皮膚は生体の最外表にあり,生物学的営みの上から重要な臓器となっています.一方で,整容的にも他人の視線に日々曝されており,皮膚の性状の変化が精神的に影響をもたらします.わずかなニキビで,自殺を図る人がいます。わずかに赤み(発赤)がなくなったことで,笑顔と自信がよみがえる人がいます。時に悲しく,時にうれしく,時に恥ずかしく,時に晴れがましく.この変化が,なぜか皮膚の性状にも微細な変化をもたらすのです。このような皮膚の状態をサイエンスするのが皮膚科学です。
■皮膚科学はプライマリ・ケア
機械・検査に偏重しがちな現在の医療にあって,人間としての患者に直接密着した皮膚科学こそ,プライマリ・ケアの第一線です.すべての臨床医に必要な,患者をよくみること,患者に触れること,そして肉眼的な所見とその病理組織学的な病態とを関連づけて考えることを,皮膚科学は教えてくれます。
■皮膚科学は難しくない
専門分野の一つとしての皮膚科学には難解な病名も多いし,漢字も難しい.しかし,皮膚の構造・機能はきわめて多岐にわたっており,未知のものに満ちた人間の身体を,直接目で見,手で触れることができるがゆえに,詳細な観察に基づいて疾患の種類・分類が細かくなったのです。皮膚科学の本当の面白味は,皮膚について,皮膚疾患についてよく考えることによって得られるはずです。
2008年10月 編者 古川福実
皮膚科前教授:古川 福実
The art of medicine
-若き心と腕に期待して
皮膚科学は難しくない
山田瑞穗
浜松医大皮膚科初代教授、元副学長
随筆、左右(とにかく)なんとか過ごしてはきたを掲載しました。