「団塊の世代」,「全共闘世代」,「バブル世代」,「松坂世代」,最近では「ゆとり世代」など,
「○○世代」というように,ある年代の人々を分類してとらえることがあります.
どちらかといえば,「近頃の若者は……」,「あの頃はよかったのに……」というようなネガティブな使われ方をすることの方が多いかもしれません.
このように特定の世代を特徴づけ,世代間の溝を強調する「世代論」の存在に本講義では着目します.
ただし,本講義が目標とするのは,世代論のネガティブな側面を検討することや,世代間ギャップを解消することではなく,
むしろ世代論のもつ利点について紹介することです.
ある世代を切り取って分析の対象とする「ライフコース分析」という方法論があります.
ライフコース分析の先駆的著作に,エルダーの『大恐慌の子どもたち』(Elder, G.H. Jr., 1974, Children of the Great Depression: Social Change in Life Experience)があります.
いわゆる戦間期に全世界を覆った大恐慌により,アメリカでは多くの中産階級が没落していきました.
そのときに子どもだった人々は,その後どのような人生の軌跡をたどったのでしょうか.
また、大恐慌を経験していない戦後世代とはどのような違いが生じたのでしょうか.
このような,広く多くの人々に共通するような経験の有無(戦争体験、被災体験など)により,
人々の思考や人生がどのように分断され,異なる課題が生み出されているのかを考えるのがライフコース分析です.
当日はライフコース分析による研究を紹介しながら,「世代論」的に考えることの意義を考えてみたいと思います.