いまこそ、家族療法を

 
 

家族療法は1950年代に欧米で発展し、1970年代後半から日本でも広がりをみせてきた治療法です。家族療法は、精神医学的症状や問題に対し個人レベルで介入する認知療法や行動療法などの精神療法とは2つの点で大きく異なります。

1点目として、家族療法では家族システムの中で症状や問題を理解することがあげられます。ある個人が示す症状や問題を家族間の関係性などに影響を受けて生じるものとして捉え、その個人は見かけ上患者の役割を与えられたものとして「IPidentified patient:患者とみなされた人)」と表現されます。

2点目として、原因と結果を直線的因果律ではなく円環的因果律で理解しようとする点があげられます。たとえば、子どもが夜間に出歩くなどの非行行為を示している場合、母が子どもに過剰に干渉する(A)→子どもが反発し夜間に出歩く(B)→父が帰宅した子どもを頭ごなしに叱責する(C)→子どもが怒り壁を殴る(D)と一連の家族の言動を理解するのは、直線的因果律に則したやり方です。ここで、DAの繋がりを理解し、ABCDA・・と円環的に把握した場合、円環的因果律に則して理解したといえます。

上記2点の特徴がある家族療法の治療介入では、見かけ上の患者に焦点を当てるのではなく、ABCDA・・のある「→」部分に焦点を当て変化を目指します。たとえばBCに着目すれば、父が叱責するのを我慢して、対話を試みることを提案するなどとなります。

児童青年精神科医の筆者にとって必須の治療法で、成人の領域でも種々の精神障害、精神医学的問題に実践されている治療法です。筆者の実感としては、認知療法、行動療法などの他の治療法と組み合わせることで有効性が高まる印象があります。興味のある方には「家族療法の視点(中村伸一著、金剛出版)」がおススメです。