ペンシルベニア大学での海外基礎配留学

医学部3年 山下愛絵

 私は7月の中旬から10月の末まで約3か月、J1ビザのStudent-Internとしてアメリカのフィラデルフィアにあるペンシルベニア大学に留学しました。留学したLabは補体疾患のモデルマウスを使った研究をしているWenchao Song先生のLabです。この留学を通して学んだことは主に3つあります。

 1つ目は実験では再現性が大切だということです。私が向こうで取り組んだプロジェクトは主に補体の第2経路の活性を測定するシステムの改良というもので、実験の条件を様々変えながらどの条件で最も良い結果が出るかを調べていました。その時にLabの先生から良いと言ってもらえたのは実験の結果というより、同じ実験を何度、行っても結果が一定している点でした。このプロジェクトを通じて実験は1回うまくいっても意味がなく、再現性が重要で、同じプロトコルならいつやっても同じような結果が得られることが大切だということを学びました。

 2つ目はスライドの作り方です。Labでは週に1回Lab meetingがあります。1週間の実験結果を報告し、Labメンバー全員で結果を解釈し、次にどのような実験を行うべきか話し合います。私が取り組んだプロジェクトの結果をLab meetingで発表するときにパワーポイントでスライドを作りました。実験をした自分は内容を理解しているけど、ほかのメンバーは何をやっているか知らないので、誰が聞いても理解できるようなスライドが必要でした。その時にもらったアドバイスは、1枚のスライドには1つの情報を載せること、グラフを載せるときは遠くからでもわかるように文字を大きくすること、再現性があることもわかるように2回分の結果を載せることなどでした。これらを踏まえて発表を行い、Labメンバー全員で討論を行いました。その後、自分の実験結果をもとにして試薬をストックとして買うと決まったときはやりがいと同時に責任も感じました。実験は結果を得るだけではなく、他の人に理解してもらうのも含めて実験なのだと思いました。このようにスライドづくりというのは一見、実験から離れたことのように考えてしまいますが、実験を理解してもらうためにはとても大切なことだとわかりました。

 3つ目は人のやさしさです。ペンシルベニア大学ではLabでの研究以外にも大学の附属病院を見学させていただいたり、セミナーに参加したりしました。他にも別のLabで研究している日本人の先生方に研究やキャリアのお話を伺ったりと、様々な方と交流することができました。私が住んでいたのはフィラデルフィアにある日本人教会だったので、そこに来る方たちとも交流し様々な話を聞くことができました。アメリカについた時は英語を聞き取るのも話すのも全くできなくて、ここで3か月もやっていけるのかとも思いましたが、何とかやってこられたのは周りの人達のおかげでした。このように今回の留学では人のやさしさをひしひしと感じることができました。このような恩をまた返せればと思いました。

今回の留学ではまだまだ知識も足りず、言われたことをやるというテクニシャンの面が強かったと思います。今後、もっと知識をつけて、考えたことを証明するために実験を計画するということが独立してできるようになれば研究はますます楽しくなるだろうなと感じました。また、そのためなら論文を読んだりしながら深く勉強していくのも楽しくなるのかなと思いました。そんな情熱を感じる研究テーマにこの先出会えたらと思います。留学以前はなんとなく研究をしたいというおぼろげなイメージしかありませんでしたが、研究をするというのはどういうことなのかを大変な面、楽しい面を含めて少しではありますが、具体的にイメージできるようになったかなと思います。海外で基礎配属を行ったことで将来の選択肢が日本だけではないことに気づかされ視野が広がったし、学部生時代にそのことに気づける経験をさせてもらったというのもありがたいことだと思います。

 最後になりましたが、実験手技を教えてくれ、ペンシルベニア大学に送り出してくれた分子遺伝学講座の井上先生、片山先生、馬場先生、受け入れてくれたWenchao先生、研究面だけでなく生活面などを含めたくさんのことをサポートしてくださった三輪先生、3か月間過ごしてくれたLab memberのみなさん、改正先生、国際交流センターの林さん、そして向こうで知り合うことのできたすべての方たちに感謝の気持ちしかありません。本当にありがとうございました。

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