よく誤って理解されていますが、「硬膜外無痛分娩」は痛みを和らげることにより自然分娩を手助けする方法であり、手術により赤ちゃんを取り出す「帝王切開」とは全く異なった出産方法です。
かつては無痛分娩をすると、お産の進行が止まって帝王切開になってしまうことが多いと考えられた時代もありましたが、無痛分娩法の改良により現在ではそのようなことはありません6)。産道が狭いために帝王切開が必要となる場合や、赤ちゃんの向きが悪くて分娩時間が長くなる場合は、無痛分娩の利用に関係なくそうなりますし、お腹の赤ちゃんに危険が迫って仮死状態になる頻度も無痛分娩により増えることはありません。
お産の経過途中で、もし帝王切開が必要となった場合、「硬膜外無痛分娩」を行っている方は、帝王切開の麻酔に速やかに移行できます。帝王切開はお腹の手術なので硬膜外麻酔が必要ですが、無痛分娩を行っている産婦さんの背中には既に硬膜外カテーテルが入っていますので、同じカテーテルを利用して、無痛分娩で使う鎮痛薬よりも強い鎮痛薬を新たに追加すれば、帝王切開を行うことが可能です。このため、帝王切開に移行することが決定してから、慌ててカテーテルを挿入する必要がありません。帝王切開となる可能性が高いと考えられる産婦さんは、硬膜外無痛分娩から始めてみる方法もひとつの方法です。ただし、帝王切開が必要になる場合には、赤ちゃんや産婦さんの状態によっては「全身麻酔」が必要となる場合もありますので、予め御承知下さい。
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