ビクトリア大学研修に参加して
南仁菜
今回、私はカナダ・ブリティッシュコロンビア州ビクトリアにあるビクトリア大学と、現地の医療・福祉施設において、1週間のヘルスグラムと1ヶ月間の語学研修に参加した。
ヘルスケアプログラムでは、看護師や助産師による講義を受け、医療・介護施設の訪問を通して、カナダの医療体制について文化的・地理的背景を踏まえた学びを得ることができた。特に印象的だったのは、広大な国土や先住民族の存在が医療アクセスの格差に大きく影響しているという点である。カナダでは、こうした課題に対し公平な医療提供を目指す取り組みが行われており、多民族国家として文化的背景を尊重する姿勢が重要視されていた。また、多様なケースに対応できるよう整備されたシミュレーション施設からは、医療従事者の教育体制にも多様性への配慮がなされていることが感じられた。
また、日本とカナダの医療には共通点がある一方で、大きく異なる点もあった。たとえば、「尊厳死」に対する考え方には、文化的な違いが見られた。両国において死因の多くを占めるのはがんであるが、がんに限らず、緩和ケアを末期段階ではなく診断直後から導入することで、精神的疾患の併発を防ぎ、延命にもつなげるという視点が重視されている。カナダでは、「最善を期待し、最悪に備えよ」というスローガンのもと、尊厳死と緩和ケアを並行して考えることで、患者に「逃げ道」や選択肢を用意するという考え方が重視されており、これは大きな学びとなった。また、両国ともに高齢化が進み、今後も医療の需要が供給を上回る状況が続くと考えられる。カナダでは、デイサービスや退役軍人向け、薬物依存の若者向けなどが一体となった複合型の施設があり、夫婦同室の対応や部屋に思い出の品を飾る工夫、軍隊を象徴するステンドグラスの設置など、利用者の記憶や人生を尊重した支援が行われていた。こうした点から、医療・介護の対象や提供のあり方には日本との違いが見られたが、どの国においても、個人の背景を尊重し、その人らしく過ごし続けられる環境づくりが重要であると改めて感じた。
語学研修およびホームステイを通しては、日常生活の中でカナダの文化に直接触れることができた。たとえば、バスを利用する際には、大きな声でお礼を伝えることや、高齢者や車椅子の方が乗車してくると分かった瞬間に席を譲るといった行動が自然に行われており、そのスピードと配慮の意識の高さに驚かされた。そして、私もそれにならって行動するうちに、次第にその習慣が身につき、文化にも少しずつ馴染めたように感じた。また、ホストファミリーをはじめ、多国籍の人々や日本各地から集まった留学生との交流を通じて、言語や価値観、文化的な相違点について学ぶことができ、自身の視野が大きく広がったと感じている。
このプログラムを通じて、カナダの歴史や医療について深く学び、現地の人々や多様な文化に触れる中で、自ら主体的に行動することの大切さを実感した。また、医療を学ぶ際や個人を理解しようとする際には、まず、その国や地域、その人の文化的背景を知り理解した上で、尊重することが何よりも重要であると改めて感じた。こうした経験を通じて新たな発見や疑問に出会い、自分の枠から一歩踏み出すことでしか得られない知識や多角的な視点を得ることができた。関心を持って主体的に動くことで、カナダという国、そしてビクトリアという街の自然や文化の美しさ、そこに暮らす人々の温かさに触れることができた。言語や文化の違いを超えて、人と人がつながる喜びや、相手を知ろうとする姿勢の大切さを学んだ。この経験は、今後、人と関わるすべての場面での大きな財産となり、この留学での学びや気づきを、今後の生活や、看護師としての実践に活かしていきたいと考えている。