ユビキチン-プロテアソーム系を応用したiPS細胞由来の樹状細胞ワクチンの開発に成功

記者発表

発表日時 令和5年3月28日(火)13:30~14:00
場所 和歌山県立医科大学 生涯研修センター研修室(図書館棟3階)
発表者 和歌山県立医科大学外科学第2講座  講師 尾島敏康 医師 冨永信太

発表資料データ

発表内容

 

概要

和歌山県立医科大学外科学第2講座の尾島敏康講師,冨永信太医師らの研究グループは,ユビキチンープロテアソーム系を応用したiPS細胞由来の樹状細胞がんワクチンの開発に成功した.この研究成果は2023年3月23日,国際科学誌Gene Therapy電子版に掲載された.

和歌山県立医科大学第2外科ではこれまでiPS細胞から分化誘導した樹状細胞を用いたがんワクチン療法の開発を行ってきた(図1).しかし,現在,このシステムは臨床応用には至っていない.このワクチンツールを臨床応用するにはさらにがん破壊力が強い樹状細胞の作成が必要である.私たちはそのためには,ユビキチン-プロテアソーム関連遺伝子をiPS細胞由来の樹状細胞に遺伝子改変することで,さらに強力な免疫司令塔である樹状細胞に作り替えることが必要であると考え,本研究を立案した.

本研究の結果より,消化器癌に多く発現している腫瘍抗原であるメソテリンの遺伝子を導入したヒトiPS細胞由来樹状細胞はメソテリンを発現する腫瘍細胞に対して,殺細胞効果を認めた(図2).さらに強力な免疫司令塔であるiPS細胞由来樹状細胞を作製するべく,メソテリン遺伝子の上流にモノユビキチン遺伝子を連結付加した複合遺伝子を導入した.その結果,ユビキチン-プロテアソーム系による抗原のプロセッシングが速やかに行われ,メソテリン遺伝子を単独で導入したiPS細胞由来樹状細胞と比較して強力な殺細胞効果を認めた(図3).本研究はiPS細胞が分化誘導した成熟細胞がユビキチン-プロテアソーム系による免疫修飾可能である事象を初めて立証した. 本研究結果は日本再生医療研究にとって有意義な研究成果である.

私たちの研究の最終目標はiPS細胞由来の樹状細胞を用いたがんワクチン療法の臨床応用である.そのためには強力なワクチン効果を発揮するツールを作成しなければならない.本研究により,ユビキチン遺伝子を付加することで,ワクチン効果が増強することが確認された(図4).

今回の研究において,ヒトを用いたiPS細胞由来の樹状細胞ワクチン療法の効果増強を立証した研究成果は前臨床試験として世界にインパクトを与えるとともに,多くの難治性消化器癌患者に大きな希望を与えると確信する.

図1 iPS細胞由来樹状細胞を用いたがんワクチン療法

図1

図2 メソテリン遺伝子iPS       細胞由来樹状細胞を用いたワクチン効果

図2

図3 ユビキチン-プロテアソーム系を応用したワクチン増強効果

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図4 ユビキチン-プロテアソーム系を応用したiPS細胞由来樹状細胞がんワクチン

図4

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