外科学第2講座

教室概要

第2外科学教室は昭和31年に故中尾行保教授により開設され、故勝見正治教授および谷村 弘教授が継承され、消化器外科・小児外科・内分泌外科・内視鏡外科を中心とする外科診療を行う教室です。

教室方針として、外科学の教育・研究・診療を通じて、疾病の発症メカニズムからみた合理的な治療法を開発し、真に患者のためになる外科治療を確立することを目的とし、特に、腫瘍外科学の基礎的・臨床的研究を通じて、消化器癌の新しい外科治療の開発を目指しています。

また、和歌山県立医科大学の一員として、和歌山県の地域医療に貢献することを教室の使命とし、和歌山県で最も高度で安心できる医療を提供することを一貫した基本姿勢として、外科診療を行っています。

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教育概要

学生教育は最も重要な課題であると考え、教室を挙げて卒前・卒後教育にあたっています。教育に対する情熱の差が、卒業生の質の差につながり、研究・臨床面における将来の大学間の格差につながります。また、教室のレベルの差に直結します。その第一歩として、ポリクリ教育を一新しました。アメリカのMedical Schoolの教育カリキュラムおよび日本医学教育学会の指針を参考にし、ポリクリ学生にもカルテを持たせ、診療チームの一員となるクリニカル・クラークシップを導入しています。さらに、図書館やインターネットで国際的な一流誌に掲載された論文を多読し、その疾患に関するEvidence-based medicine (EBM)に従った診断・治療を考えるチュートリアルも行っています。

卒後教育に関しては大学病院のみですべてを教育できるわけではありません。今、地域医療を考える上でも各病院が機能分担する必要があります。primary careに始まり第1次・第2次救急医療は、地域により密着した関連病院で学ぶ方が効率的で、関連病院の方が疾患数の多い外科手術もあります。県下の基幹病院が卒前・卒後教育の一翼を担えるような専門医・指導医の人材派遣を進めることで、地域医療へ貢献できると考えます。

また、研修医の間に、症例報告でも良いから論文を執筆させ、論文作成を通じて臨床研究のあり方を教えたいと考えています。その一環として、土曜日の午前中に研修医の諸君との抄読会を行っています。Annals of Surgeryなどの一流誌に掲載された臨床研究の論文を詳細に分析することで、研修医の各人が、近い将来にこのような臨床論文を自ら執筆したいという意欲を駆り立てることがねらいです。また、論文を分析し批判することで、学会でのdebateの練習にもなるよう配慮しています。すべての外科医は、多くの患者さんを手術し、厳しい周術期管理をしながら成長していくわけですが、その個人および施設の努力である臨床成績は論文にすることで初めて社会からの評価を仰ぐことができるわけです。努力が大きければ、国際的な一流誌に採用されるでしょう。世界中の多くの外科医がその論文を参考にし、次の世代に向けて新しい治療法の開発につながるでしょう。第2外科の医局員はこのような考え方で臨床に臨んでいます。

スタッフ紹介(教室員の構成)(2022年10月現在)

役職 氏名 専門分野 学会認定
教授 川井 学 肝胆膵外科 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医・評議員
日本肝胆膵外科会・高度技能専門医・評議員
日本消化器内視鏡学会専門医
日本胆道学会指導医
日本膵臓学会指導医
膵癌診療ガイドライン委員会委員
准教授 松田 健司 下部消化管外科 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
Certificate of daVinci console surgeon(手術支援ロボット)
日本消化器内視鏡学会専門医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員
日本内視鏡外科学会技術認定医(大腸)・認定プロテクター・評議員
日本消化器病学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
講師 上野 昌樹 肝臓外科 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本肝胆膵外科会・高度技能専門医・評議員
日本肝臓学会肝臓専門医
日本消化器外科内視鏡学会専門医
講師 尾島 敏康 上部消化管(食道・胃)外科内視鏡治療 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医・評議員
日本食道学会食道科認定医
Certificate of daVinci console surgeon(手術支援ロボット)
日本内視鏡学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本再生医療学会 再生医療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医(胃)・認定プロクター・評議員
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本ロボット外科学会専門医
日本胃癌学会代議員
日本臨床外科学会評議員
日本外科病理学会評議員
腹部救急医学会腹部救急認定医
講師 岡田 健一 膵臓外科 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本肝胆膵外科会・高度技能専門医・評議員
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医・指導医
日本膵臓学会指導医
日本胆道学会指導医
日本臨床外科学会評議員
講師  宮澤 基樹 膵臓外科 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本肝胆膵外科会・高度技能専門医・評議員
日本膵臓学会指導医
講師  速水 晋也 肝胆膵外科 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医・評議員
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本肝臓学会肝臓専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本メディカルAI学会評議員
日本内視鏡外科学会技術認定医(肝)
講師 早田 啓治 上部消化管(食道・胃)外科 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本食道学会食道科認定医
Certificate of daVinci console surgeon(手術支援ロボット)
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本内視鏡外科学会 技術認定医(胃)
講師 岩本 博光 下部消化管外科 日本外科学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本内視鏡外科学会 技術認定医(大腸)
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本再生医療学会 再生医療認定医
Certificate of da Vinci console surgeon(手術支援ロボット)
講師 三谷 泰之 小児外科・下部消化管外科 日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本小児外科学会専門医・指導医・評議員
日本内視鏡外科学会 技術認定医(大腸)
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本小児・血液がん学会 小児がん認定外科医
日本周産期・新生児学会 認定外科医
助教
(腫瘍制御学寄付講座)
合田 太郎 小児外科・上部消化管外科 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本小児外科学会専門医
講師 北畑 裕司 肝胆膵外科 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本肝胆膵外科会・高度技能専門医・評議員
日本消化器内視鏡学会専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本膵臓学会指導医
助教 北谷 純也 上部消化管(食道・胃)外科 日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本再生医療学会 再生医療認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本消化器病学会専門医
日本食道学会食道科認定医
日本内視鏡外科学会 技術認定医(胃)
Certificate of da Vinci console surgeon(手術支援ロボット)
助教 中村 有貴 下部消化管外科 日本外科学会専門医
学内助教 宮本 篤 肝臓外科 日本外科学会専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器外科学会専門医
学内助教 村上 大輔 下部消化管外科  
学内助教 冨永 信太 上部消化管(食道・胃)外科 日本外科学会専門医
大学院生 兵 貴彦 消化器外科  
大学院生 吉村 知紘 消化器外科  
後期研修医 堀 雄哉 消化器外科  

研究概要

外科学の研究領域は広範囲にわたり、Basic scienceである細胞生物学および分子生物学のめざましい進歩に歩調を合わせるべく、当教室における研究内容も変遷してきました。これまで、私たちは外科腫瘍学の研究を中心に基礎医学と臨床医学のTranslational researchを目指してきました。すなわち、癌免疫療法として米国NIH外科が開発した活性化リンパ球を用いた養子免疫療法を臨床応用するために、種々のサイトカインで併用刺激する試みや、固相化抗CD3抗体および固相化fibronectinの併用の基礎実験を行ってきました。さらに、近年、多くの腫瘍抗原がペプチドのレベルで同定され、私たちも消化器癌で発現しているCEAに対する特異的免疫応答を解析し、腫瘍抗原ペプチドを用いた新しい癌ワクチン療法の開発を行っています。

癌化学療法では、『患者個別の癌治療』の一環として、個々の症例に応じた化学療法を行うために、抗癌剤感受性試験を行っています。現在、抗癌剤感受性に関わる多くの遺伝子を解析するDNAマクロアレイやDNAチップの研究を準備中で、遺伝子発現からみた新しい抗癌剤感受性試験を開発する予定です。活性化リンパ球療法と抗癌剤感受性試験では、われわれの基礎実験から臨床成績におよぶ膨大なデータが厚生労働省から評価され、高度先進医療として認可されています。とくに、抗癌剤感受性試験に関しては、和歌山県立医科大学で初めて承認され、私たちのプロトコールが原型となって、慶應義塾大学や大阪医科大学などの数施設で追加認定されました。

遺伝子治療の研究も盛んで、米国NIHとの共同研究でレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療の基礎研究を展開してきましたが、癌研究会との共同研究でアデノウイルスベクターの研究を開始し、現在、腫瘍組織特異的に目的遺伝子が発現するシステムを確立しました。また、複数の大きな遺伝子を同時に安定して導入可能なAVIPOX virusを用いた新世代のベクターに関する研究も始まるなど、将来の臨床応用に備えて準備中です。

また、肝切除後の肝再生を促進するために、種々の肝細胞増殖に関わる遺伝子を残肝にIn vivo導入する新しい研究も産業医科大学生化学教室との共同研究として開始しています。

外科臨床として、近年の消化器癌の増加に対応するため、日々の手術および周術期の患者管理に真剣に取り組んでいます。さらに、第2外科学教室独自の臨床研究をスタートさせるために、最近15年間にわたる手術症例の詳細なデータベースの作成を開始し、これを和歌山県下へと展開しています。これをもとに、今後できるだけ多くの外科治療における臨床試験(randomized controlled trail: RCT)を行っていく予定です。

英文の業績

関連情報

※上記のページは第2外科の責任において作成されています。

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