和歌山県立医科大学国際交流センター
| ENGLISH | JAPANESE |

留学生の体験談

体験談

ハワイ大学医学部留学報告書                     上田彩加

2017年1月9日から2月11日までの一ヶ月間、ハワイ大学のオブザーバーシップに参加させていただきました。最初の三週間はkuakini病院の内科チームに加わっての実習で、最後の一週間はTokeshi先生による実習でした。実習のシステムなどは先輩方とほとんど同じなので、割愛し、何を学んだかに焦点を当てたいと思います。
まず、他の海外への選択肢がある中でハワイ大学への留学を選んだ理由としては、アメリカの医学生が行う実習は初期研修医と同じようなものだと聞いていたので、日本のポリクリよりも臨床に近い経験ができると先輩方から伺っていたからです。また、ポリクリをほとんど終えた状態で自分の実力を試したい、ハワイ大学の学生から刺激を受けたい、1年後には現場で働き始めるので今自分に何が足りないかを知りたいなどもありました。
留学でできるだけ多くのものを得るためには準備が重要ということで留学を控えていた6ヶ月間は、日本語で医学知識の復習、英語の症例問題を解く、英語のスピーキング力を磨くことに時間をあてました。
しかし、kuakini病院での実習が始まると、あまり役に立っていないということにすぐ気づかされました。実習では、レジデントとインターンの先生方2人一組のチームに配属さレます。医学生は日本での”お客さん”扱いではなく、チームの一員として扱われ、治療方針への意見を求められます。この扱いに慣れていなかった私は最初の一週間はただただチームが持っている患者さん10人のデータを追うことに必死で、レジデントの先生に意見を求められても黙ってしまっていました。私の知識が十分でないというのもありますが、症例問題を含めて机の上の勉強ばかりしていたので、予想外のことが起きた時(例えば、抗菌薬を投与したのに全然肺炎が治らない、白血球が下がらない)に対応する力がない、対処の考え方も知らないということでした。実際の臨床の現場は一対一対応で答えをくれるわけではないということを痛感させられました。”医学知識は日々更新されるものだから、まるまる覚えるというよりも、常に最新の知識を調べて、考え、使いこなせる力こそが大事。”というレジデントの先生の言葉が身にしみました。
早速、痛感したことがもう一つ、症例プレゼンの重要性です。日本にいるときは症例プレゼンの重要性があまりわかっていなかったのですが、とても大事でした。チームの先生方がattending Dr.という上級医の先生に毎日チームの受け持ち患者全員分のプレゼンを行います。患者さんの全ての情報を3分くらいで伝え、治療方針への了解、アドバイスをもらいます。私が感動したのは、このプレゼンを聞くだけで、カルテを読まなくても患者さんの状態がしっかりとわかるようになっているということと、チームの先生方がこの10人分のプレゼン内容をほとんど頭に入れているということです。プレゼンができる=患者さんの情報が整理されて頭に入っている、理解していることだと気付きました。
数日、実習をしたことで、目標がはっきりと見えてきました。
@患者さんを割り当ててもらい、自分の言葉でSOAPを書いて、治療計画を練る。
A疑問点があれば、論文など確かな情報を調べた上でレジデントに聞く。自分の予想だけで解決したことにしない。
Bプレゼンができるようになる。
3週間の実習が終わり、目標が達成できたかどうかは微妙なところですが(もっと時間と経験が必要です。)、チームの先生方のおかげで自分一人では気づけなっかったような多くのことに気づくことができました。いくつかを紹介したいと思います。
インターンの朝は早く、朝5時からラウンドというのが通常業務で、そんなに朝早くからする必要があるのか実習前は疑問でしたが、朝一番に患者さんの状態を把握することができ、7時にレジデントがくる時点で治療方針の決定ができる、早くにオーダーを出せるのでその日のうちに結果が得られる(ものもある)などメリットが多くありました。また、カルテの書き方、方法が細かく決まっているので、それまでなんとなくで書いていたカルテの記載方法がようやくわかりました。日本に帰ってからも、私は幸運にもポリクリがまだあるので朝一番に患者さんのところに行き、カルテを書く習慣を続けたいと思いました。
アメリカの医療は日本以上に患者主体であり、(保険によってできる治療や検査も変わるし、負担額も日本とは比べものにならないということも関係していると思いますが。)患者さんや家族が理解できるまで何度も何度も説明しているのが印象的でした。そして患者さんも積極的に治療や経過について聞いていました。質問に答えられるだけのエビデンスに基づいた知識が必要であるということを痛感しました。
レジデントの先生方の仕事内容にはもちろん病棟業務がありますが、同じくらい重要な仕事としてインターンと学生の教育・育成があります。私のチームのレジデントの先生がとても良い方で、一方的に教えるのではなく、自分で勉強するように上手く促す、同じ目線で教える、無知を責めない、たまに喝を入れるという方針ですごく心地よく学ぶことができました。当たり前のようでなかなか実践できない方針ですが、いつか自分が教える立場になったらこの先生の姿勢を目標に行いたいです。
そして最後の渡慶次道場が始まりました。とても厳しい1週間になると聞いていたので心していきましたが、厳しいというよりはしなければならないことが多いというだけで、予想していた何倍も楽しかったです。渡慶次先生のタームでは患者さんとのコミュニケーション、身体診察が許可されていて(渡慶次先生の責任によって許可していただいています。)、クリニックで問診や身体診察をしたり、入院患者さんを複数人受け持たせていただけるのでkuakini病院での3週間よりも患者さんに直接接する機会が多くあり、一人で行うことに慣れることができました。自分一人で患者さんを見るとあってしかし道場というだけあって、技術的な面だけでなく精神的な面でも非常に勉強になりました。道場に入門できて最もよかったことは”理想的な医師像”を実践している先生と知り合えたこと、先生の患者さんに対するpoliteでhumilityとhumanityを併せ持った接し方を見れたこと、医師としていきていく上で必要な心、医学の歴史など多岐にわたる内容のお話を毎日朝と夕方に1時間ずつ聞けたことでした。”医師はとても大変な仕事であることには違いないので、頑張りすぎると燃え尽きてしまうこともあるので常に2つのものを心の中に持っておくこと。?believe いつも目標・ゴールを持って生きること。達成したら次の目標を設定する。?passion 心の中で燃やし続ける。消えそうになったら渡慶次先生に言う。” これから先、医師として生きていく上で辛い時には何度もこの言葉を思い出すでしょう。
最後になりましたが、前国際交流センター長の前田先生を筆頭に、派遣にあたりご支援いただいた先生方、センターの林さん、助成金をご採択いただいた奥田育英会、和歌山県立医科大学に、このような貴重な機会が与えて頂けたことに心より御礼申し上げます。また、この留学を一緒に乗り越えてくれた佐々木さん、本当にありがとうございました。
この留学では、来年から研修医として働く上で自分に何が足りていないかだけでなく、人間として、医師として生きていく上での必要な考え方など、予想していたよりも遥かに多くのことを学び、経験することができました。ここで学んだことをこれからのポリクリで実践し、将来活かせていけるようにさらに勉学に励みたいと思います。和歌山県立医科大学の後輩の皆さんにも、留学に少しでも興味があれば勇気を持って挑戦してほしいと思います。きっと、想像していたよりもいい経験になり、自分の成長を実感できるはずです。

copyright(c)2008 wakayama medical university, all right reserved