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教授あいさつ

和歌山県立医科大学腎臓内科学講座 荒木信一 教授2021年10月1日より、和歌山県立医科大学腎臓内科学講座の教授として着任しました荒木信一です。

和歌山県立医科大学の医学部と附属病院は、万葉時代から景勝地として名高い「和歌の浦」を眼下に見渡し、背後には紀三井寺を擁する風光明媚な和歌山市の南部に立地しています。遠く太平洋まで一望することができる附属病院からの眺望はとても素晴らしく、特に夕日が海に沈んでいくさまは絶景の一言です。

和歌山医科大学の腎臓内科学講座は、初代教授の阿部富弥名誉教授によって腎センターという名称で開設されました。当初は、血液透析を主体とする診療部門でしたが、徐々に血漿交換・血液吸着療法・持続的血液濾過療法などの血液浄化療法全般、救急医療における急性期血液浄化療法へと積極的に活躍の場を広げ、名称も血液浄化センターに改称されました。その後、第2代教授として、秋澤忠男先生が就任され、更なる血液浄化部門の発展に寄与されるとともに、内科としての一部門の色彩が増し、腎臓内科領域の診療と教育・研究も発展してきました。そして、第3代教授として重松隆先生が就任されますと、さらに腎臓内科として腎炎などの一次性腎疾患、二次性腎疾患の診療体制も充実し、内科学講座の再編とも重なり、現在の名称の腎臓内科学講座に改称されました。そして、2021年10月に私が第4代教授として着任し、これまでの伝統を引き継ぎつつ、新たな息吹を吹き込み、本教室がさらに発展していくために、教室員の先生方と一緒に新たな一歩を踏み始めています。

診療面での当教室の特徴の一つは、伝統的に透析医療に力を入れてきた歴史があり、国公立の大学病院の腎臓内科学講座としては珍しく、内科でありながら、血液透析に必要なバスキュラーアクセスの作成や経皮的血管形成術(PTA)を腎臓内科医自らが担当していることです。そのため、腎臓内科医として、蛋白尿・血尿の診断・治療から、電解質・体液管理、保存期慢性腎臓病の治療に加え、透析医療についても幅広くシームレスな腎臓内科の研鑽を積むことができます。さらに、2021年7月から、外来透析室を開設し、慢性透析療法についても当院で研鑽できる体制を整えてきました。このように、和歌山県立医科大学腎臓内科は、腎臓内科に求められるすべての領域をシームレスに研修できることが大きな強みです。

腎臓は、私たちの体の「恒常性の維持」に重要な役割を担う大切な臓器です。そのため、腎臓が障害を受ければ、全身の様々な臓器に弊害をもたらします。つまり、腎臓は、全身ネットワークの要の臓器であり、腎臓だけを診ているだけでは、患者さんの病態を理解することはできず、病状を改善させることも難しくなります。そのため、腎臓の病気を診るだけではなく、患者さんの全身を診ることが大切となります。また、最近の腎臓診療の特徴として、いわゆる糸球体腎炎などの一次性腎疾患よりも、糖尿病・高血圧・肥満など生活習慣病を基盤とした2次性腎疾患により末期腎不全に至る患者さんの数が増加してきていることが挙げられます。さらに、我が国の高齢化を反映して、腎臓疾患を患う患者さんも高齢化が進んでいます。そのため、患者さんの置かれている社会環境や生活環境にも配慮が必要であり、生活習慣病対策・老年症候群対策を含め、これまで以上に、より包括的で全人的な診療・治療が求められています。そのため、当教室では、「全身を診る」ことに重点を置いた診療・教育を行い、そして最新のエビデンスに基づいた診療・治療選択に心がけ、患者さんに寄り添う次世代の医療人の育成を目指して取り組んでいます。

研究面では、これまで当教室で取り組んできた慢性腎臓病の骨代謝異常、ミネラル代謝異常、血管病変に関する基礎・臨床研究をさらに発展させていくとともに、私の専門領域である糖尿病性腎臓病の重症化予防に関する基礎・臨床研究を融合させ、若い先生方と共に和歌山から世界に向けて新たなエビデンスを発信できるように取り組んでいます。そして、目の前の患者さんから多くのことを学ばせていただき、臨床の未解決な問題点を基礎・臨床研究で解決すべく取り組んでいける、そして得られた成果を患者さんへ還元していける「Physician Scientist」の育成を目指して、魅力ある教室運営と教育・研究体制の充実にしっかりと取り組んでいきます。

和歌山県における腎臓内科医、透析医の数は、まだまだ充足していないのが現状です。また、和歌山県の人口100万人あたりの慢性透析患者数は、全国で8番目に多いことが報告されています。そのため、和歌山県の慢性透析患者数を減少させることが私たちの大きなミッションの1つであり、県民の皆様に向けた腎臓疾患の啓発活動、地域における病診・病薬連携を推進するなど、これまで以上に社会貢献活動にも積極的に取り組んでいく必要があります。そのためには、地域医療のリーダーとなる情熱を持った次世代の医療人の育成が欠かせません。ぜひ、和歌山県立医科大学腎臓内科で研修・研究を行い、「Physician Scientist」を目指しませんか。私たちは、そのような希望に燃えた若い情熱のある先生方を待っています。