血圧、喫煙、飲酒が都道府県の平均寿命の説明因子

血圧、喫煙、飲酒が都道府県の平均寿命の説明因子

発表日時 令和5年1月18日(水)11:00~11:40
場所 和歌山県立医科大学 特別会議室(管理棟 2階)
発表者

衛生学講座 教授 藤吉 朗

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ポイント

  • 厚労省の大規模公開データ(NDB open)による全国2,700万人余りのデータを用いて喫煙者割合と平均寿命、全死因による死亡率、がんによる死亡率との関連を都道府県単位で検討した。その結果、現在喫煙している人の割合が多い都道府県ほど平均寿命が短く、全死因による死亡率・がんによる死亡率ともに高いことが分かった。
  • 「現在喫煙」、「血圧高値者」、「過剰飲酒者」の3要因で、平均寿命の都道府県格差の31~45%が説明できることも明らかになり、喫煙・高血圧・過剰飲酒の改善が平均寿命の延伸に重要であることが示唆された。
  • 和歌山県の喫煙率は全都道府県順位では中位だが、男性35%、女性10%と今後の改善が必要な数値であり、積極的な防煙対策を継続する必要がある。
1.背景

日本人の慢性疾患死亡の原因として喫煙が最も悪影響を及ぼしていると言われています。喫煙が循環器疾患(脳卒中・心筋梗塞などの血管の病気)、がん、肺の病気など様々な疾患の原因であることは医学的に確立していますが、喫煙者の割合が都道府県の平均寿命と関連するかを大規模データで検証したものはありませんでした。そこで本研究では、全国2,700万人余りのデータ※を用いて都道府県ごとの喫煙者割合と平均寿命、全死因による死亡率、がんによる死亡率との関連を検討しました(※2015年に特定健診を受けた40~74歳の男女。このうち約18万人が和歌山県民)。また、筆者の一人は血圧高値者が多い都道府県で男性の平均寿命が低い傾向があることを以前に報告しています(『日本公衆衛生雑誌』2019; 66(7): 370-377.)。さらに、過剰飲酒も日本人の死亡への関与が大きい(PLoS Med 9: e1001160, 2012.)ことから、喫煙、高血圧、過剰飲酒が都道府県の平均寿命に及ぼす影響を検討しました。

2.研究結果

現在喫煙している人の割合が多い都道府県ほど平均寿命が短く、全死因による死亡率・がんによる死亡率ともに高いことが分かりました。なお、「血圧高値」や「過剰飲酒」の要因を加味しても喫煙は平均寿命に悪影響を及ぼしていました。さらに都道府県の平均寿命の格差(平均寿命のばらつき)のうち31%(女性)~45%(男性)が「喫煙」、「血圧高値(収縮期血圧≧140mmHg)」、「過剰飲酒(一日あたり純アルコール換算:男≧2合、女≧1合)」の3つの要因で説明できることが分かりました。

3.今回の結果から考えられること

和歌山県の現在喫煙者割合は都道府県順位としては中程度ですが、男性35%、女性10%と、まだまだ改善の余地があります。また和歌山県は全国有数の高血圧者の割合の多い県です。平均寿命をさらに伸ばすためには喫煙、高血圧、過剰飲酒への対策が重要であることが本研究から示されました。

4.発表論文

著者:出口佐和子, 藤吉朗, 青野直輝, 張岩, 鈴木春満,竹村重輝, 東山綾
タイトル:“NDBオープンデータにおける現在喫煙者割合と健康指標との関連:47都道府県の生態学的研究と和歌山県の現状
発表雑誌:『和歌山医学』73(4) 110-117.2022
2023 年 1 月 10 日

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