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『細胞生物学』試験について

 以下は「細胞生物学」小山分担分からの予定選択肢です。これらは全部正しい記述です。
問題に出す時には例題のような形になるでしょう



例 DNAの性質について正しいのはどれか

  1. DNAはタンパク質と一緒になって染色体を形成している。
  2. リボースとデオキシリボースの違いは糖の3’炭素原子にヒドロキシ基が結合しているかどうかである。
  3. DNAの二重らせんの安定性は、水素結合だけでなく積み重なった塩基間の疎水性相互作用やファンデルワールス力によっても保たれている。
  4. TATAボックスにTBP (TATA box-binding protein)が結合するとその部部でDNAは折れ曲げられる。
  5. DNAの二重らせん構造の安定性は、溶液の温度や、イオン強度の影響を受けるがpHによって不安定化することはない。
  1. (1) (2) (3)
  2. (1) (3) (5)
  3. (1) (3) (4)
  4. (2) (3) (4)
  5. (2) (3) (5)

  答え  C


【予定選択肢】



1) DNAはタンパク質と一緒になって染色体を形成している。
2) 全てのヌクレオチドは五炭糖分子と塩基とからなる。
3) リボースとデオキシリボースの違いは糖の2’炭素原子にヒドロキシ基が結合しているかどうかである。
4) 核酸鎖には方向性があり、5’末端では糖の5’炭素原子にヒドロキシ基かリン酸基が結合しており、3’末端では糖の3’炭素原子にヒドロキシ基が結合している。
5) DNAの二重らせんは2本の相補的なポリヌクレオチド鎖が逆平行で結合している。
6) 塩基対形成は、AとTが2本の水素結合で、GとCが3本の水素結合で結ばれる。
7) DNAの二重らせんの安定性は、水素結合だけでなく積み重なった塩基間の疎水性相互作用やファンデルワールス力によっても保たれている。
8) DNA結合タンパク質は、主溝か副溝にでている塩基の端の原子に接触することで二本鎖DNAの塩基配列を読取ることができる。
9) DNAの二重らせんは、長軸方向には水素結合がないため柔軟に折れ曲げることができる。
10) TATAボックスにTBP (TATA box-binding protein)が結合するとその部部でDNAは折れ曲げられる。
11) DNAの変性(または、融解)とは二重らせんをほどいて2本のDNA鎖を解離させることである。
12) DNAの融解温度は、G・C含量が多い程高くなる。
13) DNAの二重らせん構造は、溶液の温度を上げたり、イオン強度を下げたり、極端なpH(酸性側もアルカリ性側も)にしたりすると不安定化する。
14) 変性したDNAは、変性化条件を元に戻すことにより再生できる。
15) DNAの再生は、無関係な塩基配列を持つ鎖が共存していても正常に進む。
16) トポイソメラーゼは、複製などの過程でDNA分子に生じたねじれの歪を解消する酵素である。
17) 原核細胞のゲノムDNAは環状分子だが、真核細胞のゲノムDNAは直線状分子である。
18) RNAはリボースのC2に結合したヒドロキシ基を持つためDNAより化学的に不安定だが、同時にRNAが触媒(酵素)活性を持ちうることにもつながっている。
19) 触媒RNAをリボザイムとよぶ。リボザイムはタンパク質と結合することにより触媒活性に必要なRNA構造を安定化させる。
20) DNAもRNAも、核酸は必ず5’→3’方向に合成される。
21) 転写の開始にあたってはRNAポリメラーゼが二本鎖DNA上のプロモーターを識別して結合する。この結合には基本転写因子を必要とする。
22) 原核生物では複数の遺伝子が同一のプロモーターに支配されており、遺伝子群のこの転写単位をオペロンという。
23) 真核生物の遺伝子では、タンパク質をコードする配列(エキソン)が非コード配列であるイントロンで分断されている。
24) 原核生物では転写と翻訳が同時に進行する。
25) 真核生物では1次転写産物(mRNA前駆体)の両端が修飾される。
26) 新生RNAの5’末端は合成されるとすぐにキャップ構造が付加される。
27) キャップ構造の付加とは5’,5’-トリヌクレオチド結合による7-メチルグアニル酸の付加である。
28) キャップ構造は5’端からのRNA分解からmRNAを保護する。
29) mRNA前駆体の3’端末はポリ(A)尾部が付加される。
30) ポリ(A)尾部では、アデニル酸残基が100〜250個連続している。
31) ポリ(A)尾部を合成する酵素はRNAポリメラーゼでなくポリ(A)ポリメラーゼである。
32) RNAスプライシングはmRNA前駆体からイントロンが切り出されエキソンがつなぎ合わされる反応である。
33) 真核生物mRNAでは5’端末と3’端末の両方に非翻訳領域がある。
34) 複数のイントロンを持つ遺伝子では選択的スプライシング(alternative splicing)が起り、1つの遺伝子から類似した複数のタンパク質(アイソフォーム)が作られる。
35) タンパク質のアイソフォームは選択的スプライシングにより作られる。
36) ヒトの遺伝子の6割は選択的スプライシングを行う。
37) 細胞内に存在するタンパク質の種類は当該タンパク質遺伝子の転写開始の制御により決められる。
38) mRNA上に転写された遺伝情報は特定のアミノ酸に対応する三塩基配列(コドン)という形で保たれている。
39) tRNAは結合するアミノ酸に応じたアンチコドン(三塩基配列)を持つ。
40) 遺伝暗号の64のコドンの中で61個はアミノ酸を指示するが3個は対応するアミノ酸を持たずタンパク質合成の終止コドンとして働く。
41) 複数のコドンが同じアミノ酸を指定することがある(コードの縮重)。
42) タンパク質合成の開始コドンは殆どの場合AUG。
43)対応するアミノ酸をtRNAにつなぐ酵素をアミノアシルtRNA合成酵素と云う。
44) 全てのtRNAの3’末端はCCAで終っており、一番端のアデノシンの2’-OH 基又は3’-OH基にアミノ酸のCOOH基がエステル結合する。
45) メチオニルtRNAには2種類あり、ひとつは翻訳開始のコドンにだけ対応できる特殊なものである。
46) 真核細胞の翻訳開始ではリボソームの開始複合体の組立てがmRNAのキャップ部位で起きる。
47) 真核細胞のタンパク質合成は、mRNAの5’末端から一番最初のAUGから始まる。
48) mRNAによってはIRES(内部リボゾーム結合部位)を持つものがあり、これらでは翻訳の開始が5’端から最初のAUGでなくmRNA内部のAUGから始まる。
49) 翻訳開始にはinitiation factor (eIF:開始因子)と呼ばれるタンパク質因子が必要である。
50) ポリペプチド鎖伸長反応にはelongation factor(伸長因子)と呼ばれるタンパク質因子が必要である。
51) リボソーム上でのペプチジル転移反応を触媒するのはタンパク質でなくリボソーム大サブユニットrRNAである。
52) mRNA上でのリボゾームの移動(トランスロケーション)には伸長因子に結合するGTPの加水分解エネルギーが使われる。
53) 終止コドンでのタンパク質合成の停止は終結因子(release factor)が必要である。
54) 新生ポリペプチドの3次構造形成(折りたたみ)にはシャペロンが寄与する。
55) タンパク質合成を効率よく行うために、1本のmRNAに複数のリボソームがくっついたポリソーム構造がとられるのに加え、mRNAの3’と5’末端とが結合し環状構造もとっている。
56) 環状ポリソームの形成には、ポリ(A)結合蛋白I(PABPI)とeIF4(翻訳開始因子)の結合が関与している。
57) DNAポリメラーゼがDNA合成を開始するためにはプライマーが必要である。
58) 複製起点ではヘリカーゼが2本鎖DNAをほどいて鋳型となれるようにする。
59) 複製起点も転写開始部位も塩基配列はA・Tに富んでいる。
60) DNA複製起点ではプライマーゼ(特殊なRNAポリメラーゼ)がプライマーRNAを合成する。
61) 複製時に2本鎖DNAをほどく時に生じる超らせん状態はトポイソメラーゼTがDNA鎖の片方を切断することで解消する。
62) ラギング鎖の合成では数百塩基ごとにRNAプライマーが合成され、それを利用して不連続なDNA断片(岡崎フラグメント)としてDNA鎖が合成される。
63) 岡崎フラグメントは、プライマーRNA部分が除去された後DNAリガーゼで連結され る。
64) 複製フォークにおいては、ヘリカーゼで2本鎖DNAがほどかれた後プライマーゼ-DNAポリメラーゼα複合体がプライマーを合成し、続いてDNAポリメラーゼδが娘DNA鎖を伸ばす。
65) 複製フォークにおいてDNAポリメラーゼδはRfc (replication factor C)やPCNA (proliferating cell nuclear antigen)と複合体を形成し、DNA合成を行う。
66) DNA複製は、ふつう起点から両方向に進む。
67) 真核生物の染色体DNA分子は線状分子で複数の複製起点を持つ。
68) 細胞のDNA合成は複製開始の段階で制御されており、MCMヘリカーゼの活性化で始まる。
69) MCMヘリカーゼの活性化はS期サイクリン依存性キナーゼ(特異的なタンパク質リン酸化酵素)で制御されている。


70) 高等真核生物の遺伝子発現の基本は転写開始の制御である。
71) 転写因子はDNA上の転写制御領域の特異的な塩基配列を認識して結合することにより、RNAポリメラーゼのプロモーターへの結合を制御する。
72) 転写制御領域は必ずしもコード領域に隣接している訳ではない。
73) 真核細胞には3種のRNAポリメラーゼがあり、3種共通のサブユニットと各ポリメラーゼ独自のサブユニットとを持つ。
74) タンパク質をコードする遺伝子の転写はRNAポリメラーゼUが行う。
75) RNAポリメラーゼUの最大サブユニット(RPBI)のカルボキシル末端にはTyr-Ser-Pro-Thr-Ser-Pro-Serという7アミノ酸の長い重複反復配列がある(CTD:カルボキシル末端ドメイン)。
76) 転写が開始するとRNAポリメラーゼUのCTD中の幾つものSerとTyrがリン酸化される。
77) 真核細胞では、TATAボックス、イニシエーター、およびCpGアイランドがプロモーターとして働いている。
78) 多くの遺伝子で、転写開始のためにDNAに結合するRNAポリメラーゼUの位置はTATAボックスが決めている。
79) ハウスキーピング遺伝子ではCpGアイランドがプロモーターとして働くことが多い。
80) 細胞型特異的な遺伝子発現を制御しているのはプロモーター(TATAボックスやイニシエーター配列)から100〜200塩基対以内の上流に位置するプロモーター隣接要素である。
81) RNAポリメラーゼUによる転写は転写開始部位から数千塩基対も離れたエンハンサー部位によって支配される。
82) プロモーター隣接要素もエンハンサーも共に細胞型に特異的である。
83) DNA上の転写調節領域には塩基配列特異的に転写因子タンパク質が結合し、転写を正負両方向に制御する。
84) 転写因子タンパク質は、DNA結合ドメインと(転写)活性化ドメインという”ドメイン構造”を持つものが多い。
85) 転写因子のDNA結合ドメインは下記のような幾つかの構造タイプに分類できる。 
     a) helix-turn-helix motitとhomeodomain
     b) zinc finger タンパク質(C2H2ジンクフィンガーとC4ジンクフィンガー)
     c) leucine zipper タンパク質のコイルドコイル(coiled-coil)構造
86) エンハンサー上には多重タンパク質複合体(エンハンスソーム)が形成される。
87) 真核細胞のDNAは、ほぼ同量のタンパク質と結合してクロマチンを形成する。
88) クロマチンの基本的構造単位はヌクレオソームで、ヒストンタンパク質の円盤状コアに約147塩基対のDNAが堅く巻きついている。
89) ヒストンH3とH4のN末端ドメインとヒストンH2AのC末端ドメインのアミノ酸残基はヌクレオソームの表面から突び出しておりヒストン尾部(histone tail)と呼ぶ。
90) ヒストン尾部は可逆的に化学的修飾を受け、これによってヌクレオソーム相互間の相互作用が変化する。
91) ヒストンH3とH4尾部が非アセチル化されるとクロマチンが凝縮し、転写開始が困難になる。
92) 転写の制御にはクロマチンの構造が関与しており、例えばヘテロクロマチン領域にある遺伝子は転写されない。
93) サイレンサーDNA配列は隣接する遺伝子の転写を抑える(クロマチン介在性抑制)。
94) テロメアはサイレンサー活性を持つ。
95) サイレンシングはヒストン尾部の低アセチル化をともなう。
96) プロモーターDNAが非アセチル化ヒストンを持つヌクレオソーム上にあると、基本転写因子はTATAボックスやその近傍に近づくことができない。
97) ヒストンデアセチラーゼはヒストン尾部の非アセチル化をもたらし、転写抑制に寄与している。
98) ヒストンアセチラーゼは、プロモーター付近のヌクレオソームのヒストンを高アセチル化することにより転写開始に向かって働く。
99) 真核細胞の核内では転写産物は遊離のRNAとして存在するのでなく、一群の核内タンパク質と結合しヘテロリボ核タンパク質粒子(hnRNP)を形成している。