和歌山県立医科大学 血液内科

大学での研修−知識の活性化


知識の活性化がスキルにつながる

 皆さんは若く、そして高い理想を胸に真剣に研修に取り組んでおられることと思います。そんな皆さんへ、多少の経験を持つ内科医、血液内科医、医学研究者の先輩として少しアドバイスをさせてください。
優れた内科医になるには、まず頭を鍛えることが重要だと思います。そんな当たり前のこととおっしゃるかも知れませんが、本当に大事です。国家試験でせっかく頭蓋腫脹(?)になるまでに詰め込んだ知識も研修医のうちに有効に活用しないとどんどん忘れてしまいます。これは本当にもったいないことです。一方、国家試験準備中は無味乾燥と思えた知識も、皆さんの知識と技術を必要としている目の前の患者さんへの診療を通して、生きた知恵へと変化させれば一生の宝となります。(大げさな言い方ですが、これは皆さん個人にとって宝であるだけでなく、国家にとっても宝であるように思います)

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体験の深さが知識を活性化する

 ある患者さんを前にして正解に近い順で鑑別診断を考えたり、急ぐ順に処置を思いつく能力は内科医にとって重要なスキルですが、このようなスキルは本で得た膨大な知識を現実の事として繰り返し追体験することで初めて修得可能なものです。ここで注意するべきは“追体験の深さ”です。というのも患者さんを表層的に診ていても知識を活性化するほどの深い体験とはなりません。例えば、急性心筋梗塞の患者さんの担当となったとき、カテーテルを手伝ってマニュアル通りの指示を看護師さんに叱られないよう指示遅れにならないように出し終える、それだけに集中していては、何度こなしてもルーチンワークに慣れるだけで先程のようなスキルは身に付かないものです。
この患者さんはなぜこうなったのか?この症状の原因は?その示唆するところは?あの異常値の意味するところは?なぜこのデータが出たのか?などなど、ふだんつい見過ごしがちな、いや、ふだん忙しさに負けて意識的に追求を止めてしまっている様々な症状・所見について徹底的に考え、科学的に説明できるようにしていくことこそが、センスあふれる内科医へとつづく道と信じています。

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徹底的に考える大学での研修

 知識は必要なときに必要な形で抽出できて初めて役に立つもので、そのために知識は互いに有機的に結合されている必要があります。国家試験向けに詰め込んだ頭をvividに活躍する脳へ変化させるには、常に患者さんの問題点について考え、経験症例に関して科学的に筋道立ててプレゼンテーションできるまで深めるという作業を繰り返す必要があります。
このような際に是非利用して欲しいのが大学病院での研修です。大学にはその道の専門家がそろっており、彼らは日々、先端医療の研究を通して科学的思考を繰り返しています。そのような指導医に担当症例の問題点について科学的に掘り下げた指導を受ける機会は他ではなかなか得がたいもので、ちゃんとした内科医になるためには、実は、欠かせない経験です。私自身、国立大学付属病院、地域の中核の公立病院、がんセンター、私立病院、そして米国の巨大民間病院・研究所など様々な施設でトレーニングをしてきましたが、担当医として症例に関して科学的にどれだけ深く納得できたか、という点において最も優れた研修を提供しているのは大学であると感じました。
勿論、数多くの診療を通じて経験を積む時期も必要です。私も消化器検査を中心として多数例の検査手技を経験し、また、常時、20人近い患者さんの担当医として毎日忙しく働いた時期もありました。そして日本でも米国でも優れた人はある時期からは、細かな指導を受けずとも多数の担当症例を通して自分を高めていけるように感じました。つまり自ら問題点を認識し、自ら科学的解答を得るようになるということです。

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土台つくりからEBMへ

 しかし、皆が初めからそのように出来るわけではありません。まずは土台つくりが重要です。そのために私は一定期間、大学で研修することをお勧めしたいと思います。少数例で良いからまずは科学的に筋道立てて考える癖をつけるべきです。そしてこの思考癖は皆さんが患者さんへエビデンスに基づいたより良い医療を提供できるようになるための基礎なのだということを実感して欲しいと思います。

<< 文責:松岡 広 >>

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