教育課程

生命医療科学専攻(博士前期課程)は、4年制の理系学部卒業者のほか、理学療法士・臨床工学技士等のメディカルスタッフ、民間企業の研究員などに対して、教育研究の場を提供する課程であり、専門分野の優れた知識や見識、分野横断的な考察力と自立した研究能力を持った優れた生命医療科学研究者、専門職医療人等の養成を目的としています。これらを踏まえて教育課程を編成し、下記のとおり授業科目を開設します。

また、医療データサイエンスに強い人材の養成を行うため、「医療データサイエンスコース」(生命医科学プログラム)を開設しています。コースの選択は入学志願時に行います。当該コースの学生は、一般の学生と同様に共通科目により基礎的知識を修得するとともに、ベーシック科目において医科学・薬科学分野の専門的な知識を自身の興味・関心に応じて学びますが、専門科目については医療データサイエンスに係る科目を必修とするとともに、その他の科目についても、各研究指導教員の指導のもと、専門分野で必要となる知識を身につけられる講義を選択します。特別科目については、コース選択と同時に「社会医学特別演習・特別研究」を履修することとなり、医療データサイエンス学分野の研鑽を行います。

共通科目

それぞれの専門分野で共通に必要となる知識を修得するため、必修の共通科目(3単位)として研究・医療倫理、多職種連携、医療情報リテラシーについて学ぶ授業を開設しています。

「研究倫理・医療倫理学A」では、ゲノム編集、遺伝子解析、動物実験など生命医療科学研究における指針や法律、医療の提供に関わる倫理的問題について基礎的な知識を修得することにより、優れた生命医療科学研究者、専門職医療人として求められる高い倫理観を養います。

「多職種連携A」では、チーム医療の概論、リハビリや医療安全などにおける多職種連携、多職種連携における看護師・薬剤師の役割など、医療ニーズに応えるための生命医療科学研究や地域保健医療の推進において重要な多職種連携の実践に係る基本的な知識を修得します。

「医療情報リテラシーA」では、医療情報の活用や統計学の重要性が高まっている現状を踏まえ、医療ビッグデータや統計解析学、ゲノム情報などに関する内容を学修し、自立して研究を展開していくために必要な基礎的知識を身につけます。

ベーシック科目

医科学・薬科学の基礎的知識や地域の保健医療の課題等について学ぶことで、自ら課題を発見する能力を身につけるため、必修・選択のベーシック科目(修了要件は必修4単位、選択2単位以上 計6単位以上)を開設しています。医科学・薬科学横断的な研究能力の修得や英語力の涵養などにおいて特に重要な4科目は必修とし、その他は各学生のバックグラウンドや関心にあわせて選択できます。

「基礎的研究方法論」(必修)では、分子細胞生物学研究法や電気生理学的実験法、社会調査法など、課題考察の基盤となる基本的な研究手法を幅広く学ぶことにより、研究を遂行する上で必要な基礎的知識を身につけます。

「社会・予防医学概論」(必修)では、がんなどの生活習慣病に係る危険因子と予防や地域医療の実情などの講義を通して、疫学分野における基礎的知識・研究手法を修得します。

「Academic English」(必修)では、英語論文の読み方・書き方のほか、学会等でのプレゼンテーションを想定した講義を通じて、英語力を養うとともに、研究成果を広く発信する能力を育てます。

「地域医療課題概論」(必修)では、本県の地域医療の実態を学ぶとともに、認知症など高齢者に多い疾患や在宅緩和ケア、予防医療、医療・介護資源の確保、副作用管理等における地域医療の役割について学修することにより、地域の保健医療課題への関心・理解を深めます。

「基礎生体科学特論」「生体分子解析学特論」(選択)では、専門性探求の基盤となる生物学、化学の知識を教授します。

「基礎医科学・薬科学特論Ⅰ」(選択)では、専門科目を学ぶ上での基礎となる統合分子生理学、分子機能形態学、分子生物薬学などの知識を幅広く学修することにより、幅広い視点から課題を発見する能力を修得するための基礎を築きます。

「基礎医科学・薬科学特論Ⅱ」(選択)では、専門性探求の基礎となる代謝生物化学、分子遺伝学、薬品化学などの知識を幅広く学修することにより、専門分野にとらわれない課題発見力を修得するための基礎を築きます。

専門科目

分野横断的に深く考察し、研究を行うために必要な医科学・薬科学分野における最新の知見を専門分野に限定することなく学ぶため、選択・必修の専門科目(修了要件は6単位以上)を設定しています。医学系教員による「人体構造機能科学特論」「機能調節薬理学特論」「微生物・ウイルス・免疫学特論」「病理病態学特論A」「臨床医学特論」「健康科学特論」「医療データサイエンス学特論A」(医系型科目)、薬学系教員による「安全科学特論」「医薬品開発特論」「最先端創薬科学特論」「健康機能調節学特論」(薬系型科目)を配置し、自身が選択した学位プログラムに応じて医系型もしくは薬系型の科目を重点的に学ぶとともに、選択していない学位プログラムに関する科目についても、自身の研究課題や関心に基づいて選択し、幅広い知識を修得できる構成としています。

各学位プログラムの履修条件は下記のとおりです。

  • 生命医科学プログラム選択生:医系型科目から4単位以上、薬系型科目から2単位以上

 ※医療データサイエンスコースの学生は「医療データサイエンス学特論A」を必修とする。

  • 生命薬科学プログラム選択生:医系型科目から2単位以上、薬系型科目必修4単位

 医系型科目

「人体構造機能科学特論」では、医科学研究を進める上で必須の知識である人体の構造や機能について、「機能調節薬理学特論」では、医科学研究・薬科学研究の双方において重要な薬理学について理解を深めます。

「微生物・ウイルス・免疫学特論」では、ウイルス学、細菌学、免疫学などについて最新の知見を学び、地域の保健医療課題の一つである感染症への対応など、課題解決に向けて自ら考えて取り組む力を養います。

「病理病態学特論A」では、病理学に関する基礎的知識・研究手法を身につけ、分子病理学的研究、臨床病理学的研究の基礎を修得します。

「臨床医学特論」では、臨床医学の各分野における概論的な内容や最近のトピックスなどを幅広く学び、各疾患等における最新の知見を修得します。

「健康科学特論」では、リハビリテーション医療や透析医療、アレルギー疾患、骨折など、高齢者に身近な疾患を中心に取り上げることにより、自ら課題の解決に向けて取り組む能力や地域保健医療を推進する能力を養います。

「医療データサイエンス学特論A」では、R言語の基礎や回帰分析・分散分析等の理論及び基本的なプログラミングの手法などを学ぶことにより、近年重要視されている医療情報の活用における専門的知識を修得したデータサイエンスに強い人材の養成を目指します。

薬系型科目

「安全科学特論」では、化学物質の持つ毒性・安全性、医薬品や環境化学物質の代謝について理解を深め、ヒトにおける毒性発現を予測するための評価方法を学修することで医薬品の代謝と排泄機構や薬物代謝酵素とその遺伝子多型が引き起こす体内薬物濃度変動を理解します。

「医薬品開発特論」では、製薬会社において、創薬シーズが新薬として市販化されるまでの過程について様々な立場について講義を行うことで、創薬研究者としての知識・技能を醸成し、「最先端創薬科学特論」では、低分子化合物からの創薬にとどまらず、新たなモダリティ創薬についても学び、それぞれの利点や特色について理解し、投与方法について最新の方法論を学ぶことで主剤開発のみならず製剤面からも最先端の創薬について理解を深めます。

「健康機能調節学特論」では、化学物質が健康に与える影響を分子レベルから環境との関わりまで幅広く講義し、関連する規制・制度や関連法規を含めて解説することで、超高齢社会において環境要因によって起こる疾病や、食品の変質や汚染によって起こる健康被害や食中毒等への理解を深めます。

特別科目

教育研究の柱となる領域は医学系6領域(社会医学、形態機能医学、細胞分子機能医学、総合医療医学、器官病態内科学、器官病態外科学)、薬学系4領域(物理・化学薬学、生命薬学、医療薬学、臨床・社会薬学)から構成し、領域毎に特別科目を設定しています。専門分野以外も幅広く学ぶシステムとするため、研究内容の関連性により領域をまとめ、医学系・薬学系それぞれに2つの区分を設け、自身の専門分野と異なる分野を明確にすることで、後述する副科目の履修を可能としています。

共同研究・医療チームを支える重要な一員として、積極的に活躍できる資質を涵養する研究指導科目として特別科目を開設しています。

この科目群は、医学系及び薬学系の研究指導教員による研究指導科目であり、学生は入学志願時に申告し入学後に決まる主科目に基づいて特別研究科目を選択するとともに、特別研究と同一の特別演習を選択します。それぞれの科目では、研究指導教員のもと主に演習を行う「特別演習」及び論文作成からなる「特別研究」を開講しています。また、「特別演習」については、主科目と異なる区分から一つ、副科目を選択します。これは、主たる研究指導科目以外のより広い知識・技術を修得し、また医科学及び薬科学の垣根なく、他の講座・研究室に出入りし、より広く多様な知見を得て、学生の知的好奇心を刺激し更なる研究意欲の活性化を図る場を提供するためです。このことによって、自身の研究課題を多角的に探究することが可能となります。

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