和歌山県立医科大学国際交流センター
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留学生の体験談

体験談

ミネソタ大学留学体験記
                                                            医学部3年 安藤愛里

 私は2016年10月31日から2017年1月20日までの約3ヶ月間、アメリカのミネソタ大学へ留学しました。ミネソタ大学のGenetics, Cell Biology and Development というラボの川上教授のご指導のもと、基礎研究について様々なことを学びました。
  研究室での実験は、主にin situ hybridization、免疫染色を行いました。in situ hybridizationではサンプルとして、異なる発育段階のマウスの胎児を用い、様々な遺伝子がどの発育段階で胎児のどの部位で発現しているのかを、それぞれのRNAに特異的なプローブを利用して調べます。マウスの胎児をチューブに入れ、プロトコルに沿ってsolutionを入れかえるなどします。この実験は1セット行うのに3日かかり、1セットあたり多い時には40本以上のチューブを用いて一度に実験しました。免疫染色でもin situ hybridizationと同様にサンプルはマウスの胎児を用いて遺伝子の発現を調べますが、in situ hybridizationと異なりスライドを作り、タンパク質の発現をみるための染色を行います。ここで用いるスライドの準備のため、マウス胎児を埋め込んだパラフィンブロックを作り、そのブロックから切片を切り出し、スライドを作成する過程も含めて実験しました。ここで作ったスライドからきれいなものを選びプロトコルに沿って実験を進めていきます。
  in situ hybridizationでは3日かかりましたが、免疫染色ではパラフィンブロック作成からスライド作成までに約3日、免疫染色自体に3日かかります。in situ hybridizationと免疫染色のどちらも、実験で使う様々なsolutionは自分で作らなければならないものもあり、1 μL単位で計らなければいけない時には慎重に確認しながら行いました。もちろんサンプルの準備にはさらに長い時間がかかっていますが、私の行った実験だけを考えても1つの遺伝子発現を調べるために3日もかかり、1つの作業を間違えただけで正確な結果が出ないので、solution作成のための計算やひとつひとつの作業、時間の管理等、常に集中力が必要でした。
  研究室では、実験の手技を教えていただく時間以外は基本的に一人で黙々と実験を進める日々で、次の作業、その次の作業に追われていたらあっという間に一日が過ぎてゆきました。しかし、何時間も作業を続けていると夕方ごろに疲れが出てくることもあり、そんな中でもミスをしないよう心がけたことで精神面でも成長できたと思います。3日間の実験がほぼ終わり最後の手技を行うときは、きちんと結果が出るか、どこかで間違えていて染色されなかったらどうしようかと考え、毎回緊張していました。このような長時間一人での実験は普段学校の実習ではできないことの一つですが、今回研究について他にも自分の知らなかった世界を知ることができました。
  例えば、ある組織染色の手順や科学的仕組みを教科書で読んでも、ひとつひとつの手順がどれだけ複雑か、どれだけ慎重にやらなければいけないかはわかりません。実際に教えていただいて自分でやってみて初めて理解できることは多く、単にsolutionの交換、ピペットの使い方というような作業をとっても、正確な実験データを得るための工夫や、限られた時間で効率的に実験を進めるための工夫がありました。学校の実習でやるのなら多少効率が悪くても許されるのかもしれませんが、研究としてやるのなら誰よりも早く正確な新しい発見を限られた予算でする必要があるので、同じようなことをやっていても実習と研究では全く違いました。
  また、ミネソタ大学では様々なラボのミーティングやセミナーが毎日至る所で行われていました。そこで私は、川上教授に紹介していただいた毎週木曜日のラボミーティングと金曜日のセミナーに、実験の都合がつく限り積極的に参加しました。ラボミーティングでは川上教授のラボも含めた2つのラボが合同でミーティングを行い、研究者が自分の研究の進捗状況を発表し、教授や他の研究者と意見を交換し合っていました。セミナーでは遺伝子に関わる研究をしている様々なラボの教授や研究者、学生が集まり、学内外から招かれたゲストの講演を聞きます。ラボミーティングやセミナーを通して感じたことは、ミネソタ大学にはとても多くの研究者がいて、少しずつ研究のメインテーマは異なっていてもお互いに高め合っているということです。インターネット等を使えば知りたい分野の専門家を探しコンタクトすることが可能な時代ではありますが、ミネソタ大学の場合、日常的に多くの研究者と繋がり、その人間関係の中で知識面、技術面において多くの情報を得ることができるのだろうと思いました。公演の内容は高度で、全てを理解するのは難しかったですが、少しでも聞き取り、理解しようと必死でした。ラボで手技を教えていただくのは日本語だったこともあり、ラボミーティングやセミナーは大学内で英語に触れることができる貴重な機会でもありました。私の現在の英語力では語彙力も聞き取る能力もまだまだですが、自分も英語でプレゼンし議論に加われるような英語力を身に付けたいと強く刺激を受けました。
  研究室で約3ヶ月を過ごし、印象的だったのはラボで働く川上教授や研究者の熱意です。生きた生物を用いて研究するということは、常に世話をしないといけません。年中休みなく、朝早くから夜遅くまで研究する姿を間近で見て、今まで漠然としていた研究の世界の大変さをひしひしと感じました。
   この留学期間中のホームステイでの経験についても少し触れさせていただきます。冬のミネソタは非常に寒く、最低気温が-30度を下回るような日もしばしばありましたが、ホストファミリーはとても温かく接してくださいました。休日はホストファミリーと過ごし、ミネソタ観光や、毎週日曜午前には教会へ行ってたくさんのミネソタの方と関わることができました 。「寒いからと言って家から出なかったら気分が憂鬱になる。だからミネソタの人は寒いからこそ外に出て人と会ったり運動したりする。」と言って、日本と比べ物にならない寒さに驚いている私を、コンサートやパーティー、動物園など色々な所に連れ出してくれました。家では11月前半までは広い庭の落ち葉かきなどの冬支度を手伝い、11月後半はThanksgivingの、12月はクリスマスのパーティーがあり、アメリカの季節のイベントを家族とともに楽しみました。 ホストファミリーと過ごしたことで、英語力を伸ばすため積極的に会話し、アメリカの日常生活を経験し、ミネソタの方々の優しさに触れることができたので、滞在期間中ホームステイを選択してよかったです。
  最後になりましたが、このような大変貴重な経験ができたのも指導してくださった川上教授はじめKawakami Labの方々、日本において渡米前から長期に渡ってサポートしてくださった和医大の先生方、温かく迎えてくれたホストファミリー、その他ご支援ご協力いただいた方々のおかげです。素敵な方々に恵まれ、無事留学を終えることができ感謝の気持ちでいっぱいです。今回得た研究の経験は今後の勉学や進路選択に役立て、これからも様々な活動に積極的に取り組んでいこうと思います。本当にありがとうございました。

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