哲学

1年生後期、人文社会科学系、月曜日1時限

最終更新日:2017/11/20,
スライドをふたつ追加。

基本的考え方(どんな授業?)

哲学(Philosophie, philosophy)と呼ばれるながきにわたる営みが、 これまで論究の対象としてきた事柄や論究の対象としうる事柄は、 非常に多岐にわたります。 そしてそれらの事柄を、 哲学以外の個別諸科学に対して領域的に限定することが、 現在でもできないわけではありません (そうすることに意味があるかどうかは別の話です)。 また、 それがなければ立ちゆかないこと、 いわば、 哲学屋の暗黙知的なものとなる必須の事項的知識が、 哲学に存在しないわけでもありません。 けれども、 「philosophierenは学びうるが、Philosophieは学びえない」という カント(Immanuel Kant, 1724--1804)の言葉は、 やはり、 あくまでも正しい言葉です。

精確を期して、 カントの原文を紹介しておきましょう。
Man kann also unter allen Vernunftwissenschaftten (a priori) nur allein Mathematik, niemals aber Philosophie (es sei denn historisch), sondern, was die Vernunft betrifft, höchstens nur philosophieren lernen.
Immanuel Kant, Kritik der reinen Vernunft. A837=B865
訳すと、
それゆえ、 すべての理性学(ア・プリオリな)のなかで、 唯一数学だけが学びうるのであって、 哲学(歴史記述的なものでないかぎり)は決して学びえない。 理性に関しては、 せいぜいのところ、 哲学することだけが学びうる。

反省的かつ一般的な態度のもとで(その態度をも意識化・問題化しつつ)、 言葉の真正の意味での批判や、 可能性に対する想像力と感受性を失わない推論を試み続ける営み、 あるいは平たく言って、 「このことを、 こうとしか考えられない、 この頭」を拒否し続ける試み、 そういう営みが、 哲学の少なくとも一つの姿です。

「このことを、こうとしか考えられないこの頭」という台詞は、 確か埴谷雄高の言葉だったと記憶しています。 アンケートのようなものに答えて、 埴谷は「これが私は大嫌いだ」と言ってました。

この授業は、 そういう営みの一端を展開することが目標です。

授業は、 プレゼンテーション・アプリケーションを用いて、 基本的に講述形式で行ないます。 私は普段、 出席をとったりしません。 時間の無駄。 私の趣味にも合わない。 大学の授業は、 「自分のために、 自分で勉強するために、 参加する」ものです。 こういう気持ちがない人は、 そもそも教室に来なくてよろしい。 出席なんぞをとると、 いなくていい人間がいることになって、 教室の空気が澱みます。 そうはいっても、 話の流れというものがありますから、 理解のためにも、 単位取得のためにも(?)、 選択したかぎり、 あんまり欠席しない方がいいでしょう。 よく欠席しているけどねえ、 諸君。

授業の具体的テーマ:病気(disease, Krankheit)そのものへの多様な視角

医学部の学生が対象なので、こういうテーマです。 科学哲学的ならびに科学史的な観点から、 「病気」そのものについてアプローチしていきます。

人間のからだには色々な出来事が起こりますが、 そのなかでも特定の、 他の出来事とは区別可能な事態が、 「病気」と名づけられるのはどういうことなのか。 そう名づけられることによって、 人々は、 医療者は、 何を考え、 何を行なうことになるのか。 たとえばそういった基本的な事柄を、 色々と考えていきます。

「病気に関する理論と実践、もしくは知識と経験」 「病気を説明するということ」 「病気の原因という概念」 、 この三つくらいが通奏低音になります。

ただし、 一般的抽象的な次元ばかりになってしまうと難しいでしょう。

そこで、 具体的事例を一つ取り上げ、 その事例を通じて上記のような事柄にアプローチします。 2017年度も昨年と同様に、 20世紀も終わりに近づいたころに「発見」され、 そののち、 ある一群の疾患に関する理解と対処を大幅に変化させることになった、 バクテリアを扱います。 その名はHelicobacter pylori。 21世紀の現時点でもこれをめぐる物語は動いている最中です。 もし嘘だと思うなら(そういう人は無知なだけでしょうが)、 たとえば、 Nature Reviews, Vol.10, August 2013に掲載されている、 Helicobacter pylori research: historical insights and future directionsを読むとよい。 医学医療の営みがもっている多面性・多層性をできるだけ話し、考えてみるつもり。 「多」なので上手に綺麗に話すのは難しいのだけれど、 まあ、 やってみましょう。

授業用スライドなど

以下に掲載するのは授業で用いたスライドです。 ご参考までにどうぞ。 なお、 授業終了後にそれが必要だと私によって判断された場合、 改訂されていることもあります。 pdf形式のファイルにしてあります。 リンクをクリックすると、 授業時に言った、 文書を開くためのパスワード(オープン・パスワード)の入力を求められます。 授業時には紙媒体資料を配布していますが、 それはここには掲載しません。

●その1 (10月2日分)
授業時に見てもらった動画は、残念ながらここで見ることができません。アイコンをクリックしても無駄です。

●その2 (10月16日分)

●その3 (10月30日分)
Abductionについて予定していたよりも多めに話してしまったので、 それに合わせてスライドの一部に変更を加えました。 次回の授業の最初で、Abductionについてさらに補足するつもりです。

●その4 (11月6日分)

●その5 (11月13日分)
チャンドラセカールさんにかかわる本を紹介したスライドに、 少し変更を加えました。

●その6 (11月20日分)


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