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認知症Q&A

Q1 認知症になると、どんな症状が生じるのですか?
A1

認知症の中心となる症状には、記憶が失われていく(記憶の障害)、時間や場所がわからなくなる(見当識の障害)、判断力や理解力が低下する、目的もなく歩きまわる(徘徊)、現実に起きていないことを信じる(妄想)、意識がはっきりせず、興奮して物を投げたり騒いだりする(せん妄)、意欲が低下したりイライラしやすくなる、といったものがあります。

Q2 認知症の相談窓口を教えて下さい。
A2

お住まいの地域の「高齢者福祉関係の窓口」、「保健所や保健センター」、「地域包括支援センター」などに、お問い合わせください。

また、和歌山県にお住まいの方で、認知症の相談や診察をお考えの方は、和歌山県のホームページに情報がありますので、ご活用下さい。

Q3 認知症かどうかは、どのように調べるのですか?
A3

専門の医師による問診、脳の画像検査、血液検査、心理検査、ご家族や施設の職員の方への聞き取りなどを組み合わせて行います。

専門医を希望であれば、脳外科、神経内科、神経精神科(神経科、精神科)、老年科、認知症外来、物忘れ外来などに、専門の医師がいる場合があります。他にも、日本老年精神医学会や日本認知症学会のホームページで、専門医を検索することもできます。

Q4 物忘れがあると、認知症なのですか?
A4

お年をとり、多くの人が経験する物忘れ(老化による物忘れ)と、「認知症の物忘れ」は違います。たとえば、「老化による物忘れ」は、物をどこに置いたのかは忘れてしまっても、物を置いたこと自体は覚えています。それに対して、「認知症の物忘れ」は、物を置いたこと自体を忘れてしまいます。「老化による物忘れ」に比べて、「認知症の物忘れ」では、日常生活に支障が生じてきます。認知症になっても、若いときの出来事や、仕事の内容などは覚えています。しかし、数日前のことが思い出せなかったり、認知症が進行してくると、数分前にあったことも忘れるようになっていきます。

Q5 認知症になると、薬を飲まないといけないのですか?
A5

認知症には、記憶障害の進行を遅らせる薬、血液の流れをよくしたり、脳の機能を積極的に働かせる薬、妄想・徘徊・興奮などに効く薬、不安や睡眠障害に効く薬など、いくつか種類があります。認知症にともなって生じる症状(周辺症状)に対して、漢方薬が用いられることもあります。認知症の早期の段階から服用すると、効果が高いといわれています。薬には、飲み薬(錠剤、細粒)や貼り薬などがあります。認知症では、薬をずっと飲み続けなければならない場合が多くなりますが、薬を飲むかどうかにつきましては、専門の医師にご相談ください。

Q6 認知症の治療は、どのようにするのですか?
A6

認知症の治療は、薬を飲むことです。さらに、脳に刺激を与え、脳を働かせることもします。音読や計算をする、音楽をする、芸術をする(絵画、ダンス、演劇、陶芸など)、運動をする、昔の楽しかったことを思い出す(回想)、などがあります。強制されたり、がんばりすぎたりせずに、リラックスした雰囲気の中で、おしゃべりをしながら、楽しんで行います。医師、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士などの専門職の人たちが指導してくれると、効果が上がるでしょう。

Q7 認知症を予防する方法はありますか?
A7

アルツハイマー病の場合、今のところ100%予防できる方法は見つかっていません。しかし、「生活習慣病を治療する」、「運動を続ける」、「脳を働かせる」、「食生活を見直す」などを心がけることが、アルツハイマー病にならないための予防であることがわかってきています。脳血管性認知症では、原因となる脳梗塞や脳出血が起こらないようにすることが、いちばんの予防法です。

「生活習慣病を治療する」では、高血圧症、高脂血症、糖尿病が関係しているため、生活習慣を見直し、血圧を下げる、コレストロールや中性脂肪を減らすなどの治療を続けてください。

「運動を続ける」では、運動は脳によい影響を与え、アルツハイマー病の予防に効果があると言われるようになってきています。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など、無理なく継続できる運動をすることで、脳の血流がよくなり、脳が活性化されます。

「脳を働かせる」では、同じ作業のくり返しではなく工夫をしたり、1人ではなくご家族や仲間と一緒に行ったりするとよいでしょう。歌や楽器の演奏、俳句や短歌、囲碁や将棋、絵を描く、草花に触れる、などをしておられるお年寄りもたくさんいます。

「食生活を見直す」では、よく知られていますように、いろいろな食材を、腹八分目に、塩分や脂肪を控えて、野菜を多めにとる、といったことが、生活習慣病の予防になり、これが認知症の予防にもつながります。

Q8 認知症の人へは、どのように接すればいいのですか?
A8

認知症であっても、精神的に落ち着いて、その人らしい生活を送ることができるようなケアが必要です。食事、睡眠、着衣、排泄、服薬の管理、健康状態のチェックなどを中心に、安全・安心・快適な生活環境を提供します。

認知症の人に関わる姿勢としては、「(認知症の人が)自分はこうしたい」という環境を作り、ゆっくりと話を聞いてあげ、認知症の人の思いを受けとめなければなりません。そのためには、認知症になると、どのような症状が起こってくるのかを、介護する側が知っておく必要があります。

ご家族の心理としては、戸惑う、混乱する、腹が立つ、拒絶する、あきらめるなど、さまざまな思いが生じ、認知症を受け入れることにためらいが生じることもあります。ご家族自身の心身の健康維持が難しくなるかもしれません。特に在宅介護をされている場合は、適度に息抜きをする、心身をリフレッシュする、人の手を借りる、介護サービスを利用するといったことが重要になってくるでしょう。

Q9 認知症の介護に関する相談窓口や、公的支援制度はありますか?
A9

行政機関や病院などに、相談窓口が設けられています。各市区町村の役所や役場の「高齢者福祉関係の課」、地域住民の保健・福祉・医療のために必要や援助を包括的に行う「地域包括支援センター」、ソーシャルワーカーのいる病院などに、相談窓口があります。

公的支援制度につきましては、介護保険、精神障害者保健福祉手帳、自立支援医療、特別障害者手当、障害年金などの制度がありますので、上記の窓口でご相談ください。

Q10 若い人でも、認知症になるのですか?
A10

65歳以下で認知症が発症することを、「若年性認知症」と言います。全国で、約4万人いるとされています。若年性認知症は、働き盛りに発症することが多く、職を失えば、経済的に厳しい状況になります。老年期の認知症の人を対象とする施設が多いのが現状であることから、若年性認知症では、ご家庭での介護を余儀なくされ、介護者の負担が大きくなりがちです。現在、若年性認知症をめぐる状況は少しずつよくなってきていますが、地域の相談機関などを通して、情報を集めることが必要です。

Q11 認知症になると、自動車運転はできないのですか?
A11

認知症を発症後も、自動車運転を継続し、特に、初期認知症の患者さんの場合、運転の危険性が高いにもかかわらず運転中断にいたることは少なく、ご家族が対応に苦慮している実態が明らかとなっています。

現在は、自動車に依存した生活を送っている方が多いのが実情です。しかし、初期の認知症であっても、安全な運転ができない患者さんもいることから、まずは、患者さんの安全を優先することが大事になります。

自動車運転に関してご家族での話し合いが必要となりますが、早めに医療機関を受診し、正確な診断を受け、医師と相談しましょう。病気が運転にどのように影響するのかについて、ご本人に対する正確な診断、ご家族などの介護者から得られた情報が重要になってくるからです。

また、警察署や免許センターの運転適性相談窓口、市区町村の高齢者福祉関係の窓口などに、ご相談をすることもできます。

参考資料

  1. 「認知症・アルツハイマー病」(吉岡充監修、主婦の友社)
  2. 「もの忘れが気になるあなたへ-認知症の正しい知識」(小坂憲司監修、社会福祉法人NHK厚生文化事業団)
  3. 「認知症の人と家族の生活を支えるために-認知症の人の治療とケア」(本間昭監修、小野薬品工業株式会社)
  4. 「それって、単なる「もの忘れ」?」(井関栄三監修、小野薬品工業株式会社)
  5. 「若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び厚生労働省の若年性認知症対策について」(平成21年3月19日厚生労働省発表資料)
  6. 「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル-認知症高齢者の安全と安心のために」(荒井由美子監修、平成19-21年厚生労働科学研究費補助金(認知症対策総合研究事業)「認知症高齢者の自動車運転に対する社会支援のあり方に関する検討」)

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