和歌山県立医科大学国際交流センター
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留学生の体験談

体験談

ハワイ大学クアキニ病院 短期留学体験記
和歌山県立医科大学 医学部医学科6年 寺田幸誠

 2013年5月6日から5月31日までの間、ハワイ大学医学部の国際プログラムの一環としてKuakini Medical Center (KMC)にて臨床実習をする機会を頂いた。KMCは、ハワイのワイキキビーチから少し内陸部に入ったKuakiniという地域にあり、100年前に日本からの移民の手で建てられた歴史ある病院。患者は日系の割合が一番多く、次にフィリピン系が続き、他にも様々な人種で構成されており、ハワイという移民が多く移り住んだ地に根ざした病院という印象を受けた。
患者国際色の多様さゆえ、ハワイ大学のレジデントプログラムは本土以外にも、日本、フィリピン、シンガポール、タイなどから研修医を採用しており、医師や看護師においても国際色は非常に豊かだった。英語は固より二言語以上話す研修医が多く見受けられた。
ハワイ大学が提供する今回のプログラムは2つの実習から構成されている。一つはFamily Medicineでの実習、もう一つはGPという内科初期研修医が所属する一般内科での実習。このプログラムは、アメリカで臨床留学を望む医師や学生なら一度は聞いたことのある、野口プログラムやJADECOMが提供するものと同じで、医師になった後にこの機会を得ることは極めて競争率が高く難しいとのことだ。

#1.  5月5(日)〜12日(土)
Family Medicine@Dr. Tokeshi’s clinic(俗にいう、Tokeshi道場)
まず、Family Medicineとは何かということだが。Family Medicineは現在多くの日本人医師が総合診療を学びに渡米する分野の一つ。救急等を除き、基本的にはアメリカではすべての患者は第一にホームドクターであるFamily Physicianの診察を受け、必要と判断された場合に限り専門医の診療を受ける。なので、Family Physicianは全分野を把握している必要がある。
そのFamily Medicineで今回ご指導を指南して下さったBOSSがDr.Tokeshiだった。
Dr.Tokeshiは沖縄出身の日本人だ。高校卒業後にハワイに渡り、ハワイ大学臨床教授としてハワイの医療に貢献されておられるドクターの一人。患者だけでなく、病院に関わる全ての人から慕われ、また尊敬されている。また学生思いで、教育には並々ならぬ情熱を持っておられる素晴らしい人格者で、先生を慕ってアメリカ本土からも実習を受ける為に学生やドクターが来るほどだった。私の滞在中も、来年度のハワイ大学での研修を狙う日本人医師一人とカリフォルニアから学生一人が来ていた。
次に、一日の流れだが、学生は朝6時半にDr.Tokeshiの回診が始まるので、それまでに自分の受け持ち患者のバイタルチェックとカルテ記載の為に毎朝3時頃に起きる必要が有る。回診後は先生のクリニックで、問診、身体所見、採血と良い緊張感を持って一日一日が一瞬で終わっていった。先生との話の中で最も印象に残っているのは、「医師として生きることを決めた瞬間から、私は私だけのものではなくなった」と、24時間×7日、常に患者中心の人生を歩まれている、Dr.Tokeshiがその時私にはまるで武士のように見えた。
Dr.Tokeshiの道場での実習はたったの一週間だったが、ここに書ききれない程多くのことを学ぶことができた。ROSに従った問診の「型」、OLD PAPA QSARFに基づいた報告の「型」、身体診察の「型」など、全てきっちりとした「型」を教わったことで、今後私なりに技術を向上していく指針を得る事ができた。また、Tokeshiマニュアルに掲げられた先生の医師としての哲学は今後の人生に大きく影響すると感じている。実習が始まる直前は、朝3時起きと聞いて戦々恐々としていたが、実際が始まってみると毎日刺激的で非常に有意義な時間を過ごすことができ、一週間とは思えない充実した実習となった。この一週間で、確実にこれからの自分が目指す医師としての在り方は変わったと感じる。その理想に向かい、今後医師として日々精進を積んでいくつもりだ。

#2.5月14日(月)〜5月31日(金)
Internal Medicine
アメリカでは研修医となった時点で医師は将来的に内科に進むか外科に進むか決まっている。内科初期研修医は初めの3年間はinternal medicineに所属する。Kuakini病院での内科研修医は4チームに分かれて行動しており、ハワイ大学の学生と私たちオブザーバーは各チームに一人ずつ配属する。
私の所属したチームは、2年目のタイ出身のNANとハワイ出身1年目のGITAとカリフォルニア出身ハワイ大学の学生MATTと私といった構成だった。
一日の流れとして、ハワイ大学の学生と朝6時からプレラウンドといって、受け持ちの患者すべてを回る。その後、シニアレジデントとともに再度ラウンドし、必要な検査オーダーを出し、カルテを書き上げる。学生もカルテを書けるが、ドクターのサインが必要だった。研修医向けのレクチャーや症例検討会、毎日9時半から行われるICU、PCUラウンドにも参加するので午前中は比較的忙しい印象を受けた。午後の業務は残った病棟業務やホスピタリスト(病棟医)や各科の専門医や各科の専門医へのコンサルトが主であった。また、4日に1度オンコールの日が有り、通常の業務に加えて救急で来た患者にも対応するので、オンコールの日は非常に時間に忙殺された。この日に入院した患者はチームの受け持ちにもなる。症例は科に拘らず、軽症からICUに入院する重症まで様々だった。また、チームの最大担当患者数が決まっており、ICUは3人まで、その他のPCU、CCU、通常病棟はチーム患者数が10人を超えるまでと定まっていた。内科実習を介して強く感じた点を3つ挙げる。
@プレゼンテーションの文化。
1日で症例のプレゼンをする回数は非常に多く、発表形態も状況によって変わり、
チーム内での上司へのプレゼン、病棟医•専門医へのコンサルトの為のプレゼン
指導医へのプレゼン、ICUラウンドでのプレゼン、症例検討会でのプレゼン、オンコールのチームへ引き継ぎの為のプレゼンと多岐に渡った。それらは、1分程の短いプレゼンから入院時または退院時の状況を詳しく述べるプレゼンなど。それぞれのプレゼンにあわせて情報の取捨選択が必要になる。私は担当患者を決めて、チーム内で指導医の先生に対してプレゼンをする機会を頂いた。英語的な問題は固よりプレゼンへの不慣れさも有り毎度苦労したが、日本では学ぶ機会も少ないので大変勉強になった。また、アメリカでの評価として、ここではたくさんの知識を持っていることよりも、如何に自分を良く見せるかが非常に大事で、それがプレゼン力だという印象を受けた。
AEBMの徹底化
先生方は治療方法に関する話し合いの際には、必ず論文やUp to Dateといったネット上の文献などをよく引用されていた。治療法に対しては必ず、「この治療は、○●という論文の○月号のに載っており、他の治療法と比べ、□では優れているが、■では劣っている」などと出典を明確にし、かつ治療のオプションを挙げ比較することに重点を置いていた。この論理だった思考を自ら立上げることは非常に難しい。というのも、カルテ記載の練習の際に毎回苦労していたのが、患者のプロブレムリストを挙げて、それらに対するEBMに則った治療プランを考えることに苦しめられた。初めは患者一人のカルテを仕上げるのにも1時間近く掛かっていた。
B学生の態度
「アメリカの医学部三年生と日本の研修医一年目が同等の実力だ」と聞いてはいたが、これは本当にその通りだった。彼らは朝4:30頃から受け持ち患者を診察しに行き、その日のラボデータを確認しラウンドの時にプレゼンする。日本との大きな違いは、誰も医学生を「学生だから・・・」という扱いをしない。また学生の方も自分たちは学生だから、という甘い考えは無くチームの一員として責任感をもって働いており、彼らの姿を見て自分が如何に学生という身分に甘え六年もの月日を過ごしてきたのかを反省させられた。また、これは個人的な意見だが、日本では臨床実習は国家試験の準備の一部であるのに対し、アメリカの臨床実習は医師として本格的に働くための準備の場だという印象も受けた。

以上が、四週間のUniversity of Hawaii International Observation Programについての報告です。坂口先生を筆頭に今派遣において御支援頂いた諸先生方、国際交流センターの林さんに心より御礼申し上げます。貴重な機会を与えて頂けたこと強く感謝申し上げ、今後より努力していく所存です。
最後に、報告書をわざわざ読んで下さった後輩の皆さん。
何事もまず挑戦してみてください。将来的医師として海外で働くつもりがないとしても、必ず自分の将来に活かされると思います。そして、ハワイの地で学び得たことをまた後輩に還元していって欲しいと思います。青い空、青い海、最高の景色のもとで最高の一カ月を過ごしてみるのも良いかと。笑

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