研究・業績

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研究概要

Ⅰ.尿路生殖器悪性腫瘍

臨床研究

手術用ロボットであるダヴィンチを導入し、ロボット支援前立腺全摘除術を開始しており、排尿機能および性機能の温存に関しより精度の高い手術術式の確立を目指している。さらに手術に対する客観的な評価を行うためQOL調査(SF8、IIEF、EPIC)を実施しておりロボット支援前立腺全摘除術と開腹および腹腔鏡下前立腺全摘除術の治療成績に関して比較検討を行う。

腎癌においては腎部分切除術についても腹腔鏡下で施行することを標準として取り組んでいる。今後は切除および縫合においてより精細な手術手技が可能であるロボット支援下での腎部分切除術を高度先進医療として導入していく予定である。また、膀胱全摘除術についても腹腔鏡下あるいはロボット支援下での手術を導入する予定である。

前立腺癌に対する外照射併用高線量率組織内照射については、昨年は69例に施行しており全国でも有数の症例数である。手術単独では制御困難な局所浸潤性前立腺癌に対しても内分泌療法を併用した高線量率組織内照射を実施することで良好な治療成績を得ている。しかし放射線治療に内分泌療法をどれくらいの期間併用することが望ましいかという問題については現在のところ明らかにされていないため治療期間に関する無作為割り付けの第3相臨床試験を進行中である。さらに腫瘍制御の観点のみならずQOL調査を縦断的に施行し治療に伴う精神的、肉体的影響に関しても詳細な検討を加えている。

薬物治療に関しても進行性尿路上皮腫瘍に対するゲムシタビン、シスプラチン療法を多数施行してきた。抗腫瘍効果に関与する物質の発現を免疫組織学的に検討した結果、予後との間に有意な相関関係を見いだしており、現在は前向きの多施設共同研究を進行中である。また筋層非浸潤性膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法も積極的に施行しており再発や進展に関わる因子の解析を行っている。

基礎研究

診断に関する研究は、上部尿路上皮癌(UTUC)のリンパ節転移の分子診断法の確立に関する研究を行っている。膀胱癌では近年従来のリンパ節廓清術よりも拡大した範囲の郭清術(大動脈分岐部以下)が診断的治療的意義を有することが確認されている。しかしながらUTUCにおいてはリンパ節郭清術自体の可否に関して議論されている状態である。われわれはUTUCに対し症例を選択し拡大リンパ節郭清術を行ってきた。また両備組織学的には見いだすことのできない微小転移に関して尿路上皮癌に特異的に発現する分子を標的として定量的RT-PCRを行っている。本研究により今までわからなかったUTUCのリンパ行性転移の詳細な経路を明らかにするとともに拡大リンパ節郭清術の診断的および治療的意義に関して検討を加える予定である。

治療に関する研究は、癌免疫に関する研究を主に行っている。近年特に注目を集めている癌幹細胞に特異的に発現する分子であるDNAJB8に着目し、本分子を産生するプラスミドワクチンを投与することのよりマウスでの腎癌細胞株の生着を有意に抑制することを見いだした。さらに本分子をもとにA24に特異的にバインドするペプチドワクチンをデザインし、本ペプチドワクチンを作用させることにより末梢血単核球からCTLを誘導することに成功した。今後はマウスでの治療実験についても解析を加えていく予定である。

Ⅱ.尿路結石症

尿路結石は内視鏡手術や体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の発展により低侵襲に除去することが可能になっていますが、その再発率は約50%と極めて高く、未だ満足すべき予防法が確立されていないのが大きな課題となっています。教室では、尿路結石症の成因探求とそれに基づく再発予防法の開発も目的として、古くから基礎的、臨床的研究に取り組んできました。基礎的研究は、尿中結晶形成過程やそれを抑制するための米糠(rice-bran)療法やクエン酸療法の研究に始まり、培養尿細管細胞を用いた腎内における結晶沈着過程およびそれに影響する尿中高分子物質の探索へと発展してきました。最近は、メタボリックシンドロームと尿路結石症の関連性を中心に研究を行っていますが、再発予防に限らず、手術療法や臨床で遭遇した様々な課題を解決すべく幅広く臨床研究にも取り組んでいます。最近の研究成果および現在取り組んでいる研究課題を以下に紹介します。

1:尿路結石症とメタボリックシンドロームの関連性についての研究

尿路結石全国疫学調査のデータを解析し、尿路結石症の重症度や尿化学異常がメタボリックシンドローム因子の保有数と相関することを明らかにしました。また、動物実験でもメタボリックシンドロームの本態であるインスリン抵抗性が結石形成に関わっていることを確認し、インスリン抵抗性を改善することが尿路結石の予防にも有用であることも明らかになりつつあります。

2:尿管結石に対する排石促進薬についての研究

多施設共同研究としてα-blockerであるナフトピジルの尿管結石排出促進効果について二重盲検無作為割付試験を行い、その有用性を報告しています。

3:手術療法についての研究

サンゴ状結石などの難治性腎結石に対する経皮的および経尿道的アプローチを同時併用した術式(TUL併用PNL)を本邦ではじめて導入し、その治療成績について検討しています。最近では、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の治療成績をより正確に予測できるCT画像を用いた新たな指標を開発しましたが、術式別のQOL調査など、適切な術式選択に役立つような臨床研究も行っています。

4:その他

結石形成の原基とされるRandall’s plaqueの存在をCT画像で評価することによって再発リスクを予測する試み、寝たきりの患者さんにおける尿路結石の罹患率や適切な治療法についての研究、再発予防についての患者意識調査など、幅広いテーマで研究を行っています。