医療現場で起こりえる事故は、多種多様であるがこれらの事故が「いつ」「どこで」「どのように」起こることは誰もが予想はできません。しかし、これらの事故というのは安全管理を十分に行うことで未然に事故を防止することができます。 |
電撃事故
マクロショック事故: | 手から手、足から手のような身体の表面間に電流が流れて起こる事故。 この事故により、心室細動を起こし死亡することがあります。 |
ミクロショック事故: | 電流の流入点の一方か両方が心臓内にある時、心臓に直接電流が流れてしまう事故。 微小な電流でも心室細動を起こします。 |
電撃事故の対策
安全な機器を導入する(漏れ電流等がなく、フローティングされた機器を使用) 安全に使用できる設備を整える(接地設備を整える) 使用上の安全確保のため、機器の保守点検を行う(漏れ電流測定・接地線の断線確認) 使用するスタッフへの機器の安全教育を行う |
漏れ電流の種類と許容値
接地漏れ電流 |
(単位mA |
型式 | B形 | BF形 | CF形 | |||
漏れ電流の種類 | 正常状態 | 単一故障状態 | 正常状態 | 単一故障状態 | 正常状態 | 単一故障状態 |
接地漏れ電流(一般機器) | 0.5 | 1(注1) | 0.5 | 1(注1) | 0.5 | 1(注1) |
接地漏れ電流(注2 注4) | 2.5 | 5(注1) | 2.5 | 5(注1) | 2.5 | 5(注1) |
接地漏れ電流(注3) | 5 | 10(注1) | 5 | 10(注1) | 5 | 10(注1) |
外装漏れ電流 | 0.1 | 0.5 | 0.1 | 0.5 | 0.1 | 0.5 |
患者漏れ電流-1(装着部→大地)(直流) | 0.01 | 0.05 | 0.01 | 0.05 | 0.01 | 0.05 |
患者漏れ電流-1(装着部→大地)(交流)(注5) | 0.1 | 0.5 | 0.1 | 0.5 | 0.1 | 0.05 |
患者漏れ電流-2(信号入力部or信号出力部にのった電源電圧による) | - | 5 | - | - | - | - |
患者漏れ電流-3(装着部にのった電源電圧による) | - | - | - | 5 | - | 0.05 |
患者測定電流(直流) | 0.01 | 0.05 | 0.01 | 0.05 | 0.01 | 0.05 |
患者測定電流(交流)(注5) | 0.1 | 0.5 | 0.1 | 0.5 | 0.01 | 0.05 |
注1) | 接地漏れ電流に関する単一故障状態は、電源導線の1本の断線だけである。 |
注2) | 保護接地した接触可能部分がなく、他の機器への保護接地接続手段を持たず、かつ、外装漏れ電流及び(該当するときは)患者漏れ電流に関する要求事項に適合する機器。 |
注3) | 工具を使用しなければ緩められないように電気的に接続した保護接地を用い、かつ、工具を使用しなければ取りはずせないように特定の場所に機械的に締め付けるか固定することによって永久的に設置することが指定されている機器 |
注4) | 移動形X線装置及び無機質の絶縁材料で分離した絶縁をもつ移動形機器。 |
注5) | 上記の表に規定した患者漏れ電流及び患者測定電流の交流部分に関する最大値は、その電流の交流成分だけに関係するものである。 |
単一故障状態とは
単一故障状態とは機器に一つの故障が発生した状態をいいます。 どのような機器でも故障を起こす可能性というのは必ずあります。医療機器は患者さまの命を支えている重要な機器が多いため、万が一故障が起こったときの安全性を評価するために模擬的に単一故障の状態をつくり、その状態で使用したとしても患者さまに危険が生じないかの安全確認を行います。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||
|
接地方法
保護接地 | 主にマクロショックに対する安全対策で、機器などの電気機器の金属製外箱につなぐ接地のことを言います。これを施していることで、機器からの漏れ電流を大地に流し、人体を通過する電流を抑えることを目的とした接地です。 |
等電位接地 | 主にミクロショックに対する安全対策で、患者さまが触れる恐れがある範囲全ての金属部分を一点で接地し、その接地された機器と機器の電位差を10mV以下となるようにする接地方法です。 |
非接地配線方式
通常のコンセント(家庭用コンセント100V)は二極のうち、片方がアースされます。この方式を接地配線方式といいます。この場合、変圧器(トランス)内がショートしてしまうと、ブレーカーやヒューズが飛んでしまい、その電源に接続された機器が停止してしまいます。 このため、トランスを絶縁してやることでショート防ぎ、変圧されたほうの電源部の両極とも接地しない方式のことをいいます。(別名フローティング電源) |
非常電源設備
停電時に生命維持管理装置や手術室などへの電源供給を確保するための設備です。非常電源は立ち上がり時間により3種類に分類されています。 |
非常電源の種類 | 電源確立時間 | 最小運転連続時間 | 用途(例) |
一般非常電源 | 40秒以内 | 10時間以上 | 重要機器 照明 |
特別非常電源 | 10秒以内 | 10時間以上 | 生命維持管理装置 |
瞬時特別非常電源 | 瞬時 | 10分以上(一般と連結) | 手術灯 その他 |
医療ガスの種類と性質
ガスの種類 | 臭気 | 比重(対空気) | 燃焼爆発性 |
酸素 | 無臭 | 1.105 | 支燃性 |
笑気 | 甘臭 | 1.530 | 支燃性 |
窒素 | 無臭 | 0.967 | 無 |
空気 | 無臭 | 1.000 | 支燃性 |
炭酸ガス | 無臭 | 1.529 | 無 |
ヘリウム | 無臭 | 0.138 | 無 |
酸化エチレン | 快臭 | 1.500 | 有 |
ホルマリン | 刺激 | - | - |
医療ガスの供給方法
個別方式:患者さま、または医療機器のそばにボンベやエアーコンプレッサ等で医療ガスを供給する方式 | ||
中央配管方式:医療施設の決められた場所に医療ガスの供給源を設置し、配管を介して供給する方式 |
||
以下にこの方式に含まれる装置等を示します。 |
||
1.定置式超低体温液化ガス供給装置(CE供給装置) | ||
医療ガスの液化したものを貯蔵し、それを気化させたり圧力を制御する装置のことを言います。 | ||
2.マニフォールドシステム | ||
高圧ガスボンベを複数連結し、1つのボンベ内圧が低下すれば、自動もしくは手動で新しいボンベに切り替えるシステムです。 | ||
3.圧縮空気供給装置(エアーコンプレッサ) | ||
圧縮空気を作る装置です。 | ||
4.吸引装置 | ||
吸引力を作る装置です。 | ||
5.配管端末器(アウトレット) | ||
上記の医療ガス供給源から配管を介して、供給される医療ガスの取り出し口のことを言います。ガスの種類により誤接続防止のため、ピン方式(ガスの種類によりピンの位置が異なる)やシュレーダー方式(口径が異なる)があります。 | ||
6.ホースアセンブリ(耐圧管) | ||
配管端末器やボンベなどから医療ガスを使用機器に供給するホースです。上記のアウトレットに接続可能な形状となっています。 | ||
7.シャットオブバルブ | ||
医療ガス供給施設から、配管末端の間に弁がついています。火災等の緊急時や安全管理のために一時的に閉じれるバルブのことを言います。 |
安全装置・警報装置の設置
安全でかつ信頼のおける医療ガスを維持するため、安全装置・警報装置を設ける。 | |
1.医医療ガスの予備供給設備・非常供給設備の設置 | |
2.医療ガスの使用頻度の高い手術室やICU・CCUでは遠隔警報装置を設置する。 |
医療ガス設備の保守点検
医療ガス設備の保守点検を行い、安全性・信頼性を確保する。以下に点検箇所を明記する。 | |
1.配管端末器(アウトレット)が安全に接続可能であるか等の確認 | |
2.ホースアセンブリの破損によるリーク、アウトレットへの接続状態などの確認 | |
3.遠隔警報装置が作動するかの確認 | |
4.ボンベの使用状況、内圧や破損等確認 |