中條・西村症候群(遺伝性難病)の遺伝子変化をもち 病態を再現する新規モデルマウスを樹立

| 日時 | 令和8年6月10日(水)10時00分~10時40分 |
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| 場所 | 生涯研修センター研修室 |
| 発表者 | 本学医学部 皮膚科学講座 助教 原 知之 兵庫医科大学 皮膚科学 主任教授 金澤伸雄 |
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概要
中條・西村症候群は、周期性発熱・凍瘡様紅斑・進行性脂肪筋肉萎縮を呈する遺伝性の炎症性疾患である。生体が恒常性を維持するためには、不要あるいは合成不良のタンパク質が適切に分解処理されなければならないが、中條・西村症候群は、このタンパク質の分解処理に関わるタンパク質複合体(プロテアソーム)を構成するサブユニットβ5iをコードする遺伝子PSMB8のホモ接合または複合ヘテロ接合バリアント(遺伝子の変化)によるプロテアソーム機能不全を原因とし、プロテアソーム関連自己炎症性症候群とも呼ばれる。しかし、原因遺伝子の発見から15年がたっても、いまだ詳しい病態は明らかではなく、治療法も確立していない。
今回、和歌山県立医科大学医学部皮膚科学講座 原知之、和歌山県立医科大学先端医学研究所 改正恒康(現在和歌山県立医科大学産官学連携推進本部)、邊見弘明、佐々木泉、加藤喬、長崎大学原爆後障害医療研究所 木下晃、吉浦孝一郎、東京大学大学院薬学系研究科蛋白質代謝学 濱崎純、村田茂穂、兵庫医科大学皮膚科学 金澤伸雄らの研究グループは、日本のすべての中條・西村症候群患者にみられるPSMB8の創始者バリアントであるp.Gly201Valと同じ遺伝子変化を有する遺伝子改変マウスを樹立し、解析を行った。その結果、このマウスは遺伝子変化を持たないマウスに比べて短命で、高齢になると脂肪組織の炎症と減少を伴って体重増加が不良となること、血液中のサイトカイン(IL-6)が上昇することなど、患者さんで認められる変化が再現されていることを確認した。今後このマウスの解析を進めることで、病態のさらなるメカニズムの解明が進むとともに、新たな治療法開発の基礎となる動物モデルとなり、研究が発展することが期待される。
1.研究背景と目的
プロテアソームは、不要になったり、うまく合成されなかったりしたタンパク質を分解処理することにより、細胞、組織の恒常性維持に必須の役割を果たすタンパク質複合体である。中條・西村症候群の病態については、PSMB8遺伝子バリアントにより、プロテアソームの機能が低下することで、不要あるいは不良なタンパク質が蓄積し、活性酸素が発生し、MAPKフォスファターゼの抑制あるいはMAPKの活性化が進み、IL-6やIFNなどの炎症性サイトカインの産生がおきることが示されているが、いまだ詳しい病態は明らかになっていない。中條・西村症候群は患者数が少ない希少疾患のため、中條・西村症候群の遺伝子バリアントを導入したマウスを解析することで、さらなる病態の解析を試みた。
2.研究方法と結果
マウスES細胞(胚性幹細胞)における相同組換え法を用いて、中條・西村症候群患者が持つ創始者バリアントと同じ遺伝子変化を持つPsmb8 G201Vマウスが長崎大学で作成され、和歌山県立医科大学に移譲された。この遺伝子変化のホモ接合を有するPsmb8G201V/G201Vマウスは1年以内に半数が死亡し、遺伝子変化のない野生型マウスと比較し有意に短命であった(図 1)。
30週齢を超えると、Psmb8G201V/G201V マウスの体重増加も、野生型マウスと比較し不良であった。体脂肪率もPsmb8G201V/G201Vマウスにおいて有意に低下し、18週齢では脂肪サイズの大きさに明らかな差を認めなかったが、89週齢では精巣上体脂肪(内臓脂肪)、皮下脂肪ともにPsmb8G201V/G201Vマウスにおいて脂肪細胞の縮小を認め、周囲に炎症細胞の浸潤を伴った(図2、図3)。


免疫学的解析では、16-20週齢のPsmb8G201V/G201V マウスにおいて、脾臓のCD8+ T細胞の割合が有意に低下し、CD8+ T細胞の中で、ナイーブ分画の減少とセントラルメモリー分画の増加が認められた。血清サイトカインの解析では、46週齢を超えたPsmb8G201V/G201V マウスにおいて有意に血清IL-6の上昇を認めた(図4)。
3.研究の意義とまとめ
本研究から、Psmb8G201V/G201V マウスにおける生存期間の短縮と加齢に伴って顕在化する体重増加不良、脂肪萎縮と脂肪織炎、IL-6などの炎症性サイトカインの上昇など、中條・西村症候群患者と共通する所見が再現されていることが確認された。
したがって、本マウスは、中條・西村症候群のさらなる病態解明のみならず、新規治療薬の有効性および安全性を評価するための重要なモデルになると考えられ、今後のさらなる研究の発展が期待される。
4.論文情報
論文名:The homozygous founder Psmb8 variant of Nakajo-Nishimura syndrome/proteasome-associated autoinflammatory syndrome causes panniculitis-associated lipoatrophy and a shortened lifespan in mice
著者: Tomoyuki Hara, Akira Kinoshita, Jun Hamazaki, Hiroaki Hemmi, Takashi Kato, Izumi Sasaki, Yutaka Inaba, Yusuke Yamashita, Daisuke Okuzaki, Koh-Ichiro Yoshiura, Shigeo Murata, Masatoshi Jinnin, Tsuneyasu Kaisho, Nobuo Kanazawa
掲載誌:Scientific Reports (2026年5月28日にオンライン公開されました)
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