緩和ケア臨床実習2006 感想文

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緩和ケア臨床実習の感想2006

学生の感想文が 掲載された冊子をDEGITAL BOOKで ご覧いただけます。

 

緩和ケア臨床実習を終えた学生の声(1)

緩和ケアの外来では、癌であることを受け入れている患者さんと、癌であることを受けいれることが出来ない患者さんに出会った。治癒の見込みのほとんど無い患者さんに接するに当たって、患者さんとの信頼関係をつくるためには、実現が不可能な気休めの言葉は言ってはならないと思った。あくまで医師は客観的な立場として接する事が必要である。
また、自分の運命を受け容れることができた患者さんは、生き生きとしていたのが印象的だった。すべての人が、最終的に自分の病気を受け容れることが出来ないのは仕方ないと思うが、客観的に接する事で一人でも多く、よりよい人生を送る事が出来るのであれば、緩和ケアの存在価値は非常に大きいと思った。

緩和ケア臨床実習を終えた学生の声(2)

「病気を診るのではなく、人を診る」と講義などで言われて、わかったつもりでいましたが、今回緩和ケア病棟を回り、自分のしていた理解の浅さが良く分かりました。緩和ケア病棟では、まさに「人を診る」ということを実践していたように思います。患者さん一人一人を診て、各々に合わせた対応や配慮、また部屋に巡らされた気くばりの数々に、「Care」というのはこういうことなのかと、少しだけ分かった気がします。

緩和ケア実習当日、病棟で医師と看護師のカンファレンスを見学しました。今まで見てきたカンファレンスは、1人にかける時間も少なく、流れていくイメージがあったのですが、このカンファレンスは一人の患者さんについてのみ議論をするというもので、そこにまず驚きました。その患者さんのもつ問題点を抽出し対応を考える、ということをじっくり時間をかけてやっていました。しかも、患者さんの性格まで考えた対応を話し合っているのを聞き、「人を診る」ということの大切さと難しさを感じると共に、それを実践している緩和ケア病棟のスタッフさんに尊敬の念を抱きました。

実際自分も現場に出たら、どこまでできるかわからないけれども、「人を診る」ことが出来るよう努力しなければならないと思いました。まず患者さんを理解しようとすることが大切で、スタートはそこからだと思って実践していきたいです。  


緩和ケア病棟の病室にも、様々な気くばりがなされていました。車椅子でも楽に移動できる広い間取り、靴の音がなりにくいカーペット、ユニットバスの手すりやドアの開く向きなど、患者さんに負担がかからない様に考えられていました。病室はすべて南向きで明るく景色も良く、談話室ではカラオケもできるようになっていて、これには驚きました。ですが、カラオケの話を患者さんが楽しそうにするのを見て、これもCareなのだなと思いました。患者さんに対する気くぼりや配慮というのも、Careになるということを感じました。

緩和ケア病棟では、全人的な医療、「Care」を行っていました。これを各科でどこまでできるかが今後の課題かと思いますが、今の時代、「Cure」だけでなく「Care」もできる医師が選ばれるような流れになってきています。それを考えた時、「Care」ということに触れることが出来た今回の実習は、非常に有意義なものだったと思います。

緩和ケア臨床実習を終えた学生の声(3)

看護実習の際、緩和ケア科で実習を行ったこと、また、ロールプレイでホスピスをテーマに取り上げたこともあり、緩和ケアというものを少しは理解できているつもりでしたが、私たちが実習に訪れた日の夜中に患者さんが亡くなったと聞き、やはりショックでした。その患者さんが満足して最期を迎えられたのであれば、何もショックを受ける必要はないはずです。実習やロールプレイといったきっかけがないと、どうしても治療(cure)重視の考えになってしまいがちで、「死は敗北」といった考えに偏ってしまいます。緩和ケアに精通していない医師が多いために、患者さんの疼痛緩和が達成できないという事実が今の日本にあるというのに。


日本でも数少ない緩和ケア病棟がある大学病院で学び、実習させていただくことで、そういった自分の意識について考えるきっかけができるというのは非常に重要な経験であると思います。緩和ケア病棟に入院されている患者さんは、治療法がなくなり、最期を迎える場所として緩和ケアを選んだ患者さんばかりだと思っていましたが、実際は痛みのコントロールのために入院されている患者さんも多く、痛みがコントロールできれば自宅に戻ったり、一般の病院で入院されたりするということを知りました。緩和ケア病棟は患者さんが亡くなる場所というわけではないということが分かりました。また、今まで見ていたのは緩和ケア病棟のみでしたが、今回の実習で緩和ケアの外来見学をさせていただきました。来られていたのは抗癌剤治療を長年行っている患者さんで、効果のある抗癌剤がなくなってしまったら、緩和ケア病棟に入院するとおっしゃっているそうで、月山先生は抗癌剤治療による副作用に対する薬を処方されていました。


もとの癌に対してではなく、抗癌剤治療の副作用に対する治療を行う。これも患者さんのQOLを保つのに大きく寄与する仕事だと思いました。
午後のカンファレンスでは、月山先生と病棟の看護師さんたちが対等に意見を言い合い、患者さんの今後についてじっくり話し合われていました。看護実習の時に感じたのですが、患者さんの想いに一番近いのは看護師さんだと思います。頻繁に患者さんのもとを訪れ、Careを行っているのは看護師さんです。チーム医療という言葉が叫ばれながら、まだまだ医師が偉そうにしている医療現場が多いですが、緩和ケア病棟では本当のチーム医療を目にすることができたと思います。
お忙しい中、現在は少ないスタッフで緩和ケア病棟の患者さんを担当されており、出張などで和歌山を離れるときは充分なcareをできないことや医療費の問題など、現実に即したお話をたくさん聞かせていただきました。今回の実習で考えたことを心に留めて、患者さんが本当に必要としているものを見失わない医師になりたいと思います。緩和ケアで実習できることは非常にありがたいことだと思いました 。