の重症度を評定するための検査です。CDRでは、認知症が重度になり、患者さんからのご協力が得られない場合でも、認知症にみられる臨床症状を、専門家が全般的に評価することによって、重症度を判定することができます。また、患者さんの日常生活を把握しているご家族あるいは介護者の方からの詳しい情報をもとにして、重症度を評価することも可能です。
記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家族状況および趣味・関心、介護状況の6項目について、5段階で重症度を評価します。それらを総合して、健康(CDR:0)、認知症の疑い(CDR:0.5)、軽度認知症(CDR:1)、中等度認知症(CDR:2)、高度認知症(CDR:3)のいずれかに評定されます。

参考資料

1.「高齢者のための知的機能検査の手引き」(大塚俊男・本間昭監修、ワールドプランニング)
2.「臨床家のための認知症スクリーニング-MMSE, 時計描画検査, その他の実践的検査法」(Kenneth Shulman・Anthony Feinstein著・福居顯二監訳、新興医学出版社)
3.「実践!認知症スクリーニング検査」(エーザイ株式会社・ファイザー株式会社)
4.「認知症・アルツハイマー病」(吉岡充監修、主婦の友社)

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