ポルトガルの救急医療から学んだこと ― リスボン大学サンタ・マリア病院での臨床実習を通して
医学部6年 樋上 和真
私は2026年4月、ポルトガル・リスボン大学サンタ・マリア病院救急科において4週間の臨床実習を行いました。将来、救急医・フライトドクターとして地域医療に貢献したいと考えている私にとって、海外の救急医療を学ぶことは大きな目標の一つでした。
今回の留学の目的は、日本で学んできた診察技術や超音波検査(POCUS)が海外でどの程度通用するのかを確かめること、そして日本とは異なる救急医療体制を学ぶことでした。そのため、あえて周囲に日本人がいない環境に身を置き、自ら学ぶことを選択しました。
実習先のサンタ・マリア病院はポルトガル国内有数の大学病院であり、救急科には1日あたり約500人もの患者が受診しています。救急外来ではマンチェスタートリアージが導入されていましたが、患者数は非常に多く、廊下にまでストレッチャーが並ぶ状況でした。また、救急外来内の超音波診断装置は限られ、CT室も別フロアに設置されているなど、日本との医療環境の違いを強く感じました。日本で当たり前に利用できる設備や診療動線が、実は非常に恵まれたものであることを実感しました。
一方で、ポルトガルの病院前救急システムであるINEMは非常に発達しており、限られた医療資源の中で重症患者を適切に搬送する体制が整備されていました。日本とは異なる医療システムを実際に見ることで、多くの学びを得ることができました。
実習中には、心停止蘇生後症例、橋出血、DRESS症候群、鎌状赤血球症など、日本では経験する機会の少ない症例を数多く経験しました。また、アンゴラ、ネパール、インド、中国など、多様な背景を持つ患者さんが受診しており、多文化社会における医療の重要性を実感しました。
今回の留学で特に印象に残っているのは、人との関わりです。救急科スタッフの先生方は、多忙な中でも診療内容の説明や通訳をしてくださり、ポルトガル語を理解できない私を支えてくださいました。また、現地の医師からは、日本人の患者さんへの接し方が丁寧であると評価されることもありました。私は、挨拶や礼儀、患者さんに寄り添う姿勢は世界共通の価値であり、言葉以上に重要なコミュニケーション手段であることを学びました。
さらに、超音波教育という観点からも大きな学びがありました。機器や教育環境に違いはあるものの、日本で磨いてきた超音波検査の技術や考え方は現地でも十分に通用し、実際の診療の場で活用することができました。その一方で、海外の医師たちの診療スタイルや教育方法からも多くを学び、超音波は患者さんの病態を理解するための共通言語であり、「エコー検査には国境がない」ということを実感しました。
今回の留学を通じて、医療技術だけでなく、多様な文化への理解や主体的に学ぶ姿勢の重要性を学ぶことができました。今後は和歌山県のみならず、日本全体の学生超音波教育の発展に貢献するとともに、世界に目を向けながら幅広い視野を持った医療人を目指して研鑽を積んでまいります。
最後になりましたが、本留学を温かく受け入れ、ご指導くださいましたリスボン大学サンタ・マリア病院救急科の先生方、研修医の皆様、そして留学を支えてくださった和歌山県立医科大学国際交流センターの先生方ならびに林様に心より感謝申し上げます。

ポルトガルのドクターヘリ 救急科のスタッフの先生方と サンタ・マリア病院のドクターカー