講演要旨

1日目 7月27日(土曜日)

13:00~  無限の彼方を考えてみると ― 射影幾何学の世界 ―    数学・統計学教室 武田 好史

“無限の彼方”といってもそれは何もファンタスティックな絵空事ばかりではありません.実際,15世紀のルネサンス初期において絵画の世界に導入された線遠近法(透視図法)にみられる“消失点”は正に無限の彼方そのものです.後にそれらの概念は数学の理論体系として整理され,19世紀には“射影幾何学”という名の幾何学の一分野が成立しました.この様な成り立ちからわかるように,射影幾何学の特徴は無限の彼方(無限遠点)を考えるところにあり,その幾何学の世界では,「平行線は無限遠点で交わる」ことになります.即ち,通常のユークリッド幾何学において「異なる2直線は,平行ではない場合は1点で交わるが,平行な場合は交わらない」のように場合分けされた表現となる命題が,射影幾何学においては「異なる2直線は1点で交わる」のように場合分けの必要もなく,単純明快な表現となります.実はこれに留まらず,射影幾何学の世界はある意味で確かにファンタスティックな“数学の理想郷”であることを簡単な例で紹介します.


14:45~  遺言について知っておきたいこと                 法学教室 神谷 隆一

相続は、誰にでもいつか必ず起こります。残された親族が相続手続きで苦労しないよう、今から準備できること。その一つが遺言の作成です。今回の講座では、遺言の必要性について考えていただくための基本的事項を解説します。
 遺言がある場合には、原則として、遺言者(被相続人)の意思に従った相続財産の分配がなされますが、遺言がない場合には相続財産はどのように取り扱われるのでしょうか。この場合には、民法が規定する法定相続人に法定相続分に応じて承継されますが、法定相続人が数人いる場合には、その共有に属することになり、各相続財産の具体的な分配の仕方については、原則として、法定相続人間で話し合いの場を持ち遺産分割の協議をして決めていくことになります。法定相続人どうしの関係が疎遠であったり、関係が必ずしも良好ではない場合には、遺産分割協議が難航することが想定されますし、被相続人の事業を承継する子などの特定の相続人に事業用の特定の相続財産を承継させる必要があるとしても、法定相続人間の遺産分割協議でその通りに合意できるかどうかは分かりません。
 また、子がおらず夫婦二人だけで暮らしていた方が亡くなられた場合、残された配偶者が当然に相続財産をすべて承継できるわけではありません。配偶者とともに、被相続人の直系尊属(父母など)または兄弟姉妹(直系尊属が既に他界している場合)も法定相続人になるからです。
 そこで、この講座では、遺言について知っておきたいこととして、遺言がない場合に不都合が生じてしまうおそれがあると思われる代表的なケースを幾つか取り上げ、遺言の必要性について考えてみるきっかけにしていただくとともに、公正証書遺言および昨年7月に法改正がなされた自筆証書遺言に関する基礎的知識についても解説します。



2日目 7月28日(日曜日)

13:00~  あなたが解くかも?!数学の未解決問題          数学・統計学教室 田中 晴喜

 皆さんは数学の未解決問題をご存知でしょうか。恐らく正しいのだろうけれども、厳密に示すことができない問題がたくさんあり、数学の未解決問題と言われています。有名な問題としては、リーマン仮説, P対NP問題などがあり、一部は懸賞問題ともなっています。今回はその一つである「3x+1問題」を取り上げます。この問題の面白いところは、大変簡潔な計算式で表現できるにも関わらず、多くの数学の分野と関係し、そして「解けそうで解けない」ところでしょう。今回の講演では、3x+1問題と「力学系」と呼ばれる分野との関連性に触れます。また、高校までの知識で解くためのアイデアを紹介しますので、もしかしたら自分でも解けそう?!と思っていただけたら幸いです。

14:45~  海に生息する危険な生物                    生物学教室 平井 秀一

海には多種多様な生物が生息しています。その種類は現在わかっているだけでも20万種近くに上り、未発見のものはその10倍以上になるとの試算もあります。その中には水産資源として有用なものが多く含まれますが、人にとって危険な生物も含まれます。危険な海洋生物といえばまずサメやクラゲを思い浮かべる方が多いでしょう。釣りをされる方であればオニオコゼやゴンズイのように毒のある棘を持つ魚を連想されるかも知れません。食べるときは命がけ?のフグもある意味危険な生物と言えるでしょう。これら比較的よく知られたものに加え、日本近海には多種多様な危険生物が生息しています。例えば小さな体ながら刺したり噛みついたりすることで人を死に至らしめることがある貝やタコの仲間、キングコブラのような毒蛇と同じコブラ科に属する海蛇等々。これらの危険な生物は機能的に優れた歯、棘、針、毒を持っており、中にはフグのように他の生物が作った毒を利用しているものもいます。本講座ではこれらの生物が危険とされる理由について解説し、海洋レジャーを楽しむ際や海の幸を口にする際に気をつけるべきことについてお話しします。

講演要旨

1日目 7月27日(土曜日)

13:00~

無限の彼方を考えてみると
― 射影幾何学の世界 ―    

(数学・統計学教室 武田 好史)

“無限の彼方”といってもそれは何もファンタスティックな絵空事ばかりではありません.実際,15世紀のルネサンス初期において絵画の世界に導入された線遠近法(透視図法)にみられる“消失点”は正に無限の彼方そのものです.後にそれらの概念は数学の理論体系として整理され,19世紀には“射影幾何学”という名の幾何学の一分野が成立しました.この様な成り立ちからわかるように,射影幾何学の特徴は無限の彼方(無限遠点)を考えるところにあり,その幾何学の世界では,「平行線は無限遠点で交わる」ことになります.即ち,通常のユークリッド幾何学において「異なる2直線は,平行ではない場合は1点で交わるが,平行な場合は交わらない」のように場合分けされた表現となる命題が,射影幾何学においては「異なる2直線は1点で交わる」のように場合分けの必要もなく,単純明快な表現となります.実はこれに留まらず,射影幾何学の世界はある意味で確かにファンタスティックな“数学の理想郷”であることを簡単な例で紹介します.

14:45~

遺言について知っておきたいこと

(法学教室 神谷 隆一)

相続は、誰にでもいつか必ず起こります。残された親族が相続手続きで苦労しないよう、今から準備できること。その一つが遺言の作成です。今回の講座では、遺言の必要性について考えていただくための基本的事項を解説します。
 遺言がある場合には、原則として、遺言者(被相続人)の意思に従った相続財産の分配がなされますが、遺言がない場合には相続財産はどのように取り扱われるのでしょうか。この場合には、民法が規定する法定相続人に法定相続分に応じて承継されますが、法定相続人が数人いる場合には、その共有に属することになり、各相続財産の具体的な分配の仕方については、原則として、法定相続人間で話し合いの場を持ち遺産分割の協議をして決めていくことになります。法定相続人どうしの関係が疎遠であったり、関係が必ずしも良好ではない場合には、遺産分割協議が難航することが想定されますし、被相続人の事業を承継する子などの特定の相続人に事業用の特定の相続財産を承継させる必要があるとしても、法定相続人間の遺産分割協議でその通りに合意できるかどうかは分かりません。
 また、子がおらず夫婦二人だけで暮らしていた方が亡くなられた場合、残された配偶者が当然に相続財産をすべて承継できるわけではありません。配偶者とともに、被相続人の直系尊属(父母など)または兄弟姉妹(直系尊属が既に他界している場合)も法定相続人になるからです。
 そこで、この講座では、遺言について知っておきたいこととして、遺言がない場合に不都合が生じてしまうおそれがあると思われる代表的なケースを幾つか取り上げ、遺言の必要性について考えてみるきっかけにしていただくとともに、公正証書遺言および昨年7月に法改正がなされた自筆証書遺言に関する基礎的知識についても解説します。

 

2日目 7月28日(日曜日)

13:00~

あなたが解くかも?!
数学の未解決問題

(数学・統計学教室 田中 晴喜)

皆さんは数学の未解決問題をご存知でしょうか。恐らく正しいのだろうけれども、厳密に示すことができない問題がたくさんあり、数学の未解決問題と言われています。有名な問題としては、リーマン仮説, P対NP問題などがあり、一部は懸賞問題ともなっています。今回はその一つである「3x+1問題」を取り上げます。この問題の面白いところは、大変簡潔な計算式で表現できるにも関わらず、多くの数学の分野と関係し、そして「解けそうで解けない」ところでしょう。今回の講演では、3x+1問題と「力学系」と呼ばれる分野との関連性に触れます。また、高校までの知識で解くためのアイデアを紹介しますので、もしかしたら自分でも解けそう?!と思っていただけたら幸いです。


14:45~

海に生息する危険な生物

(生物学教室 平井 秀一)

海には多種多様な生物が生息しています。その種類は現在わかっているだけでも20万種近くに上り、未発見のものはその10倍以上になるとの試算もあります。その中には水産資源として有用なものが多く含まれますが、人にとって危険な生物も含まれます。危険な海洋生物といえばまずサメやクラゲを思い浮かべる方が多いでしょう。釣りをされる方であればオニオコゼやゴンズイのように毒のある棘を持つ魚を連想されるかも知れません。食べるときは命がけ?のフグもある意味危険な生物と言えるでしょう。これら比較的よく知られたものに加え、日本近海には多種多様な危険生物が生息しています。例えば小さな体ながら刺したり噛みついたりすることで人を死に至らしめることがある貝やタコの仲間、キングコブラのような毒蛇と同じコブラ科に属する海蛇等々。これらの危険な生物は機能的に優れた歯、棘、針、毒を持っており、中にはフグのように他の生物が作った毒を利用しているものもいます。本講座ではこれらの生物が危険とされる理由について解説し、海洋レジャーを楽しむ際や海の幸を口にする際に気をつけるべきことについてお話しします。