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平成29年度入学式 式辞

新入生の皆さん、ようこそ和歌山県立医科大学へ。
皆さんは、将来、医師や看護師、助産師などになることを夢見て、期待に胸を膨らませてこの日を迎えたことでしょう。
私達、和歌山県立医科大学教職員一同、皆さんを暖かく歓迎したいと思います。
また新入生の皆さんをこれまで支えてくださったご家族や関係者の方々には、心よりお祝いを申し上げます。
今日は、和歌山県の仁坂知事をはじめ多くの方が来賓として出席して一緒に皆さんの入学を祝ってくださっています。
毎年、この時期は桜の季節でもありますが、満開の時期を過ぎると新芽が顔を出します。
華やいだ季節は済んで、これからは成長する時期だよと、まさに今の皆さんとそっくりなように思います。

一昨年、本学は、創立70周年を迎えました。これまで4000名以上の医師と、1000名以上の看護師・助産師を輩出してきました。歴史的には、長く和歌山城の北側にキャンパスがありましたが、18年前にこの紀三井寺の地に移転してきました。移転当時は、定員60名の医学部だけの単科大学でした。それが、保健看護学部を併設し、医学部定員も100名にまで増加したので、この講堂も狭く感じられますが、4年後には薬学部を新設する予定になっています。学生数が増え、さらには学部まで増えるということは、大学が発展していることの証です。皆さんの先輩が築いてきた本学の歴史を引き継ぎ、社会に貢献できる人材として卒業してくれることを願っています。
 
この紀三井寺キャンパスには、3つの碑があります。
一つは、華岡青洲先生の活物窮理の碑です。紀州が生んだ医聖とあがめられる青洲先生は、今から200年以上前に、世界で初めて全身麻酔を用いて乳がんの手術に成功した外科医です。活物窮理とは、生きたものの中に真理があるから、深く観察して患者自身や病の特質を見極めなければならないという教えです。青洲先生を本学の医の心のルーツとして、その時に麻酔薬の原料として用いられたまんだらげの花を私たちの大学のエンブレムとして用いています。
 もう一つは、初代学長の古武彌四郎先生の碑です。古武学長は、世界的に有名な生化学者であられましたが、卒業生に贈る言葉として医師、医学研究者の心構えを示されました。短く言うと一生懸命に働くことで、天然と親しむことができ、天然を見つめることで天然が見えてくるようになるということですが、実際の言葉はあなた方自身で確かめていただきたいと思います。
三つめは、愛の碑です。本学が創立されたのは第二次世界大戦の終戦に至る年で、和歌山市も空爆を受けました。その時に本学附属病院の看護師さんが数名殉職されました。患者さんを救うために献身的に働かれて殉職された方々への思いを込めた碑です。
今、私が紹介した3つの碑は、是非、ご自身で確かめ、また時々思い出してください。

皆さんがこれから目指す医師や看護師、助産師などは、困っている患者さんの面倒を見てあげる職業です。多くの患者さんは皆さんより年上で、人生経験は豊富です。
社会経験が少なく、自分のことだけで精一杯の人が他の人の面倒を見られるでしょうか?
あるいは、患者さんから見て、頼りになる存在に見えるでしょうか?
皆さんが育った最近の20年間で、住居環境、交通網の発達、IT化などで、生活環境が改善され、世の中が便利になりました。平均寿命も延びました。あまり苦労をしなくてもしたいことができるようになった結果、体力は低下傾向にあり、また少しの環境の変化にもついていけない人やすぐに社会や他人のせいにする人が増えたと思います。

さて、皆さんの生活は、今日から大きく変わります。
一人暮らしを始める人や、1-2年後には成人式を迎える人も多いでしょう。大人になっていく、人生でももっとも充実した日々をこの大学で過ごすことになります。皆さんには多くのことを学び、経験してほしいと思っています。しかし、他人を傷つけたり、迷惑をかけたり、あるいは悪ふざけで取り返しのつかないことにならないよう、義務や自己責任を負った上で行動してください。新聞などで、大学生の不祥事の記事を見ることは珍しくありません。
他大学のことだと思っているかもしれませんが、決して他人ごとではありません。
常に自分たちも間違ったら同じような過ちをするかもしれないという戒めが重要です。
そして、これから述べることを時々思い出して大学生活を送ってください。
まず、大学とはどういうところかと言うことです。
これまでの小中高校と大学はいろいろな意味で違います。
小中高にいるのは生徒で、責任者は校長です。
大学にいるのは学生で、責任者は学長です。
でももっと根本的に異なることは、高校までは、教えてもらうことが基本ですが、大学では自分で勉強することが基本です。大学では、教えることが多くて限られた時間では教えきれません。まだよくわかっていないことや正解が一つでないことも多く、また正しいと思われたことが数年後には違っていることもあり、一生涯、勉強していく必要があります。
「習っていないところが試験問題に出た」と騒ぐのは、高校までです。大学では、知識ではなく、何が問題なのか、何を勉強すれば良いかというヒントは教えます。単に覚えるのではなくて、自分で考える能力を養うことを学んでください。

大学の学部と将来の職業の関係を考えたとき、例えば、難関と言われる司法試験や国家公務員上級試験や、一級建築士の試験などは特別の学部を卒業しなくても受験できます。
しかし、医師や看護師、助産師など医療系の資格は他の学部を出ても受験資格はありません。その代り、カリキュラムは選択科目が少なく、ほとんどが必修です。
このことは逆に、医学部や看護学部を卒業して、ほかの職業に就く選択肢がかなり制限されると言えます。自分で選んだ道なのでまっすぐ突き進んでほしいと思いますが、もし、自分の意思でなく周囲の勧めに従って学部を選んだけれど自分はもっと別のことがしたいと思ったらなるべく早い時期に方向転換することを勧めます。

今、世間では医師不足や看護師不足がしばしば話題になっています。
そのため、医学部では1学年の定員が8000人から9500人に増え、昨年に一大学、今年も一大学に新しい医学部が誕生しました。
看護系大学についても同様で、1992年に11大学しかなかった4年制看護学部が、今では267に増加しました。
ただでさえ、18歳人口が減少しているのに、医学部も看護学部も定員が急に増加したということは、言い換えれば入学しやすくなったわけです。全国的に留年や休学、退学が増加していることが指摘されていますし、本学も決して例外ではありません。
入学時の能力にはあまり差がないわけですから、どうして差がつくのでしょうか?
大学に入学することが目標だった人はそれで目標を達成してしまったことになります。本当の目標を見失い、ずるずると皆から後れを取っていきます。
皆さんは、2025年問題と言うのを聞いたことがあると思います。団塊の世代が75歳以上になる年で、医療や介護など社会保障費が急増し、認知症患者が700万人を超えると言われています。しかもそれを支える世代の人口が少ないということですが、ちょうどその頃、あなた方は卒業して間もない頃に当たります。
そして、2040年には全国で34000人の医師過剰になる見込みであることも公表されています。常にモチベーションを高くして、自分で自分を律するすなわち自律していかなければいけないと思っておいてください。

これからの大学生活は、本人次第で、楽しくもあり、つまらなくもあります。有意義で素晴らしい大学生活を送ってくれることを願っています。大学は人間形成の場でもあります。
是非、クラブ活動やボランティア活動などを通じて、友人をたくさん作り自分を磨いてください。そして、身近な地域医療に貢献しつつも国際的な視野を持つバランス感覚を磨いてください。和歌山県立医科大学の歴史を築いて、その遺伝子を次の世代に受け継いでくれることを期待しています。
大学院に入学した諸君については、社会人として診療などに従事しながら、研究していこうという方も多いと思います。
社会人と大学院生を両立していくことは、大変な努力が必要ですが是非、頑張ってください。
研究というものは、自分の思い通りの結果が得られないことが多いと思います。
くじけずに頑張って、胸を張って自分の研究成果を示せるように努力してください。

さあ、これから一緒に切磋琢磨して、他大学から目標にされるような大学にしていきましょう。

平成29年4月11日
公立大学法人 和歌山県立医科大学
理事長・学長 岡村吉隆